新型コロナ対策で明暗 残念な福岡県、頑張る福岡市

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府が緊急事態宣言を発令して8日。その対応を巡り、対象となった自治体の首長の動きが明暗を分かつ状況となっている。

■「小池劇場」再演

東京オリンピック・パラリンピックの延期決定以降、連日のように記者会見や動画で情報発信を続けているのが小池百合子東京都知事。4月14 日現在での都内の感染者は全国最多の2,319人に上っており、感染防止に全力を挙げざるを得ない。

小池知事は、後手に回るばかりの安倍晋三首相を尻目に慎重姿勢の国をねじ伏せ、休業要請を前倒しで実施した。財政力にモノを言わせて補償を付けたため、都民からも一定の評価を得ており、それまで休業要請に慎重だった神奈川や千葉といった自治体が追随するきっかけを作った格好だ。国とケンカしても都民を守ろうとする小池氏の存在感は日ごとに増しており、敵対してきた自民党都連などは「小池劇場」の再演にお手上げ状態となっている。

ある都議会自民党関係者は、苦笑交じりにこう話す。「まさに小池劇場だ。休業補償に後ろ向きの政府を、うまく抵抗勢力に仕立てた。多くの都民が、知事の手腕を評価するだろう。夏の都知事選は、終わったと言っても差し支えない。対立候補が誰になっても、もう小池さんには勝てない」

大阪の吉村洋文府知事も評価を上げた一人だろう。新型コロナウイルスの感染拡大に合わせるように、会見などでの露出が増加。大阪・兵庫間の往来自粛を提起するなど独自の路線で危機感を演出してきた。橋下徹元大阪市長も積極的に情報発信しており、相乗効果で「日本維新の会」の支持率が、立憲民主党のそれを上回るという結果につながった。

■穴だらけだった福岡県の危機管理

九州に目を転じると、緊急事態宣言で対象となった7都府県のうちの一つ、福岡県の二人の首長の評価が、真っ二つに分かれる状況だ。

結論から先に述べるが、昨年の知事選で大勝した小川洋福岡県知事は、リーダー失格。一方、県都福岡の高島宗一郎市長は、これまでさんざん市政批判を展開してきたHUNTERでさえ、賛辞を贈らざるを得ない見事な手腕をみせている。

福岡県の危機管理はなっていない。過去に、地震や豪雨といった大規模な自然災害を経験していながら、マスクの備蓄はゼロ。「災害発生時に購入する予定だった」(県の担当課)という危機感のなさが、医療や介護の現場でマスク不足の事態を悪化させているのは確かだろう。

感染症病床の少なさについては今年2月の配信記事で指摘したが、県の動きは鈍かった。同病床の数は、人口約511万人の福岡県全体でわずかに 66、福岡市にはたったの8床しかない。県の担当課は、87施設ある「新型インフルエンザ協力医療機関」に協力を求めるとしていたが、ベッド数の確保は間に合っておらず、民間のホテルに軽症患者を移送する事態となっている。一体、何をやってきたのか?

インバウンドに力を入れながら、福岡県や福岡市の感染症対策が不十分だったことは確かだ。下は九州・沖縄の県別人口と感染症病床の数。人口比でみると、明らかに福岡県のベッド数が不足していることが分かる。

■休業補償で違いをみせた福岡市長

安倍首相が緊急事態宣言を出した7日。対象の7都府県の一つとなった福岡県の動きに注目が集まったが、小川知事の動きは鈍く、同日夜に開いた会見では外出自粛の強化を要請する程度で、県独自の具体的な施策については何も出てこなかった。

13日、補償とセットの休業要請を表明した東京都の小池知事に引っ張られる形で、ようやく休業要請に踏み切ることを記者発表した小川知事だったが、補償については具体策なし。この日の会見に集まった記者団からも、実効性に疑問の声が上がる始末だった。

国の決めた方針を超えることのできない小川知事が評価を下げる中、昨年の県知事選挙で小川氏の対立候補を公然と支援していた高島福岡市長の株が急上昇。知事選は小川氏の圧勝に終わったが、コロナとの戦いではスピード重視の高島氏が高い評価を得る格好となっている。決定打となったのが、休業要請に対する姿勢の違いだ。

高島市長は14日、補償なしの休業要請を行った県への不満を汲み取る形で、要請や依頼に応じて休業した市内の事業者に上限を50万円として賃料の8割を補助することや、医療機関向けに40万~600万円を支給することなど、財政規模で約100億円に上る細かな支援策を公表。判断の遅れが目立つ小川知事との違いが鮮明となった。新型コロナ対策に関しては、高島氏の一連の動きを高く評価せざるを得ない。

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