夏の参議院選挙を目前に、各党の候補者が続々と発表されている。その中で混とんとしているのが大阪府選挙区だ。
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直近3回の参院選における大阪選挙区で、定数4のうち2議席を獲得している日本維新の会。今回は、党内予備選を実施した結果、大阪市議の佐々木理江氏と岡崎太氏の新人二人が選ばれた。現職で当選1回の梅村みずほ氏は予備選で敗れて選ばれなかったこともあり、同党からの離党を表明している昨年10月の衆議院選挙では維新の現職だった足立康史氏が公認から外されていた。ある維新の大阪府議が複雑な党内事情についてこう語る。
「梅村、足立の両氏は、2022年に行われた代表選に出馬し、当時の代表だった馬場伸幸氏とその座を争った。大阪組が上位を占める維新の中で、そこに弓引くような2人の出馬に、『何様のつもりだ』という批判があった。梅村が予備選で負け、足立氏が外された背景には、代表選があったということです」
似たようなごたごたは、自民党でも起きている。現職の太田房江氏がいながら、ゴールデンウイークを前にまだ候補が決まっていないのだ。6年前の参院選では維新が圧倒的な得票で上位2議席を獲得、トップとなった梅村氏の72万票あまりに対して太田氏は最下位当選となる55万票にとどまった。太田氏に一本化して臨んだその結果を、自民党の大阪府議が振り返る。
「6年前の参議院選挙では、維新が大阪府知事選と大阪市長選を仕掛けてきた関係で、参院に出馬予定だった柳本顕元衆議院議員が市長に転身。太田さんはタナボタで再度の公認を得た。最下位当選だった6年前に太田さんは、『次はない』と大阪府連から言われていたはずだ。当時、安倍晋三首相がテコ入れのために大阪入りし、なんとか太田さんを当選させたが、立憲民主党などの野党が一本化していれば負けていた」
そうした背景があるにもかかわらず、太田氏は再び手を挙げている。6月の誕生日がくれば74歳になるという太田氏。もし当選すれば6年後の任期満了時には80歳となる。そんな太田氏には複数のスキャンダルが付きまとう。
大阪府知事在任時、「食肉の帝王」と呼ばれた大手食肉業「ハンナン」の浅田満氏と懇意な関係にあった太田氏。浅田氏は、2004年、BSE(牛海綿状脳症)対策の一環で国が国産牛肉を買い上げた際の「牛肉偽装事件」で逮捕、有罪判決が確定した人物だ。
2005年10月の大阪府議会。太田氏は、“知事は、初めて当選した年の7月8日に「聊娯亭」と呼ばれる浅田氏の自宅で、副知事や環境農林水産部長などとともに同氏と会食し、最高級牛肉の土産をもらったと言われておりますが、事実ですか”と問われ、「お土産をいただいた」と認めながらも「ただ、量も価格もそれほど、御指摘のような(高級な)ことはございませんで、夫婦二人で一回で食べ切るだけの量でございました」と反省なき答弁を繰り返していた。当時太田氏は、ハンナン側などの食肉業界に“便宜を図ったのではないか”と厳しく追及されていた。
2007年には、大阪府の事業を受注する業者らの集まりである「関西企業経営懇談会」で飲食を伴う懇親会への出席。その際に、講師として多額の謝礼をもらっていたことが発覚し、3期目への出馬断念に追い込まれた。金銭絡みの醜聞はそれだけに止まらず、安倍派の裏金事件でも214万円の裏金をため込んでいたことがわかっている。前出の自民党府議が厳しく指摘する。
「太田さんといえば、政治とカネの問題ばかり。カネに汚いというイメージで定着しており、非常に評価が低い。年齢のこともあって、現職であるにもかかわらず、『とても自民党として推すことはできない』との意見が府連内では多い。情勢調査では国民民主党の人気が高く、候補者を擁立してくるのが確実。そうなれば維新の2人、公明党、立憲民主党、自民党、共産党などと争うことになる。ブラックと見られている太田さんで戦えば、我が党の議席を失いかねない。6年前の参議院選では、党内の地方議員に、太田さんの陣営が『カネをばらまいた』という噂が流れました。太田さんの関係者とコンビニのATMに行き、そこで引き出されたカネを直接地方議員に渡したという具体的な話までありました。また、ある地方議員には祭りやだんじりのイベントへの参加費名目で、けっこうなカネを出しているとも聞いています。なぜそんな噂に信ぴょう性があるのかといえば、自発的に太田さんを応援しようという地方議員が見当たらないからです。一部の声の大きな地方議員が『太田でいくんだ』と発言するばかりで、会議は紛糾し決まらない状況です」
参議院選挙まであと3か月ほど。公募の時間もない中で、自民党が“ウルトラC”として狙っているのは、維新を外され離党した梅村氏だという情報がある。
「梅村は維新の予備選で負けてから、あちこちの党と接触していましたよ。4月18日にも、東京の衆議院議員会館で、ある党の幹部を訪ねていたのが目撃されています。自民党からも、若い梅村ならなんとか議席が確保できるという話が伝わってきています。そうなれば梅村に維新票の一部も流れる可能性があります。ただでさえ支持率が低調な中、万博も悪評ばかり。2議席とるのはむつかしいという気がしますね」(前出、維新の大阪府議)
ちなみに、ひところ大阪府選挙区で国民民主党から出馬するのではと報じられていたのが足立氏。玉木雄一郎代表が見込んだ候補者だったというが、かつてSNSなどで労働組合に罵詈雑言を浴びせていたため、連合が猛反発して擁立リストから外されている。
自民党、維新、国民民主党が候補者擁立でごたついている。