自民党の東國幹衆議院議員が地元・旭川の若手市議のツイッター投稿などを名誉毀損として起こした損害賠償請求訴訟の第1回口頭弁論が12月20日午前、旭川地裁(剱持亮裁判長)で開かれた。法廷では被告の旭川市議が「訴えは言論の自由・表現の自由を大きく妨げるもので、断乎抗議する」と意見陳述、請求棄却を求めて争う姿勢を示した。
◇ ◇ ◇
東衆議に訴えを起こされたのは、旭川市議の野村パターソン和孝氏(38)。本サイト既報の通り、野村氏は本年8月以降、ツイッター投稿などで東氏と旧統一教会との関係に言及、両者の接点を示す写真などを公開して同氏を批判し続けた。これを事実無根とする東氏は9月中旬、代理人を通じて投稿の削除と謝罪を求めたが、野村氏がいずれにも応じなかったため、1200万円の賠償などを求める訴えを同30日付で旭川地裁に起こすこととなった。
東氏がとくに問題視する投稿の1つが、8月31日付で野村氏がツイッターに書き込んだ話題。前回衆院選期間中に撮影されたとする東氏の事務所のカレンダーを示し、旧統一教会関係者が同氏の選挙を手伝っていたと指摘するものだ(⇒こちら)。
東氏側はこのカレンダーが捏造であると主張し、当該投稿の削除や地元月刊誌への謝罪記事掲載、さらにその謝罪記事を「固定ツイート」として1年間掲載し続けること――、などを野村氏に求めている。
提訴後の12月5日付で野村氏が提出した答弁書に対し、東氏側は同20日付の準備書面で反論を寄せ、改めて問題のカレンダーを「偽造されたもの」と強調した。東氏は、誤った情報を発信した野村氏のツイッター投稿により「政治家としての社会的評価が著しく低下した」といい、一連の投稿について「名誉毀損に該当することはあきらか」と主張する。
その東氏は20日の初弁論に姿を見せず、被告の野村氏は原告不在の法廷で意見陳述に立つことになった。陳述で野村氏は、地元議員と旧統一教会との癒着を「あってはならないこと」と訴えた上で、とくに同教団との接点が多い一人が原告の東氏であると指摘した。
「これに対して『誹謗中傷』または『証拠の捏造である』というふうに原告は訴えているわけですが、これらの訴えは言論の自由や表現の自由を大きく妨げるものであるとして断乎抗議します。東氏は現役の国会議員、私は現役の市議会議員であり、我われは常に批判にさらされ、お互いへの批判についても当然容認されるべきであると考えます」
弁論後に設けた記者会見で、野村氏は改めて東氏の「捏造」「偽造」指摘に反論、「むしろこの裁判で投稿の事実を裏づけることができる」と自信を見せた。4人の弁護団によれば、現職衆議が旧統一教会問題にからんで地方議員を訴えたケースは極めて珍しい。今回の提訴について野村氏は「訴訟を起こして相手を黙らせようとする行為は、まさに統一教会のやり方そのもの」と指摘、「彼は会員ではないかもしれないが、やっていることは教団とリンクしている」と批判した。
裁判は年明け以降、非公開の弁論準備手続きが進められることになり、次回の弁論期日は未定。野村パターソン氏は引き続き訴えの棄却を求めて争う姿勢だ。
(小笠原淳)
【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 |