「告発」で窮地に立つ斎藤兵庫県知事

斎藤元彦兵庫県知事の「疑惑」を、西播磨県民局長だった渡瀬康英氏が「内部告発」した文書については先月2日に報じた(既報)。告発文には、斎藤知事がゴルフクラブ、ロードバイクなどの贈答品をもらい、選挙では事前運動に職員が関与、周辺にはパワハラと、とんでもない行状の数々が記されていた。斎藤知事は内部告発について「うそ八百」と反論し、退職予定だった渡瀬氏に対して停職3か月という「処分」を下したが、県庁内部では告発内容の信憑性が高まる状況となっている。

■事実確認された告発内容

渡瀬氏に対する処分を発表したのは5月7日。だが、それ以前に内部告発にあったコーヒーメーカーに加え、トースターを原田剛治産業労働部長が受け取っていたことが判明。内部告発のあとに、あわてて返却し「新品で開封していなかった」と発表したが、渡瀬氏と同時に原田氏も訓告処分を受けている。

兵庫県議会で追及された原田氏は、「コーヒーメーカーは受け取っていました。しかし斎藤知事の指示はありません」として、内部告発のコーヒーメーカーが事実であったことを認めている。

兵庫県は記者会見で、「誹謗中傷をする文書を作成・配布し、多方面に流出させたことで県政への信頼を著しく損なわせた」「核心部分はすべて事実無根」として内部告発を否定。誹謗中傷だと断定し、渡瀬氏については「人事のために職員1名のデータを公用パソコンで保存していた個人情報の不正取得」「平成23年から14年間にわたって、勤務時間中に計200時間程度、多い日で1日3時間、公用PCを使用」などと告発とは関係ない10年以上も前の事案を持ち出し、処分の対象とした。無理筋の処分だったということだ。

「誹謗中傷」「事実無根」で幕引きを図ろうとした渡瀬知事側だったが、コーヒーメーカーという事実が認定されたことで雲行きが怪しくなっている。ある兵庫県の職員はこう話す。

「当初、内部告発は誹謗中傷とされていたが、コーヒーメーカーの件があり日増しに『本当だろう』という声が高まっている。ゴールデンウイークを除けば、まだ内部告発から1か月ほど。たいした調査もできていないはずだ。しかし、コーヒーメーカーについては、同じメーカーのものが知事室で使用されていたという情報も県庁内で出回っている。停職3か月という重い処分を発表したのは、斎藤知事が火消しに走った証でしょう」

■違法行為に新証言

そうした中、ハンターは、斎藤知事が初当選した2021年7月の知事選挙について、ある情報を得た。

渡瀬氏の内部告発にあった、《兵庫県職員である○○○○〇、▲▲▲▲、◇◇◇◇、■■■■は、選挙期間以前から斎藤予定候補者ついて知人等に対する投票依頼などの事前運動を行った。■■氏は自分の居住地である三木市役所幹部等に対して「自分は選挙前から斎藤のブレーンだった。お前ら言うことを聞けよ」と恫喝している》という記述についての証言だ。

知事選挙では、前職の井戸敏三氏の後継として立候補していた元副知事の金沢和夫氏を自民党県連の多くが支持。一部が斎藤氏にまわって保守分裂となり、そこに維新が乗るという構図になった(既報)この件についてハンターに語ったのは、兵庫県内のある会社経営者で、地元商工会でも活動する有力者Xさんだ。

「ハンターの記事で内部告発文を見た時、『俺のことを言っているやん』と直感しました。内部告発に名前の出ているうちの2人から、私はハッキリと『知事選は斎藤で頼む。商工会でも応援してほしい』という趣旨のお願いをされましたから。保守分裂で話題になり、金沢氏の陣営からも支援を求められていました。うち1人に対して『金沢さんの方からも言われている』と難色を示すと『知事は斎藤に決まりや。こっちを応援しないとえらいことになるぞ』――。県民にそんなこと言ってええのかと思ったので、とてもよく覚えています。内部告発は事実。選挙前に県職員が選挙運動していいのかなと思いました」

Xさんは語りながら、スマートフォンを取り出した。そして3年前のカレンダーをタップしたところ《〇〇から知事選で斎藤支援の連絡があり、ごまかそうとするとえらいことにといい、困ったものだ》と入力されていた。内部告発にある阪神タイガースとオリックスバファローズの優勝パレードで《信用金庫への県補助金を増額し、それを募金としてキックバックさせることで補った。幹事社は但陽信用金庫。司令塔は✖✖副知事、実行者は産業労働部地域経済課》という部分についても、送信履歴を見ながら次のように振り返る。

「優勝パレードに寄付した信用金庫がうちの会社の取引金融機関です。昨年12月の忘年会で信用金庫の幹部と話した時に、『兵庫県は、小さな信用金庫にまで寄付を求めてくる。すぐ返事しないでいると補助金がついた。そのお礼で寄付した。いい宣伝にはなったが、露骨だ』とぼやいていました。ハンターの内部告発記事などをSNSで送信してやったら、すぐに電話があって『こんなことが表になったら大変だ』と声は上ずり、すっかり動顛していました」

「表になったら大変」という言葉は、内部告発のような「事実」があるから発せられたと考えるのが自然だろう。

■問われる斎藤知事の姿勢

5月8日、斎藤知事は定例会見を行い、「(内部告発のあった)3月27日時点で当事者として事実でない内容だとしてああいう表現をした」と発言。公益通報の調査は行われているが「三者委員会設置は、弁護士が見解を述べ、法的な観点で必要ないとされた」「懲戒処分となったので法的措置、刑事告訴はしない」とトーンダウン。「うそ八百」発言から完全に腰が引けてしまっている。前出の兵庫県職員は、呆れ顔で次のように語る。

「斎藤知事の『うそ八百』発言を受けた内部調査は、お手盛り、忖度になる結論が分かり切っていた。第三者委員会は、最低でもやるべきです、刑事事件になりかねないことを告発されているわけですから。斎藤知事が気にしているのはSNS上で内部告発のことが批判されること。知事は就任時から頻繁にネット上で自身のことを検索し、チェックしています。昨年秋には県議会でSNS上での誹謗中傷を拡散させないことを名目に、独自条例の制定を検討するとも語っていたほどです。今回の処分で、また斎藤知事は炎上するでしょう。自らが疑惑を招き炎上させていることを、条例で抑え込もうなんて無茶なことですよ」

SNSの発信を条例で制限するというのは憲法が定めた表現の自由に触れかねないとんでもない発想だ。それが斎藤知事の”本性”だとすれば、彼はとんでもない権力者ということになる。

内部告発に記された疑惑が存在していることはハッキリしている。斎藤知事は自己保身で「処分」を出す前に、第三者委員会を設置して調査するべきだった。

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