鈴木直道知事が質問書無視|パワハラ隠蔽に通じる北海道庁の非常識体質

ハンターが行った「道立江差高等看護学院」のパワハラ事案に関する開示請求に対し、加害者側である学院に請求内容や記者の氏名、電話番号といった情報を伝えたり、請求の「受付日」を大幅に遅らせるという前代未聞の対応で開示決定期間の起点日を捏造するなどして事実上の隠蔽に走った北海道庁が、一連の不適切対応に対する鈴木直道知事への質問書に不誠実極まりない回答で応じた。質問書は知事宛てだったが、回答を作成したのは不正を犯した所管課。パワハラ被害を隠蔽し続けてきた道庁組織の体質は、まったく改まっていない。

■質問に答えぬ鈴木知事

知事宛ての質問書は今月19日付。まず、前提となる事実を次のように述べた。

 1 令和3年3月29日午後12時頃、知事宛てに“北海道立江差看護学院(請求書では「学校」と表記)の学生や学生の家族などから寄せられたパワハラについての告発、苦情、相談についての記録と、それらに対する道庁側の対応が分かる文書”の情報公開請求を行った。

請求内容からも、パワハラが江差高等看護学院の内部で起きていることは明らかだったが、あろうことか、31日に当方に対する請求内容の確認を行ってきたのは、江差高等看護学院の事務局だった。

文書課行政情報センターに守秘義務違反であると抗議したが、何の反応もなく、現在に至っている。

道庁から何の連絡もなかったため、4月14日に江差高等看護学院を所管する道医務薬務課看護政策係に電話したところ、「請求は届いています」と明言し、文書の特定を行っているとのことだった。開示か不開示か、いずれかの決定通知が送られてくるものと信じて待っていた。

ところが、16日になって郵送されてきたのはコピーして同封した別紙2枚の文書で、そこには開示請求の「受付日」を「4月13日」と記してあった。

北海道情報公開条例は『実施機関は、開示請求があったときは、その翌日から起算して14日以内に、公文書の開示をするかどうかの決定をしなければならない』と規定しており、そこにある『その翌日』が「受付日の翌日」を示すものであることに、合理的な反論があるとは思えない。

しかし、文書課行政情報センターも道医務薬務課も「文書の特定に時間がかかった」とする主張で、自らの行為を正当化する姿勢を示し、謝罪の言葉も、決定の取消しも行わない構えである。

電子申請システムによる「受付確認メール」まで送られてきているにもかかわらず、請求受付日を恣意的に先延ばしし、開示決定期限の基準日を不当に変える行為は、明らかな条例違反であると思料する。

質問は『以上2点の事実について確認の上、知事のお考えと、今後の方針についてご回答願います』という簡単なものだった。封筒はもちろん、文書の宛先も「北海道知事 鈴木直道殿」。当然、知事名で回答が来るものと考えていた。回答期限を23日にしていたが、25日になって送られてきたのが下の文書である(*画像クリックで拡大)。

質問書は、知事の部下が犯したルール違反について問うたもので、当然知事本人が回答すべきものだが、なぜか回答は不正を働いた当事者である行政情報センターと医務薬務課看護政策担当となっている。道庁得意のゼロ回答だが、知事が承知でこの文書を発出させたとすれば、彼はとんだ食わせ物。面倒なことは部下に任せるという、ただのパフォーマーということだろう。


■道庁への反論

ハンターの情報公開請求は、パワハラという犯罪事実とその発生施設を示した上で、所管課が当該事案に係る公文書を保有しているか否かを問う内容。道の行政情報センターが、江差看護学院内部で起きたパワハラという犯罪行為に関する開示請求の内容を、犯罪行為者がいる学院に知らせるという非常識な対応は、例えばDV被害者の居所を加害者に教える警察や自治体の行為と同じだ。あえて、犯罪者側に「調べられていること」が分かるように仕向けたともとれ、これまで江差高等看護学院を所管する道医務薬務課が、少なくとも10年以上前から続いてきた教員らによるパワハラ被害の訴えを握りつぶしてきたこととも通底する。

一連の対応は、「パワハラ」を軽く見ている証左とも言え、それはつまり、身内を庇う役所の悪しき体質に起因するものだろう。どれだけ屁理屈を並べても、道庁の行政情報センターが江差高等看護学院側に開示請求の内容を教えたことは明らかな守秘義務違反であり、絶対に容認される話ではない。

次に「受付日」の解釈について――。道庁は、公文書の受付日を“対象文書が確定したあと”だと強弁しているが、役所の勝手な都合で受付日を決めていたら、「14日間」という北海道情報公開条例が定めた開示決定期限が意味をなさなくなる。役所が「受付」を認めなければ、1カ月でも1年でも開示決定期限の基準日が先延ばしにできるからだ。そうしたことがまかり通れば、開示期限を定めた条例の趣旨が、完全に否定されることになる。知事も関係職員も、《実施機関は、公文書の開示その他の事務を迅速に処理する等この条例に定める情報公開制度の利用者の利便に配慮をしなければならない(第3条2)という規定を、再確認すべきだ。情報公開制度の形骸化は、道民の不利益につながることを忘れてはなるまい。

 

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