長期化確実のIR認定で窮地に立つ「維新」

大阪府と大阪市が議会で議決したカジノを含む統合型リゾート(IR)について、事業を所管する国土交通省は今月8日、立憲民主党との会合の中で「年内にIR計画の認定を出すのは難しい」とする見解を明らかにした。同省は有識者会議に諮って審査しているが「IR用地の地盤沈下、汚染などについて懸念が示され、すぐに判断ができない。かなり時間がかかる可能性もある」として、関係者が「長期化」を示唆。大阪府・市と、IR事業者であるオリックスなどが構成する企業体は2029年の開業を目指し国交省からの認定を「今年秋」と想定して計画を進めていたが、先行きに暗い影を落とす状況となっている。

◇   ◇   ◇

慌てた大阪市の松井一郎市長は、「年内に認可されなくても、ただちに大きな影響はない」と記者会見で火消しに走った。しかし「本当に困るのです、早く認可されないと……」と不安げに話すのは、松井氏と大阪府の吉村洋文知事のツートップがけん引する大阪維新の会の府議だ。

来年4月には大阪府知事選と大阪市長選が控えており、統一地方選では大阪府議会議員選挙をはじめとする各級の選挙が実施される。維新は、松井氏が引退を表明し「後継」に大阪維新の幹事長で府議の横山英幸氏を選出したが、吉村氏や松井氏と比較すると、「横山って誰ですか」という声が多く、知名度のなさが大きなネックだ。

横山氏の選出にあたって、維新は党内で「予備選」を実施。決戦投票を経て横山氏と決めた。だが、議員バッジを持つ特別党員の投票率が86%だったのに対し、一般党員はそれは34%の低調。まったく盛り上がらなかった。

「大阪市長選の候補者を決める投票があったのですか? 知らなかった」、「横山なんて聞いたことも見たこともないから、投票しなかった」――維新の一般党員に取材するとそうした声ばかりが返ってくる。

維新は、吉村氏の知名度と横山氏をセットで売り出したい戦略のようだが、IRの認可遅れがはっきりした現在、これまで通りの支持が得られるかどうか不透明だ。「怖いのは横浜市長選の再来ですよ。IR賛成、反対が明暗を分けましたから」と前出の府議は話す。

2021年8月に実施された横浜市長選で現職の国家公安委員長という立場から転身を狙った小此木八郎氏は、父が元通産大臣、祖父も衆議院議員という政治家3世。バックには同じ神奈川を地盤とし、盟友と言われた菅義偉元首相がひかえ圧勝かとみられていたが、IR誘致反対を徹底して訴えた横浜市大教授の山中竹春氏が圧勝するという大番狂わせが起きた。

まさかの敗戦に小此木氏は政界引退、菅氏も自民党総裁選不出馬に追い込まれ、短命政権で終わった。この時のことを引き合いに、維新と対抗する自民党の府議がこう指摘する。
「大阪のIRの場合、府議会、市議会で通ってすでに国交省に申請しているので、横浜市とは状況があまりに違いすぎる。しかし、認可遅れは府民、市民には何か問題があるかという印象を与える。実際、地盤沈下や土壌汚染の対策費に790億円が税金から投じられることが明らかになっており、批判も多い。また、ここにきて事業者に貸し出す土地の価格の鑑定が大きな問題になり、市議会などで取り上げられている。維新のIR構想は、大きな支持を背景に『言うことを聞け』と押し通すような手法だが、ここにきて綻びがみえてきた」

問題が指定されている鑑定は、大阪府と市がIR事業者に貸し出す土地価格算定のために4社に依頼したもの。うち3社が1㎡あたり月428円と横並びの評価となっていた。それが軸になって年間賃料が25億円と設定された経緯がある。これについて、大阪市議会で「安すぎる」と疑問視する声があがっており、野党会派からの追及が続く現状だ。

維新は日本初のカジノが設置されることで「大阪に大きな利益をもたらす」とセールスしているが、12月6日に開かれた市議会都市経済委員会で共産党の井上浩市議が「カジノは考慮外と鑑定しているのはなぜか?」と問うと、市側は「鑑定条件として、いわゆるカジノ計画を考慮外としたのは、これまで国内における実績がないIR事業の特殊性で、鑑定業者から評価の前提とすることが適切ではないとの意見があった」とカジノではなく、大規模商業用地を前提に評価したと説明。その上で、「土地を所管する大阪港湾局が不動産鑑定業者4社に鑑定を依頼し、その鑑定賃料については不動産鑑定士、弁護士、会計士など、第三者の専門家で構成される大阪市不動産評価審議会における審議を経て適正に設定した」正当性を主張した。

さらに問題の鑑定価格の算定について井上氏が聞くと、市側は「鑑定にあたりまして価格の指示等はしておりません」と鑑定への「介入」を否定した。しかし、大阪市の答弁は腰が引けたもので、なんとかかわそうとする意図が歴然だった。

国政政党である日本維新の会は、今年夏の参議院選挙に勝利。来年の党一地方選に向けて支持率を伸ばそうと目論んだが、数か月前の勢いはない。大阪では強さを発揮する維新だが、今年行われた兵庫県西宮市と尼崎市の市長選で惨敗。前出の自民党府議は、こう話している。
「維新人気にかげりが見えているのは間違いない。維新が大阪府と大阪市をおさえてきたが、市民・府民からは『何がよくなったのか分からない』という言葉をよく聞くようになった。IRが大きな争点になった横浜市長選を手本に、自民党を軸に共産党までが“反維新”でまとまれば、いい勝負に持ち込めるはずだ」

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