江差看護学院パワハラ、自殺問題で再調査開始|初会合の第三者委が遺族へ聴き取り

北海道立江差高等看護学院のパワーハラスメント問題で、道が設置した新たな第三者調査委員会が初会合を開き、3年前に在学生が自殺した事案の調査に着手した。

道立看護学院では昨年から本年初めにかけ、旧第三者委が教員によるハラスメント計53件を認定したが(うち江差35件)、亡くなった学生のケースは現時点で被害認定に到っておらず、本年5月に遺族が道へ再調査を申し入れたところだった(既報 )。

◇   ◇   ◇

江差看護学院に在学していた男子学生(当時22)が亡くなったのは、2019年9月。当時の教員らは遺族に対し、自殺の原因を「わからない」と説明していたが、一連のハラスメント問題発覚後の昨年11月、学院長(当時)が学生の母親(46)に謝罪メールを送り「パワハラがあった」と明かしたことがわかっている。

これを受けた母親は同12月、江差の被害者らの代理人を引き受けていた植松直弁護士(函館弁護士会)に相談を寄せ、本年5月になって道に第三者調査を求める要望を寄せた。道は6月の議会で第三者委設置を検討する考えを明かし、地元弁護士会に人選を依頼するなどの準備を進めていた。

今回公表された第三者委の顔ぶれは、弁護士の須田布美子氏(札幌弁護士会)、同じく野谷聡子氏(同)、及び学校心理士認定運営機構日本学校心理士会の会長を務める北翔大学(江別市)学長の山谷敬三郎氏の3人。札幌市内で10月11日午前に開かれた初会合では委員の互選で須田弁護士が座長に就き、終了後の記者会見で次のような考えを述べた。

「事案の重要性に鑑み、できるだけ迅速に調査を進めていきたいと考えております。命が失われるという非常に重大な結果が生じていますので、そこは『ご本人が亡くなっているからわからない』ではなく、できるだけ誠実に、きちんと調査して事実認定をしていくという姿勢で取り組んでいきたい」

調査方法としては昨年設置された旧第三者委と同様、おもに関係者への聴取を通じて事実の有無を判断していくことになる。初会合当日の午後には、亡くなった学生の実家がある町に委員らが赴き、町内のホテルで約2時間にわたって母親への聴き取りを行なった。今後は学生の同窓生やハラスメント関与が疑われる教員などへも聴取が行なわれる見込みだ。

調査開始を受け、学生の母親は次のような思いを語っている。
「息子の自殺とパワハラとの因果関係が認められるかどうかはわかりませんが、なかったことにされるのは違うと思うし、決して先生たちを許すことはできません。ただ、私としては『学校がよくなってくれたら』という思いもあるんです。息子が死んだことを後輩の学生さんたちが知らないわけがないので、(一連のパワハラ)問題をおおやけにできたのは、息子の件があったことも大きかったんじゃないか。だからこそ、学校には変わってもらいたいと思います」

母親の聴き取りに同席した植松弁護士は、今後の調査について「この件の事実関係を解明するだけでは充分とは言えない」と指摘、「昨年の第三者委が認定したような学校のハラスメント体質や構造的な問題にしっかり斬り込んで貰わないと、亡くなった学生さんの無念を完全に晴らすことはできないと思う」と話している。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。
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