大阪府の吉村洋文知事はゴールデンウイークを前にした4月26日、大阪市住之江区の国際展示場「インテックス大阪」に開設した「大阪コロナ大規模医療・療養センター」を5月末で閉鎖すると発表した。
無症状・軽症者用は1月末から、中等症患者用が2月中旬から開設された同センター。吉村知事は「1日1,000人を受け入れることができる。国からも医療従事者派遣の支援を得ている」とお得意のパフォーマンスでPRしていた。
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だが、利用実績は低空飛行。1日1,000 人が受け入れ可能な中で、多い日で最高が70人。4月から5月にかけては1日あたり10人前後にとどまり、利用率は2.7%しかなかった。当初の予算は84億円。ある大阪府幹部が怒りをにじませ、こう語る。
「あまりに利用率が低く、84億の予算を78億に減らして対応しました。ホテルを使った宿泊療養施設の利用率が、20%から30%と余裕があるのに、大阪市内からかなり離れた国際展示場に大規模療養センターを設置するという計画自体が無謀だった。結果をみれば一目瞭然。他にも設置できる候補はいくつもありましたからね」
2月24日の配信記事(「死者数比較で失政は明らか|吉村大阪府政の“お寒い”コロナ対策」)で報じたとおり、がらんとした、国際展示場のフロアに間仕切りをしただけの病室は、吉村知事自身が「野戦病院」と認めるほど。4月末で利用した人の合計は290人だったという。4月30日には、同センター専用の受付電話を終了させた。
78億円を290人で割り算すると、1床に2,689万円かかった計算だ。2,689万円もあれば、著名な病院のVIP病室で治療、療養しても十分おつりがくる。
ハンターの取材に応じた大阪府のコロナ新規感染者の対応窓口「自宅待機SOS(自宅待機者等24時間緊急サポートセンター)」の関係者は、次のように内情を話す。
「センターは受付専用電話がある。SOSは宿泊療養のホテル手配とすみ分けがあった。しかし、3月中旬に入るとセンターからこちらに毎日、電話が転送されてくるようになった。聞けば『センターは寒いし、海沿いの埋め立て地で強風が吹けば、夜に変な音がして怖がられる。評判が悪い。ホテルのほうが落ち着けるので集約したい』ということでした。なぜ、急にSOSが忙しくなり、フロアを増床して対応をはじめたのか、よくわかりました」
同センターに勤務していた看護師も「利用者が少ないので暇すぎた。1日で対応する患者さんが4、5人ですからね。週に4日か5日、普通に仕事をすれば月給60万円ほどになります。給料って、結局は税金からじゃないです。あまりに楽すぎて、悪いような気がして……。そもそも、センターって必要だったのでしょうか」と本音をこぼす。
先のSOS関係者によれば、すでにスタッフの一部は第7波を想定して7月末まで契約延長されているそうだ。
「今もSOSは電話が頻繁で忙しいです。なぜ忙しいかといえば、0570からはじまるナビダイアルのせい。有料となっているの電話番号へのクレームなのです。コロナになって生活が厳しい、仕事ができない中、20秒10円の電話代を払ってまで苦情を申し立てるしかないというのです。その気持ちは確かにわかります。終電近くまで仕事を余儀なくされているのは、SOSのせいなのです」(前出の看護師)
大阪コロナ大規模医療・療養センター、自宅待機SOS――まさに吉村府知事による「失政」の実例である。