自民が目論む維新の分裂

今月10日、自民党の岸田文雄前首相、麻生太郎最高顧問、茂木敏充前幹事長の3人が東京都内の日本料理店で会食。少数与党となっている石破茂首相の政権運営や6月の東京都議選、さらには7月の参院選について話し合ったとみられる。

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「岸田、麻生、茂木といえば、昨年までは3頭政治の中心人物。衆議院で予算が通過したので、解散総選挙も近いのかと正直ビビってます」と表情がさえないのは、昨年10月の衆院選で比例復活当選した自民党のA氏だ。

石破首相は、新年度の予算案を日本維新の会が主張する教育無償化に合意するなどして衆議院を通過させた。憲法の規定で、4月初めには成立する見込みだ。当初、国民民主党の「103万円の壁」に譲歩して予算案への合意を得ようと狙っていたが、国民民主は所得税の課税ラインを178万円までアップするように求め、交渉が停滞した。そこで石破首相は、以前から親しい関係にある日本維新の会の前原誠司共同代表と秘かに会談したという。

「防衛大臣経験者の石破総理は防衛族のドンだ。前原さんも野党時代から安全保障に詳しく、どちらも鉄道が趣味で公私ともに親しい。そういう関係を使って維新の教育無償化を飲む引き換えに、予算案賛成をとりつけた。総理にとっては、維新の教育無償化で必要な財源は6,000億円程度と安く済む。ところが103万円の壁だと6兆円を超すカネを捻出しないといけない。これで財務省にも納得してもらえるということだ」(自民党の大臣経験者)

公明党も含めた3党合意には維新の代表である吉村洋文大阪府知事も出席。吉村氏は「公約を果たすことができた」と胸を張った。維新は、すでに大阪府で高校無償化をスタートさせている。大阪府の予算は約290億円。それが、予算案への賛成で、高校の教育無償化が国の負担となった。匿名を条件に維新の国会議員がこう話す。

「維新としてはとてもラッキー。これまで大阪府が負担していた290億円を国が肩代わりしてくれる。おまけに、片足は自公政権に突っ込んだようなものですからね。これまで吉村代表は『自民党とは組まない』と言っていたが、うちは多くが元自民党から維新に参加したという国会議員が中枢を占めるので、喜んでいる人が多い」

だが、それだけで終わらないのが永田町だ。3月10日、NHKの世論調査では石破内閣の支持率が36%と2月の調査と比較して8%も下落。その後、石破首相の10万円商品券問題が浮上して、朝日新聞の調査では20%台へと急落している。危険水域だ。

予算案が通過しながらのこの数字。先の3頭会談もあいまって「茂木さんが岸田と麻生の両氏に持ち掛け、会談となってそうだ。無役の茂木さんにとっては現状が我慢ならない。石破総理は麻生さんに気遣い、自民党の最高顧問のポストを用意した。しかし、麻生さんは昨年9月の総裁選で高市早苗を推すほど石破総理を嫌っている。3頭会談は、茂木さんの復権とポスト石破への模索がはじまっている証拠だ」(前出の大臣経験者)

そこで想定されるのが、商品券問題を受けて現実味を帯び始めた「解散総選挙」のタイミングだ。永田町では4月の予算成立直後、もしくは夏の参議院選挙とあわせた衆参ダブル選挙かと、ウワサになっている。

在任64日間と短命に終わった1994年の羽田孜内閣以来、30年ぶりの「少数与党」となっている石破政権。現状では、石破首相が支持率をアップさせる方策を見出だせる可能性は低い。

「自民党内では、今回の参議院選挙は1人区で多く勝てると見込んでいる。ただ、負けるとなれば総理の不人気が原因になるという見方が大半です。そこに今のような解散風が吹くと、選挙の顔が石破首相では勝てないとして退陣に追い込まれるでしょう。とりわけ、私のように前回の衆院選で復活当選のした議員は、より声を大きくすることになる」(前出のA氏)

騒がしくなってきた永田町で自民党が仕掛けているのは、維新分裂作戦。予算案への賛成を巡っては、本サイトで報じてきたように維新内部で論議が紛糾した。吉村代表や前原氏と距離を置く馬場伸幸前代表のグループ―ー維新の本流である大阪組と対立するグループーーが反発しているからだ。

「誰をトップに据えるべきか。党が割れるんじゃないか。そんな話ばかりがよく出ます。ただ、この人ならという人物がいないことと、吉村代表にカリスマ性や発信力があるため、馬場グループのみんなが周りを見ている状況でしょう。ただ、4月に開幕する大阪・関西万博がこければ、一気に雪崩を打って新党結成になびく可能性あります」(前出の維新議員)

事実、自民党からも次のような声が聞こえてくる。

「国民民主党は労組の力が強いから割れたりはしない。自公政権に入るにも労組が大きな障害となる。特定の支持団体がない維新が割れてくれたほうがはるかに取り込みやすい。なんといっても維新はもともとが自民党という議員が多い。壁が低い。少数与党で支持率低迷の石破政権にとっては解散総選挙など打てる手は限られる。維新が割れてくれて一部が自公政権に参加すれば、とりあえず少数与党から脱却して難局を乗り切れる。どこまでそれを仕掛けることができるかが、解散総選挙が早くなるかどうかのポイントだ。商品券問題があるにせよ、3頭会談もそこまで見越してのこと。マスコミに分かるよう、これにみよしがしに会談したことでも、よくわかるはずだ」(自民党の中堅議員)

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