自民党衆院議員が名誉棄損で若手地元議員を提訴|旧統一教会支援など「事実無根」主張

複数のツイッター投稿で名誉毀損の被害に遭ったとして、自民党の衆議院議員が北海道・旭川市議会議員に損害賠償を求める訴えを起こしていたことがわかった。提訴された旭川市議は、原告の衆議が旧統一教会の支援を受けていたとする投稿や、過去の不適切な懇親会への同衆議の関与を仄めかす投稿を発信しており、原告側は「投稿は事実無根」として削除や謝罪を求めている。投稿者の旭川市議は、請求棄却を求めて全面的に争う考え。

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9月30日付で旭川地方裁判所に訴えを起こしたのは、自民党で北海道6区選出の東国幹衆院議員(54)。訴状などによると、東氏の地元・旭川市で市議会議員を務める野村パターソン和孝氏(37)=民主・市民連合=が本年8月以降、ツイッターやユーチューブへの投稿で東氏と旧統一教会との関わりや過去の不祥事に言及、「悪の権化」「アウト」などの言い回しで同氏を批判した。これを事実無根とする東氏は9月中旬、代理人を通じて投稿の削除と謝罪を野村市議に求めたが、野村氏はいずれにも応じなかった。

原告の東氏によると、同氏がとくに問題視する投稿は2件。一つは8月31日付で野村氏がツイッターに書き込んだもので、前回衆院選期間中に撮影されたとする東氏の事務所のカレンダーを示し、平和連合(旧統一教会)関係者が東氏の選挙を手伝っていたと指摘している(⇒こちら)。

このカレンダーを「捏造されたもの」とする東氏は「関係者に出所を問い質したが、誰も作っていないことがわかった」と説明、「捏造したのが野村先生なのかほかの誰かなのかはわからないが、カレンダーには実在する複数の個人の名前が記されており、事実と異なる情報は削除してもらう必要がある」と訴える。

もう一つは9月7日付の投稿で、東氏を批判する文脈で「青年会議所女体盛り事件」などを引き合いに出したもの(⇒こちら)。語られる「女体盛り」とは1998年に週刊誌報道であきらかになった日本青年会議所の不祥事で、当時のJC幹部らが旭川市内で設けた懇親会で未成年女性を全裸にして刺身などを盛りつける行為に及び、関係者が売春防止法違反などに問われるに到った。これに触れた野村氏の投稿に、東氏は「私は当時たしかに旭川JCの会員だったが、懇親会を設けたのは日本JCIの部会で、企画には携わっていない」と説明、「そもそも懇親会そのものに参加していないので、あたかもその場にいたかのように言及されるのは不本意」と話す。訴訟では、これらを含む複数の投稿の削除と地元誌などへの謝罪広告掲出を野村氏に求め、併せて1,200万円の損害賠償を請求している。

一方、訴えられた野村氏は一連の投稿を「言論の自由の範囲内」と主張し、請求棄却を求める考え。先の「女体盛り事件」については「投稿では『東氏が参加した』とはひとことも言っていない」とした上で「当時旭川JCに参加していた東氏が懇親会の企画を知らなかったとは思えず、たとえ現場にいなかったとしても関係者として大きな責任があるのはあきらか」と指摘する。8月末に投稿した旧統一教会関与疑いについても、公開したカレンダーの写真は「捏造ではない」と自信を見せ、次のように話す。

「東議員は、旧統一教会の関与が指摘される『旭川家庭教育を支援する会』(本年9月解散)の会長を務めるなど、もともと同教会との深い繋がりが疑われる立場。選挙で協力し合う関係にあったとしても決して不自然ではなく、カレンダーの写真がまさにその事実を裏づけている」

昨年の補選で旭川市議に初当選した野村パターソン氏は、安倍晋三元首相殺害事件後の本年8月以降、自身のツイッターなどで旧統一教会問題を積極的に採り上げ続けている。関係者の実名を挙げて教会との癒着を指摘する投稿は小さからぬ反響を呼び、投稿に寄せられるコメントは同氏の活動に好意的な声が多い。

東国幹氏に関する情報発信をめぐっては、先述のように本年9月の時点で東氏側から投稿の削除と謝罪を求められていたが、野村氏はいずれに対しても拒否を表明。自身のユーチューブチャンネルでは複数回にわたって東氏からの申し入れを採り上げ、動画収録中に抗議書を破り捨てる挑発的なパフォーマンスを披露した(⇒こちら)。今回の提訴を10月21日に裁判所からの呼出状で知った野村氏は「裁判という公の場に議論が持ち込まれるのは歓迎すべきこと」と、徹底抗戦の構えを見せている。

与党の現職国会議員が選挙区内の若手地方議員を訴えた異例の裁判、第1回口頭弁論は11月15日午前、旭川地裁で開かれる。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。
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