9月22日、自民党総裁選の火ぶたが切られた。立候補したのは、小林鷹之元経済安保担当相、茂木敏充前幹事長、林芳正官房長官、高市早苗前経済安保相、小泉進次郎農水相の5人。昨年9月の総裁選では、1回目投票で高市氏が1位、小泉氏が3位という結果だった。今回は、当初高市氏が最有力、小泉氏が追いかけるという声が大勢を占めていたが、ここに来てその構図が変わりつつある。
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告示の日に行われた5人の陣営は出陣式。会場の入口前には、メディアの記者が殺到した。各陣営の出陣式に出席する国会議員をカウントすれば、ある程度の「票読み」ができるからだ。
ハンターがつかんだ各陣営の出席者数は、以下の通り小泉氏がダントツのトップで2位は林氏、次いで小林氏。高市氏は茂木氏と並んで30人にとどまった。

昨年の総裁選は9人もの候補者が名乗りをあげたが、その直後の衆院選と参院選で自民党が過半数割れの惨敗。議員が激減したため単純な比較はできないが、前回小泉氏は34人、高市氏は23人、林氏は32人だった。自民党の大臣経験者は次のように指摘する。
「昨年は、小泉さんが勝つだろうと思われていたが、失速して3位に転落。決選投票にも残れなかった。中盤から追い上げた高市さんが1回目投票ではトップに躍り出て、安定的に戦っていた石破さんは2位。そうした視点で見ると、林さんがかなり票を伸ばすのではないか」
高市氏の出陣式では、推薦人の議員の他に元議員の姿もみられた。昨年の総裁選では20人の推薦人の中で、旧安倍派などの裏金議員が13人もいたが、今回はゼロ。旧安倍派の議員も前回の9人から5人に減った。高市氏をバックアップしている中堅の衆院議員が内幕をあかす。
「裏金議員が推薦人に入ると、またマスコミに叩かれて党員票に影響します。裏金議員や旧安倍派、それに旧統一教会関連の議員はできるだけ外すという方針でした」
だが、推薦人代表の古屋圭司衆議院議員、選対本部長の中曽根弘文参議院議員らは、旧統一教会との関係があったことで批判を浴びている。また、高市氏の出陣式には、裏金が2,400万円の山谷えり子参議院議員ら複数の裏金議員が出席していたことも確認できた。「差別発言」で知られ、裏金1,500万円の杉田水脈元衆院議員も高市陣営だ。
出陣式の様子はマスコミでも大きく報じられる。そこに裏金議員や旧統一教会関連議員がこぞってやってくる高市氏の陣営。前出の中堅議員は「裏金議員、旧統一教会には気を付けているが、現実として応援してくれるものを断るわけにはいかない。旧安倍派の重鎮議員にそれとなく『裏金議員は目立つのを控えて』とお願いする程度」と話す。
一方、盛り上がるのは小泉氏の陣営だ。出陣式には、昨年の総裁選に出馬した加藤勝信財務相や河野太郎元デジタル相が応援団として最前列に座った。ただ、小泉氏の過去を振り返ると「打ち上げ花火」的な政治手法であることは、これまで本サイトでも指摘してきたところだ。前半戦で勢いよく突っ走り、後半戦は落ち目になるのが欠点と言えるだろう。
「挙党体制を前面に打ち出す。これまでとんがった主張も多々あったが、できるだけ封印している」と小泉氏陣営の議員は「安全運転」を強調する。しかし、小泉氏の最大のセールスポイントは、5人の候補者の中で最も若いこと。今から「安全運転」では持ち味がなくなるという懸念も生じる。
高市―小泉の争いが軸になるとの予想に反し、総裁選直前から株をあげているのが林氏だ。大きな武器は、官房長官として石破首相の「後継」を訴えて取り込みつつある石破票。推薦人を見てもわかる通り、20人中9人が旧岸田派。石破首相と岸田文雄元首相の二枚看板が揃った格好だ。
「昨年の総裁選で勝ったのは石破さん。その票をどれだけとれるかがポイント。決選投票では、旧岸田派がこぞって石破さんに票をまわした。30票から40票はあったはず。今回は、そのお返しをもらう番でしょう。小泉さんが挙党体制を訴えているが、5人の候補者の中で、誰が見ても最も安定感があり挙党体制が築けるのは林さんだけですよ。総裁選直前からその点が評価されるようになった」(林氏を支援する議員)
だが、石破首相や旧派閥の影響力が前提の総裁選であることは確か。参議院選挙で大敗した自民党が「総括」で主張した、「解党的出直し」には程遠い現状だ。
確かに林氏には安定感があるように映る。だが、これまでいったいどんな政策を実現させたのか、ピンとくる国民は少ないのではないか。経済財政担当相や農水相の経験はあるが、物価高でコメも高騰。拉致問題担当相としても、北朝鮮との関係に進展はなかった。実績をどう訴えるのか、注目したい。
ハンターが永田町で得た情報を総合すると、議員票は小泉氏が100票超、高市氏50票、林氏60票、小林氏40票、茂木氏30票というものだった。前出の大臣経験者はこう分析する。
「今回は、林さんが旧派閥などからうまく票を集めれば1回目で2位になり、決選投票に進みそうな情勢だ。決選投票になれば、さらに旧派閥の力が強くなる。若い小泉さんだと世代交代になるというので、林さんがさらに上積みする可能性だってある。高市さんは昨年の小泉さんのような展開になって、決選投票に残れないかもしれない。林さんは旧派閥の力がプラスになり、逆に高市さんは旧安倍派のイメージがマイナスに作用している」
すっかり「タマ」のスケールが小さくなってしまった自民党の総裁選。国民は、大手メディアの大騒ぎにシラケている。















