北海道・江差パワハラ第三者委員会に募る不信|父母会からも疑問の声

早期の対応が求められる北海道立江差高等看護学院のパワハラ問題で、学院を運営する北海道がハラスメント調査にあたる第三者委員会の「開催要領」をまとめていたことがわかった。在学生の保護者らでつくる「父母の会」の要請を受けて明らかにしたもので、策定は今月12日付。要領では、第三者委の事務局が道の担当課内に置かれることになっており、父母の会関係者からも「これでは内部調査と変わらない」と不信の声が上がっている。

■事務局はパワハラ隠蔽の所管課内

父母の会が道に対して3度目になる要請を寄せたのは、今月14日のこと。溯って11日に招集された道議会で、道が改めて江差高看の在学生・退学生を対象とする被害調査の実施を表明したものの、記入式の調査票をわずか10日後の同23日までに回収する考えを示したことから、父母の会が同期日の延長などを求めて急遽、要請文を作成した。併せて同議会で報告された「第三者調査」の独立性・公平性を担保するよう、同委事務局を看護学院の担当課ではない部署(人事課など)に置くことや、父母の会との意見交換を設けることなどを申し入れている。

道医務薬務課はこれを受け、21日までに回答をまとめた。以下に全文を採録しておく。

要請1…ハラスメント事案調査票の申出期日の延長を求めます。
回答《この度のハラスメント事案に係る調査の実施に当たっては、第三者による調査を速やかに実施できるよう、期日等を設定させていただきましたが、期日後にご提出いただいた内容につきましても、第三者委員の方とも相談の上、可能な限り調査に反映してまいります》

要請2…第三者委員会による公正な調査を求めます。/第三者委員会の設置要綱等を明らかにしてください。/事務局を人事課等に設置してください。医務薬務課に事務局を置くのは、公平・公正な調査という点から、大きな疑問を感じます。
回答《この度の第三者による調査につきましては、令和3年5月12日に策定した、別添「道立江差高等看護学院を巡る諸問題への対応に関する第三者調者委員会開催要領」により実施してまいります。/なお、調査に当たっては、調査の手順や学生等からの情報収集の方法について、予め法律家等に確認をいただくほか、結果の取りまとめに際しても、事務局を担う職員の関与は、事務的な作業にとどめるなど、客観性の確保に慎重を期した上で執り進めてまいります》

要請3…第三者委員会と父母の会との意見交換の場を求めます。
回答《第三者による調査に当たりましては、委員の方々が必要と認める範囲で、ハラスメント行為の当事者の方々のお話を伺っていくこととしております》

3点設けられた要望のうち、1(調査期日延長)及び3(意見交換)は一定程度受け入れられたように窺えるが、2(第三者委の公平性担保)への対応については保護者から疑問の声が上がった。

道の回答には委員会の設置要領こそ示されたものの、添付された同「要領」には《委員会の事務は、保健福祉部地域医療推進局医務薬務課が行う》との一文があるのだ。父母の会関係者の1人(54)は、不満を顕わにする。
「歯切れの悪い回答です。医務薬務課が事務局ということは、外部調査ではなく内部調査ですよ。何回同じことを繰り返すのか…」

■道庁の狙いは時間稼ぎ?

保護者らの不信は、担当課が調査に関わり続ける限り払拭されない。被害の訴えがこれまで何度も握りつぶされてきた疑いがあるためだ。

ハラスメント問題があかるみに出る前の3月中旬、道の担当課は当時の在学生への聴き取り調査にあたっているが、その際に学生と直接やり取りした職員の1人が4月の異動で江差の教員に配置されていたことがわかった。先の関係者はこの異動を「勇気を出して証言した学生を失望させる対応」と厳しく批判、第三者委が同じ轍を踏んではならないと訴える。

11日の議会報告を機に配布された新たな調査票についても、学生の中にはすでに関心を失いつつある人がいるといい、退学生の1人(20)は「みんな諦観ぎみで『また書いても何も変わらない』と思っている人もいるようです」と明かす。

当初予定では5月中にも第三者委が「現地調査」にあたることになっていたが、道によれば21日時点で委員のメンバーすら固まっていない。ハラスメント被害者への謝罪や休学・退学生などの被害回復、加害者の処分や異動など、多くの問題がまったく解消されないまま、新学期開講から2カ月が過ぎようとしている。

(小笠原淳)

(※ 江差高等看護学院パワハラ問題の続報を、現在発売中の月刊「北方ジャーナル」6月号に掲載しています。)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

*「江差高等看護学院の正常化を求める父母の会」公式サイト⇒https://esashi-seijo.main.jp/

 

 

 

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