政活費疑惑の維新議員が離党|納品書偽造など不適切行為が発覚

維新の「粗製乱造」は明らかだ。兵庫県尼崎市の光本圭佑市議が昨年8月、日本維新の会尼崎市議団の政務活動費で購入したパソコンなどの納品書を偽造していたことが、議会事務局の調べで判明。光本氏は6月14日、維新から離党した。

詳細がわかったのは6月14日の尼崎市議会会派代表者会。政活費は、使用した明細をつけて議会事務局に報告するルールとなっているが、光本氏は、領収書の代わりに納品書を提出。議会事務局が不審に思い、維新の市議団が調査したところ偽造が発覚した。

■会派内で暴かれた不正

本サイトが入手した会派代表者会の協議事項という文書に添付された『光本議員による政務活動費の支出・入現金で出金に関する報告書』から、光本市議が、税金が原資の政活費を姑息な手段でかすめとろうとした様子がわかる。

会派のパソコン購入に際し、光本議員はまず、昨年6月24 日にA社から75万円の見積もりをとった。会派の会計担当者は6月29日に光本市議に現金75万円を手交。A社に代金が支払われる。

その後、光本市議はA社のパソコンをキャンセルして、8月にヨドバシカメラでパソコンを購入。会派側は政活費から76万330円を光本市議に支払った。

この時点で、パソコン代金75万円と76万330円が二重払いの状態。9カ月後の今年3月、ようやくA社から75万円が返金され、会派の市議らが知るところとなった。維新尼崎市議団のある市議が、呆れ顔でこう話す。
「結局、会計担当者の報告で会派の市議がパソコン代金の二重払いを知ったのは今年6月。1年も経過していました。会派としてヨドバシカメラからレシートを再発行してもらったところ、購入総額は約63万円で、Wi-Fiルーターなど約13万円分の商品名が納品書に記載されていないことがレシートから判明し、納品書の偽造がわかったのです。おまけに、納品書にあったパソコンやウイルスソフトなどの金額もレシートと一致しなかった」

納品書では、1台11万9,900円のX社のパソコンを5台、計59万9,500円で買ったとされている。実際には、1台9万9,790円で5台では49万8,950円。他の商品も併せると合計63万円あまりとなる。

「光本市議は、ネットでヨドバシカメラの納品書の画像データをみつけて、それを転用したと白状しています。領収書を紛失して、納品書を偽造したと認めているのです」(前出・維新会派の市議)

■疑惑まみれ

『光本議員による政務活動費の支出・入現金で出金に関する報告書』では、光本市議の別の「疑惑」が、いくつも記載されている。

【疑惑その2】

昨年10月に会派の会報を印刷。ポスティングするため、K社の見積もりで200万円あまりを会派から現金で受け取る。光本市議は、いったんK社に支払ったがまたもキャンセル。別の業者に業務を再発注したが、K社からの返金は今年3月だった。

【疑惑その3】

 今年4月、尼崎市から政活費前期、10人分600万円が入金された。うち250万円を光本市議が担当者から現金で受け取り別の口座に移動。6月に会派が知るところとなり、不透明な支出だと会派の団長が自費で穴埋め。その後、光本市議が団長に250万円を返金。

【疑惑その4】

今年4月、光本市議は理由を明かさないまま、6万円を会派の政活費から出金。

【疑惑その5】

今年5月、光本市議は印刷代金81万円あまりの見積もりをプリントパックから取得。それをもとに会派の担当者が81万円の現金を光本市議に手交。その後、返金される。

物品を発注の名目で、いったん現金を手にしては返金の繰り返し。不可解という他ない。特に【疑惑その3】では、250万円もの現金を個人口座で管理するという非常識な手段をとっており、“私的流用”を疑われてもおかしくない形だ。

■「通帳」偽造の疑いも

前出の文書には『報告書 光本議員提出の銀行口座について』という資料も添付されている。

 メガバンクの銀行口座のコピーが掲載された文書の冒頭には、大きく「事実 会派議員全員に相談報告無しに、光本議員の独断で4月20日に25万円×10回で250万円引き出される」。会派の口座には、4月20日に半期分600万円が振り込まれ、同日付けで250万円が10回に分けて引き出されていたことが分かる。

 光本市議は議会事務局の指摘もあり、会派から250万円がどこにあるのか説明を求められた。
「光本市議は、議会事務局に250万円を移した記録を出せと言われ、三井住友銀行尼崎市役所出張所で作った口座のWeb通帳のコピーを提出しました。名義人不明の口座で、今度は10回に分け250万円が入金されています」(前出の維新市議)

 議会事務局に提出した口座の写しの内容は、25万円を10回に分けてキャッシュカードで入金したというもの。そこからの顛末を、前出の維新市議が説明する。
「光本市議は、議会事務局に250万円を移した記録を出せと言われ、三井住友銀行尼崎市役所出張所で作った口座のWeb通帳のコピーを提出しました。内容は25万円を10回に分けてキャッシュカードで入金したというもの(*上掲の画像)。そこで、市議団が250万円がどこに存在しているのか証拠を出せと言ったところ、今度も三井住友銀行のWeb通帳を出してきたのです。250万円を10回に分けて入金した日付は4月20日で同じ。しかし、武庫之荘支店となっていたのです(*下の画像参照)。議会事務局に虚偽の報告をしていた可能性が高いとみられています」

■反省の色なし

尼崎市では、今年11月に市長選挙が予定されている。維新の中からは、光本市議ともう一人が手を上げている。前出の維新の市議によると「(光本市議は)250万円の疑惑は、市長選挙で会派が2つに割れた時に、自由に使えるカネが必要だと無断で移動したと述べている。さらに、6月13日午前11時に確認したところ、買ったはずのパソコンやWi-Fiルーターは市議会になかった。それが昼過ぎになってロッカーから急に発見されたと光本市議は主張しはじめた。しかし、ルーターを会派で使用していた形跡はない。誰もが怪しいと思いますよ」

政活費の原資は税金だ。当然、使途は市政に関する活動に限られる。選挙に使うのはご法度で、会派の政活費費で買った備品なら、市議団で共有されなければならない。

日本維新の会の代表を務める松井一大阪市長は、「(光本市議に)不適切な行動があった。法的に問題ありとなれば議員辞職はやむなし。党としても処分は維新で検討している」としている。だが、光本市議には、昨年、人気アニメ「鬼滅の刃」のデザインと酷似した政治用ポスターを作製して、兵庫維新の会から厳重注意処分を受けた過去もある。

光本市議は今月10日、疑惑を報じた神戸新聞の記事に「私本人から取材もせずに事実と異なることを記事にされています」と嚙みついた上で、16日には「心から深くお詫び申し上げます」とのタイトルで動画を投稿。だが、その画面に出てきたのは「説明責任を果たさなければいけないと思っております。しかしながら大変身勝手で申し訳ございませんが、少しのお時間を頂戴したいと思っております」という文言だった。まさに「身勝手」。維新の「粗製乱造」を証明する出来事といえそうだ。(*下が光本議員のツイッター投稿画面)

 

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