「もう世耕さんには絶対勝てない。『和歌山のため』などと選挙で訴える前に、自分のための人生を考えるべきだ」と呆れ表情で話すのは、自民党のある和歌山県議。そう突き放されたのは、10月末の衆議院選挙で和歌山2区から父、二階俊博元幹事長の後継として出馬し、世耕弘成氏にぼろ負けした二階伸康氏のことだ。伸康氏は比例復活もならなかった。悪いことは重なるもの。今週発売の週刊ポストに、伸康氏が銀座の飲食店のママと不倫し、妻と離婚調停中という記事が出た。
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同誌の記事によれば、伸康氏は選挙直前の8月に飲食店のママと不倫旅行。石破茂首相が和歌山2区の海南駅前で演説をしていた10月20日に、件の飲食店ママを呼び寄せていたというから、世襲議員のボンボンぶりを露呈させた格好だ。
筆者は選挙期間中、伸康氏の街頭演説を何度も聞いていたが、「私はバッジをつけたいのではない。和歌山の地元の未来のため、その仕事をやらせていただきたい。ここにいる子供たちのために私に力を下さい。1票を託してください」と熱弁を振るう姿が印象的だった。
選挙戦初日、伸康氏の故郷である御坊市での出陣式では「子供たちの未来のために!!」と手書きされた大きな垂れ幕の横でマイクを握っていたのだが、不倫の末の離婚調停中だったというのだから呆れるしかない。自分の子供はほったらかしという状態だったとみられるので、非難の声が上がるのは当然だろう。「世耕さんに圧勝を許し、崖っぷちの二階氏にとっては、この不倫騒動はダメ押し。自業自得だ」と前出の県議ははいう。
衆議院選挙後び首班指名で「私は石破茂首相に投じます」と語っていた世耕氏は自民党会派に入った。裏金事件で離党勧告を受け、自民党を追われた形となっていた世耕氏の先行きに光が見えてきたということだ。やはり無所属で戦って勝った党員資格停止1年の処分を受けている西村康稔衆議院議員もすんなり復党するとみられている。
「選挙で勝ち上がった西村さんは来年4月に処分の1年が経過するので復党する。そこから少し日をあけて、世耕さんも復党する見込みだ。和歌山2区の小選挙区で勝っているので、当然、世耕さんは2区の支部長になるだろう。なんせ自民党は少数与党。裏金議員であっても復党させて数を増やすしかない」(自民党の幹部)
来年7月には参議院選挙が控えている。世耕氏が参議院から衆議院にくら替えしたので、現在の和歌山選挙区は空白だ。その候補者に「伸康氏を」と推す声はあったという。「しかし」と前出の自民党幹部はこう話す。
「伸康氏自身は、そういう状況もある中で『衆議院一本だ』『参議院なんかに出ると、世耕に負けたことになる』と強気で周囲に語ってきた。だが、この不倫スキャンダルは地元でかなり効いてくる。やっぱり世襲のボンボンはダメだという空気感が広まり、自民党にとっても大きなマイナスだ。これじゃとてもじゃないが、世耕さんには勝てない。それでも、伸康氏が次の衆議院選挙で2区からの出馬を望むなら、今回とは逆に無所属で出るか、あるいは他の党に移籍するかのどちらかしかない。いずれにしても自民党を離れるしかない」
衆議院選挙直後の11月26日、和歌山県警は県発注の道路工事の一般競争入札で、入札情報を事前に教えるよう依頼したとして県議の冨安民夫容疑者や県職員、建設業者を地方公務員法違反(そそのかし)の容疑で逮捕した。冨安容疑者は、二階元幹事長と近いことが知られており、前出の県議が次のように解説する。
「二階(俊博)先生は公共事業に強いことで知られている。冨安容疑者は、二階先生や二階家そのものと昵懇の仲だと聞く。二階先生の影響力を背景に、入札の情報をとろうとしていたという情報もある。今回の逮捕容疑以外にもこれまで噂になった案件もあり、贈収賄に発展するのではないかという見方が地元で囁かれ始めている。というのも、冨安容疑者は地元では『ヤギさん』と呼ばれ、紙、つまりカネがないと動かないと業者の間では言われていた人物。衆議院選挙直後の立件ということは、伸康氏の落選で二階家の重しがなくなったことを意味している」
次のステップに向けて大切な時に、不倫スキャンダルが表面化した二階伸康氏――。二階家終えんのカウントダウンがはじまったようだ。