東と西で疑惑続々|増大する政治不信

「参議院選挙も東京都議選もある。予算編成も控えている。ここでまた世間を騒がすようなことがあれば……」――自民党の大臣経験者がそう言って表情を曇らせた。年を超えても自民党の裏金疑惑が収束する気配はない。さらに、東京の自民党組織に捜査のメスが入ることが確実な情勢だし、近畿圏でもキナ臭い噂が広がりを見せている。同様に越年となったのが兵庫県知事の選挙違反問題。次々に浮上する政治がらみの疑惑に、国民の不信が増大しそうだ。

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昨年1月、自民党安倍派や二階派などの裏金事件が弾け、東京地検特捜部がそれぞれの派閥事務所を急襲。裏金約4,800万円の池田佳隆被告と秘書が政治資金規正法違反の虚偽記載で逮捕、起訴された。裏金最高額となった約5,100万円を“蓄財”していた大野泰正被告は在宅起訴されたが、現在も参議院議員のバッジをつけたままで、公判も始まっていない。

安倍派・二階派の会計責任者も起訴され有罪判決が確定。10月の衆議院選挙では、多くの裏金議員が落選している。

だが、先の大臣経験者を悩ませているのは「裏金事件の余波」。事件を巡る様々なスキャンダルが隠れており、新たな騒動になる可能性があるというのだ。その一つが、これまで報じてきた自民党東京都連や都議会自民党の裏金問題だった(既報)。

神戸学院大学の上脇博之教授は昨年、自民党東京都連と都議会会派「都議会自民党」が開いた政治資金パーティー券の収入の一部が政治資金収支報告書に不記載となっているとして東京地検特捜部に刑事告発。都連は報道などを受けてか不記載額832万円分を訂正した。

都連の裏金について上脇教授は、当時の会長だった萩生田光一衆議院議員や会計責任者を被告発人とし、「会計責任者が自分勝手に政治資金収支報告書への虚偽記載、不記載はできないはず。萩生田氏と共謀、了解、指示があり、隠ぺいした可能性がある」と指摘していた。

検察が“起訴判断”する際のボーダーラインは不記載額3,000万円前後とされるが、東京地検特捜部から事情聴取を受けた都連関係者は「特捜部から徹底的に調べられた。あれほどきつく細かく聞かれるというのは、都議選に影響しないように早々に着手があるんじゃないか」と周囲に話していたという。

先に立件されそうなのは都議会自民党。東京地検特捜部は近く、同会派の会計責任者を3,000万円の不記載があったとして略式起訴する見込みだ。

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スキャンダルの火種は、東京だけではなく関西にもあるという。近畿地方の自民党地方組織幹部が「カネがあると豪快にやるんだなと感じました。そのウワサで持ち切りだ」と打ち明ける。

ターゲットになっているのは、昨年10月の衆議院選挙で落選し、比例復活もならなかったX氏だ。噂されているのは、選挙の投票依頼と票のとりまとめでカネをばらまいたという買収疑惑。近畿地方の自民党幹部がこう話す。

「Xは裏金議員の後継で出馬した世襲。強力な候補者との争いになり情勢調査でも負けており、はじめから不利な情勢だった。自身にも個人的なスキャンダルがあって勝てそうもないと気付き、あわててカネをばらまいた。接待に動いたと地元では言われていました。票の取りまとめ役となった人物から供応を受けたり、カネを配られたという被買収側にはすでに捜査関係者から接触があったと聞いています。おそらくスマートフォンの履歴も調べられているはずです。X本人がどこまで関与していたのかは知らないが、立件されれば連座制に引っかかってくることはあり得ます」

すでに、X氏の地元には複数のメディアが取材に入り、事件関係者に接触しているという情報さえある。

「2019年の河井克行・案里夫妻の公職選挙法違反でスクープを放った大物ジャーナリストが潜行して取材をしているという情報が昨年12月から出回っている。X側も対抗策に追われ、圧力をかけているとも言われている。そのジャーナリスト以外にも取材に行っているメディアがいくつかあるとみられ、当事者の自宅インターホンを何度も鳴らす人がいるらしい。火のない所に煙は立たない。このスキャンダルが報じられると、Xが次の総選挙に出ることはなくなるかもしれない。それどころか政治生命の危機。報道をもとに刑事告発も想定される。なんせ父親が超がつく大物だったから噂になるだけでも大騒動。自民党の看板にも傷がつくので早々に対応すべきなんだが、どうにも動けない。別の元職にも疑惑があると聞いているし、本当に頭が痛い」(前出の自民党大臣経験者)

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そしてもう1人、近畿地方で注目されているのは兵庫県の斎藤元彦知事だ。昨年の内部告発以降、不要な補助金の増額により県に損害を与えたとして背任罪で、10月の出直し知事選では選挙期間中のネット戦略=SNS展開を兵庫県西宮市のmerchu社に報酬を支払って依頼したとして公職選挙法違反で、それぞれ刑事告発が出されている。

知事は1月15日の記者会見で「法に触れることはない」とこれまでと同じ回答を繰り返したが、merchu社の折田楓社長は「SNS展開の監修者」として主体的に斎藤知事のSNS展開を「仕事として」受けたと自身のブログに書いている。ある兵庫県幹部は「捜査は着々と進んでいる。阪神大震災30年が1月17日なのでその以降に着手ではないかという話もある。事実、斎藤知事もmerchu社にカネを払ったことは認めている。斎藤知事の選挙に絡んだ人の携帯電話とパソコンのデータを見れば、法に反しているのかすぐにわかるはず。また、新たに女性の神戸市議が、選挙前に『SNSの監修はPR会社merchu社にお願いする』という内容のメッセージを受信していたことも明らかになった。外堀は埋まりつつあり、県庁内でもは『いつ捜査が入るのか』と職員がビクビクしている。強制捜査はそう遠くないようだ」と話している。

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