【速報】パワハラ死遺族が事実調査要請|江差看護・最悪の被害、認定への一歩

北海道立高等看護学院のパワーハラスメント問題で、教員のハラスメントを苦に自殺した学生の遺族が、当時の加害行為について改めて調査するよう道に要請を寄せたことが5月18日までにわかった。同学生の事案は昨年までの第三者調査では被害認定されておらず、遺族の代理人は「調査の結果を受けた上で充分な被害回復を求めたい」としている。

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江差高等看護学院で在学生の自殺事案があったのは、2019年9月。教員の指導拒否などで1年間の留年を強いられた男子学生(当時23)が、江差町内のアパートで自ら命を絶った。遺族となった母親(45)は、当時の教員から「思い当たることが何もない」と説明を受けたが、同学院では昨年になってから長期間のパワーハラスメント問題が表面化、第三者調査により50件以上の被害が認定されるに到り、亡くなった学生のハラスメント被害も強く疑われるところとなった。

その母親が息子の被害を確信したのは、昨年11月。当時の学院長が謝罪に訪れ、教員によるハラスメントがあった事実を認めたのだ。

謝罪内容が事実ならば、事件直後の説明には虚偽があったことになる。告発の声を上げることを決意した母親は、昨年暮れに初めて弁護士へ相談を寄せ、併せて筆者など地元報道の取材にも応じ始めた。本年5月には同弁護士を正式に代理人委任したところだ。

一連のハラスメント調査にあたった道の第三者委員会は、当該自殺事案を調査対象から除外している。事件があったこと自体は把握していたものの、ハラスメントとの因果関係を裏づける証言などを得るには到らなかったためだ。だが今回、遺族自身が声を上げたことで、道が再調査に踏み切る可能性が高くなった。

調査要請について、遺族の代理人を務める植松直弁護士(函館弁護士会)は次のように話している。

「道への要望は、大きく3つ。1つは事実関係の調査、もう1つは亡くなった学生さんに関する資料一切の開示、そしてもう1つ、学院長の謝罪の根拠を示すことです」

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遺族に謝罪した前学院長は、母親に直接頭を下げるに留まらず、ハラスメントを認める内容のメールを送信していた。その文面には「パワハラ虐めが御座いました」との記述があるが、具体的なハラスメントの内容までは明かされていない。

「そうした事実関係をすべてオープンにし、因果関係を調査してもらう必要がある」と、植松弁護士。加害責任の追及は結果報告を受けてから検討することになるが、結果次第では法的措置をとることになる可能性もあるという。

看護学院の長期パワハラの中でも最大の被害といえる自殺事案は、発生2年あまりを経てようやく被害回復への一歩を踏み出した。関係者によると、道の担当課は「ご遺族の意向も確認しながら適切に対応していく」と受け止めているといい、遠からず再調査に着手することは避けられない見通しだ。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。
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