衆議院選挙で大敗した自民党が党役員の、政府は副大臣と政務官の人事を公表した。「本当に人がいないね」とため息をつくのは、自民党のある大臣経験者。メンバーをみると、まさにその通り。人材難を象徴した格好となっているのが、今井絵理子内閣府兼復興大臣政務官と生稲晃子外務大臣政務官の人事である。
◆ ◆ ◆
今井氏はアイドルグループSPEEDのメンバーから参議院議員に転身して現在2期目。だが、話題になったことといえばスキャンダルばかりだ(既報)。
昨年7月、自民党女性局のパリ研修では「エッフェル姉さん」こと松川るい参議院議員が、同行していた大阪の府議2人と、エッフェル塔前でポーズを決めてSNSに投稿。「観光旅行なのか」と大炎上した。
そこに油を注いだのが今井氏。松川氏と観光地のツーショット写真を投稿し、SNSでは《海外研修に対して、「公金を使って無駄だ」という指摘もありますが、無駄な外遊ではありません》と反論したことで、逆に批判を浴びた。現在まで研修報告書は公開されておらず、問題収束には至っていない。
醜聞で世間を騒がせたことも記憶に新しい。今井氏の不倫相手だった橋本健元神戸市議は、印刷所の領収書を捏造するなどの手口で政務活動費を騙し取っていたとして神戸地検から詐欺罪で起訴され、結果的に神戸地裁で懲役1年6月執行猶予4年の有罪判決を受け市議を辞職。その橋本氏は問題のパリ研修について《仮に全額党費だとしても問題ないんだけどね》と今井氏の“援護射撃”を買って出たが、それがまた“炎上”を招き、世間を呆れさせていた。
今井氏は自身のブログで、橋本氏が妻と離婚したことに触れつつ、《私、今井絵理子は元神戸市会議員の橋本健さんとお付き合いさせていただいております》と公表。不倫関係だったことを実質的に認め、開き直っている。
政務官は2度目となる今井氏。「1回目の政務官で、特に何かやったという実績はない。復興担当として能登半島地震や東日本大震災の現場に行って、目立ってくれたらいいって感じだろう」と官邸関係者も冷ややかだ。
◆ ◆ ◆
生稲氏は、アイドルグループ「おニャン子クラブ」出身。2022年の参議院選挙で安倍派の“推し”によって当選した。しかし、参議院選挙中に安倍晋三元首相の銃撃事件が発生。背後に旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の存在があることが明らかとなる中、生稲氏が安倍派の幹部、萩生田光一衆議院議員ともに選挙支援を受けるため八王子市にある旧教会の関連施設を訪問し、支援を呼び掛けていたことがわかりバッシングにさらされた。
メディアに旧統一教会のことを聞かれた生稲氏は、「お化粧を直していて、よくからずに」と空気を読まない答えをしたことでさらに炎上。今回、外務大臣政務官に就任したが、前出の官邸関係者は「彼女に外交手腕があるとは思えません。もし海外からの賓客があったときに上手に対応してくれればいいのかと思う程度」とにべもない。
◆ ◆ ◆
先の大臣経験者は、石破茂首相の胸中を察するように副大臣、政務官人事の裏側についてこう話す。
「安倍派、裏金議員は絶対に入れないという固い決意だったようだ。80人以上いた裏金議員のうち28人が落選。自民党全体でも議席を減らしたので当選回数から見ても候補が少ない。だから資質に疑問符が付く元アイドル2人を入れるしかなかったのでしょう。ただこの2人は何をするかわからないので、政務官なら役所が監視できていいんじゃないのか。財務省出身の西野太亮(熊本2区)なんか、『役所にずっといなくてはならないので政務官はやりたくない』と嫌がっていたそうだが、こういう大口をたたくのもいるよ」
石破首相は一方で、党の役職には12人の裏金議員を起用した。前出の松川氏は国防部会長代理、安倍元首相の側近である江島潔参議院議員は交通関係団体委員長、1,482万円もの裏金を懐に入れていた宮本周治参議院議員は財務金融部会長、暴力団関係の企業から支援を受けていた鈴木英敬衆議院議員は財政・金融・証券関係団体委員長といった状況だ。
「党人事なので、裏金議員であっても使わないと人が足らないんだ。ただ、問題は裏金だけではなく旧統一教会もある」(前出・大臣経験者)。
江島氏は旧統一教会の関連団体の会合に出席し、求められた政策の文書にサインするなど、とりわけ強い関係を有していると過去に報じられている。落選したある裏金議員は、「かつての仲間が党の役職につけただけでもよかった。今後、政界復帰するにもプラスだ」と安どの表情をみせる。しかし、石破首相は裏金相当額となる7億円の国庫返納か被災地などへの寄付をするか、という新たな対応策を打ち出している。今後、さらに裏金議員への風当たりが強くなるのは間違いない。
前出の落選議員は、「いつまでも裏金議員と言われるとやっていけない。来年は参議院選挙もあり、そこで非公認などの扱いになればさらにダメージが広がる。石破総理もそろそろ手打ちをしてくれないものか」と胸中を打ち明ける。
衆院選の惨敗を目の当たりにした議員らが、これまで拒んできた政治倫理審査会への出席を申し出るケースが増えてきた。再びクローズアップされそうな政倫理審だが、“いまさら”という感じは否めない。