ヒグマ駆除に伴う猟銃使用許可取り消し問題( https://news-hunter.org/?p=3750 )に揺れる北海道・砂川市の周辺で、11月に入ってからまたしてもヒグマの出没が相継いでいる。市内の果樹園に複数のクマが通い続けている形跡がみつかったほか、隣町の空知管内上砂川町では地域住民が親子グマと遭遇、近くを通りかかった車に助けられ間一髪で難を逃がれる出来事があった。
■相次ぐ目撃情報
11月初旬から親子グマ3頭の出没が続いているのは、公共施設や住宅などが集まる上砂川町の中心部・本町地区。同6日午前に町営パークゴルフ場付近で目撃されて以来、8日早朝、10日午前と目撃情報が相継いでいる。6日に出没した際は、徒歩で町営温泉に向かっていた町内の女性が路上からクマを目撃、近くを通りかかった同温泉の送迎車輌に助けられて一命を取り留めた。
地元猟友会によると、送迎車はたまたま送迎とは別の用事で現場付近を走っていたところで、運転手の男性が「後ずさりしている女性」を見かけ、近くにクマがいると知って救助した。女性は運転手に「1、2秒前までそこにいた」と路肩の茂みを指し示したといい、のちに猟友会が確認したところ、現場にはクマが移動した痕とみられる窪みが残っていた。
北海道猟友会砂川支部長の池上治男さん(71)は連日、目撃情報を受けては現場に駈けつけ、クマの痕跡を確認して町への情報提供にあたっている(*下の写真参照)。
身に憶えのない危険行為を疑われて道公安委員会に猟銃を差し押さえられているさなかで、臨場は毎回“丸腰”だが、今のところ危険な目には遭っていない。池上さんによると、上砂川の目撃現場は水たまりの近くで、親子グマは水分摂取とシカ猟とを兼ねて付近に通い続けている可能性が高いという。(参照記事⇒「ヒグマ駆除の協力者を犯罪者に仕立てた砂川署と公安委」)
「親グマはおそらく妊娠していて、冬の間にまた子を産むだろう。冬眠の準備をしている可能性もあり、できればおとなしく寝て貰いたいところ。クマも生き抜くのに必死なので、人に害が及ばない範囲でうまく共存していくしかない」(池上さん)
町は現時点で銃による駆除や罠での捕獲を検討しておらず、担当の住民課は「引き続き地域への注意喚起をはかっていく」としている。
目撃情報は隣接する砂川市でも頻発しており、上砂川の親子とは別のクマが地元の果樹園に出没中。直近では12日朝にも足跡や食害の痕跡などがみつかり、池上さんが別のハンターとともに現場を訪れて移動経路などを確認した。猟友会メンバーの1人は「いつごろまで出続けるかは、山に残っている餌の量によるのではないか」と話しており、地元ではもうしばらく静かな緊張が続きそうだ。
(小笠原淳)
【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 北方ジャーナル→こちらから |