新型コロナ絡みのインサイダー取引事件で見え隠れする“あの人たち”

今月4日、警視庁はジャスダック上場企業「テラ」(東京都新宿区)の株式をインサイダー取引したとして、「ブルーオーシャンアソシエイト」の代表取締役・山崎平馬、「ラキシス」の代表取締役・山本寅、「内田建設」の代表取締役・久保田俊明の3人を金融商品取引法違反の疑いで逮捕した。

テラといえば、頓挫した新型コロナウイルスの治療薬開発話で世間を騒がせた会社。背後で動いていた“あの人たち”に、再び注目が集まる事態となっている。

■疑惑の企業「テラ」の株価操作

新型コロナウイルスのワクチン開発に関する未公表情報を利用してインサイダー取引を行ったとされる山崎容疑者と山本容疑者は、テラの役員から2020年4月27日に公表される予定だったIR情報を事前に入手。山崎容疑者は、直後に当時150円前後だったテラ株約15万株を約2,200万円で買い付けて高値で売り抜け、約3,000万円の利益。山本容疑者は、約6,500株を約90万円で買い、最終的に1,000万円以上の儲けを得ていた。

久保田容疑者は、2020年5月28日のIR情報を事前に入手し、そのころ900円程度だった株を直後に約2万株、約1,700万円で購入。同年7月、1,500円前後で推移する時期に売却して約1,000万円の利益を得ていたとされる。

3人に共通するのは、IR情報を入手するとすぐに買い付け、暴騰すると売り抜けている点である。

テラは、本サイトで度々報じてきたとおり、疑惑の多い会社だ(参照記事⇒《コロナ新薬がらみで自殺?|裏でちらつく「大樹総研」の影》)。かつての社長は、旧民主党の平智之元衆院議員(現在は辞任)。鳩山由紀夫元首相が同社を講演会やツイッターで絶賛するなど広告塔の役割を果たし、2020年4月29日にはテラの開発を推奨するツイートを発信していた(下の画像)。同年4月28日に217円で出来高も低迷していたテラの株はその時点で急騰し、5月1日には終値で377円、11日には約3倍の637円へと暴騰していた。

しかし、テラ社のワクチン開発はいっこうに進まず、2021年6月には証券取引等監視委員会から有価証券報告書等の不記載の検査結果に基づく課徴金納付命令の勧告が出され、2億円あまりの課徴金を命じられている。

■注目集める「大樹総研」矢島氏とT氏

テラと密接に関係しているのが“政界フィクサー”として知られる「大樹総研」のトップ、矢島義也氏。2016年5月29日に東京都内のホテルで開かれた矢島氏の結婚式には、当時の菅義偉官房長官、二階俊博総務会長、野田義彦元首相ら政財界の錚々たる顔ぶれに交じって、テラの社長(当時)も出席していた。

テラの株価高騰は、医療支援コンサル「CENEGENICS JAPAN(セネジェニックスジャパン)株式会社」(以下、セネ社)とともにワクチン開発を実施するというニュースが発表されたことが一番の要因だ。セネ社を実質的に支配していたのは裏社会でも名の知れたT氏。T氏は、埼玉県内にある自治体の職員から政治の世界に転身し、落選経験を経て、令和2年にセネ社立ち上げの中心となっていた人物である。

SNSには、矢島氏とT氏がマフィアのボスのような表情で写っており、親密な関係がうかがえる写真が投稿されている。

また、2017年10月に行われた総選挙の際には、大樹総研と密接なつながりを持つ「JC証券」を通じて、細野豪志衆院議員に5,000万円が提供されるという事件も起きた。「JC証券」の親会社が「JCサービス」で、T氏が大株主だったことが確認されている。

ある捜査関係者が、こう解説する。
「今回のインサイダー情報を3人に提供したのが、Tではないかとみて捜査している。Tは『買うなと3人に告げた』、と情報提供を否定しているようだが、同氏にはテラの株を不当につり上げた株価操縦の疑いもある。テラの株で儲けたのはTも同様で、30億円前後の利益をあげたという話もある。儲けの半分を、矢島の大樹総研が進めていた太陽光発電システムへの投資に使ったという情報があり、確認中だ」

香川県丸亀市の山間部に位置する「まんのう・丸亀太陽光発電所」。この発電所の土地所得や経産省へのFIT(固定買取価格制度)の認定、開発申請などを行ったのがJCサービスだったという背景もある。細野氏への資金提供が報じられた際には、大樹総研やJCサービスを東京地検特捜部が家宅捜索している。

テラ絡みのインサイダー取引事件を受けて、自民党幹部が声を潜める。
「テラを舞台にしたインサイダー取引に関する捜査。そこに通じているのが矢島社長であることは、知られた話だ。これまで、菅や二階といった超大物が見え隠れしていたこともあり、検察当局も二の足を踏んでいたのだろうが、岸田政権で一気に流れが変わったという声も聞こえてくる。党内では、もしもの時の話として『矢島社長の結婚式席次表に名前がある、例えば山口壮環境相ら要職にある議員の処遇をどうするのか、早くも噂になっている」

銀座などでの豪遊で知られる矢島氏は、東京にまん延防止等重点措置が適用される頃まで、旧民主党の松野頼久元官房副長官を連れて飲み歩く姿が目撃されていた。大樹総研の関係者も心配顔だ。
「これまでべったりだった政治家が次々と矢島社長から距離をとりはじめている。親しかった菅さんや二階さんが要職から去ったことに加え、周辺が次々に刑事事件に巻き込まれている状況に嫌気がさしてるんじゃないか。旧民主党の議員で、今は大樹総研グループの幹部になった人物も、気が弱いのか『捜査がきたらどうごまかせばいいんだ』『私はどうすればいい』などと泣き言ばかり。まあ、いずれそういうことになるのかもしれないが……」

矢島氏とテラを結ぶラインに、検察が切り込むことになるのか――?

 

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