【2022参院選】日本維新の会の猪瀬氏擁立にしらける都民

 6月12日午後、東京・新宿駅前に現れた日本維新の会副代表の吉村洋文大阪府知事が、街宣カーの上から声を張り上げた。「国会議員の給料200万円以外に100万円の経費が渡されている。文書通信費。これね、経費だったら領収書つけるのが当たり前だけど、やってない。税金がおかしなところに使われている」

 「大阪都構想」や「カジノ」を1丁目1番地にしてきた維新が、東京で有権者を振り向かせることはできるのは文通費のことくらい。相次ぐ所属議員の不祥事は笑いにかえてごまかしたが、大阪にいる時のような拍手喝采はなかった。

 維新の高い支持率からいえば盛り上がりに欠ける街宣だったが、その原因は吉村氏のそばにいた元東京都知事にあった。都民は、しらけている。

■公選法違反の元知事が維新の公認候補

 吉村知事の横に立っていたのは、同党から比例代表の公認候補として出馬することを表明している元東京都知事の猪瀬直樹氏。よせばいいのに、マイクを握った同氏の口から出たのは泣き言だった。
「石原(慎太郎)都知事のときに副知事を5年半、(そのあと)都知事は1年で辞めざるを得なかった。残念だった」

 だが、猪瀬氏は“辞めざるを得なかった”のではなく、東京地検特捜部に告発、立件されて有罪となったため、“辞めるしかなかった”というのが真相。維新は、こういう人物を擁立したということだ。

 石原氏のあとを受けた猪瀬氏は、2012年12月の東京都知事選で433万票あまりを獲得して初当選。しかし、たった1年で辞任に追い込まれる。

 猪瀬氏は都知事選直前、医療法人「徳洲会」の創立者である徳田虎雄氏に「1億円を貸してほしい」と申し入れ、5,000万円の資金提供を受けた。しかし、徳田氏からの5,000万円は、政治資金収支報告書にも選挙運動費用収支報告書にも記載されなかった。裏金である。

 朝日新聞が裏金疑惑を報じ、東京都議会でも追及された猪瀬氏は、13年12月に辞任。東京地検特捜部が捜査に乗り出し、猪瀬氏は14年3月に公職選挙法違反で略式起訴され、罰金50万円と公民権停止5年間という処分を受けている。だが、この時、裏金絡みで別の疑惑も浮上していた。

 徳洲会は東京23区内に病院を保有しておらず、進出が悲願だった。そこに大病院の売却話が持ち込まれる。2011年3月に起きた東日本大震災による福島第一原発の事故で、当時の東京電力は崖っぷち。同社が所有していた「東京電力病院」(新宿区・現在は廃止)を売却して被害者の賠償にあてるように、副知事の猪瀬氏が株主総会で迫っていたのだ。背景にあったのが、徳洲会の存在だったといわれている。

 本サイトが入手した東京都の2013年9月24日付資料。タイトルは『東電病院売却の進捗状況について』。冒頭の記述はこうだ。

(1)応札状況

〇2013年9月20日(金)17時に入札を締め切った。
〇一次入札通過者4者のうち、以下3者が応札(大坪会は辞退)。
・慶応義塾大学病院
・徳洲会
・東京建物株式会社、医療法人相生会グループ

 猪瀬氏が資金提供を受けていた「徳洲会」が名乗りをあげていたのだ。そして、「(2)事業者決定の見込み」には、こう記されている。

〇東京建物グループが、最高値で入札(約100億円)。
(中略)
・土地価格においては、次点が徳洲会、慶応は最安値(約50億円)。

※上記情報については、9月22日(日曜日)に原賠機構(原発事故後に設立された原子力損害賠償・廃炉等支援機構)内で情報共有しており、機構上層部から生島専門委員を通じて、猪瀬知事の了解をとる予定とのこと。

 知事になった猪瀬氏に向けられたのは、公選法違反から波及したさらに大きな問題。徳洲会による東京電力病院買収をサポートする見返りに、問題の5,000万円を提供されたとする贈収賄疑惑だった。

■株主総会で「病院売却」を迫った猪瀬氏

 2012年6月、副知事だった猪瀬氏は、都が東京電力の大株主であるという立場からに勝俣恒久会長(当時)を株主総会で徹底追及し、「(原発事故で東京電力に)公的資金1兆円が入るときに、100億円以上する資産(東京電力病院)を売却するのは当然だ」「全然反省していない」などと糾弾していた。その先で実行されたのが、見返りの意味を持つ「5,000万円」の授受――それが捜査側の見立てだったといわれている。

 猪瀬氏は、後に5,000万円を徳洲会側に返却し、都議会に追及され借用書も公表した。しかし契約書には返済期限や利息の取り決めといった重要事項の記載がなく、収入印紙の添付はもちろん、押印すらなかった。猪瀬氏が徳洲会側に返したのは、利息なしの「5,000万円」のみ。利息分を「賄賂」とみられても仕方のない貸し借りだった。

 だが猪瀬氏は、日本維新の会の立候補予定者としてマイクを握った新宿駅前の街頭演説で、自身の「疑惑」などなかったかのように「身を切る改革によって生み出した財源で新しい政策を。改革は目に見えなければいけない」と訴えた。

 5,000万円という大金を、利害関係が生じかねない徳洲会から不十分な借用書1枚で借りて恥じようともしない猪瀬氏にこそ、「自己改革」が必要なのではないだろうか。

■またしても「粗製乱造」

 昨年10月の衆院選に続いて、7月10日投開票の参院選でも議席を伸ばすとみられている日本維新の会。自民党の情勢調査では、比例代表で10議席前後をうかがう勢いとなっている。維新のある国会議員が、自慢げに語る。
「うち(維新)は3年前の参議院選挙で5議席を獲得しましたが、比例代表は5万票以上ないと当選できなかった。今回は3万票台でも当選できるという予測さえあります」

 これまで本サイトでは維新の「粗製乱造」を何度も指摘してきた。
やっぱり「粗製乱造」|日本維新の会・岬麻紀衆議院議員に経歴詐称疑惑
日本維新の会・参院選公認予定者の経歴に疑問噴出

 元都知事という看板がある猪瀬氏には、「当確」の可能性があるという。“こんな人物が?”と絶句するのは筆者だけではあるまい。「粗製乱造」が税金の無駄遣いになることを、維新は学習できていないのかもしれない。

 

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