週刊文春の激しい追及が続く木原誠二官房副長官のスキャンダル。当初は木原氏が親しい女性と子どもを連れてテーマーパークへ行ったという話だった。それがついには、木原氏の妻の未解決殺人事件への関与疑惑にまで発展。岸田文雄政権を揺さぶる事態になっている。
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問題視されているのは、2006年に安田種雄さんが東京都内で刺殺された事件。当時、安田さんとの間に離婚話が出ていたのが現在の木原副長官の妻だった。犯人は今も捕まっておらず、未解決のままだ。
7月20日、殺人事件の被害者の父親、長女、次女が東京で記者会見。父親は「息子の無念を晴らしたい。警察にはぜひ再捜査をしてほしい。テレビ局や新聞の皆様にはぜひ、事件に関心を持ってほしい」とやりきれない心境を涙ながらに語り、捜査を担当する大塚署に上申書を出したことを明らかにした。
殺人現場の様子については、「息子は血まみれで、瞼を見開いたまま倒れていました。足元にナイフをきちんと置いたまま絶命していました」「種雄の無念を晴らしてやると息子に誓いました。しかし捜査は縮小され捜査1課の捜査班は解散させられました」と悔しさを滲ませながら語った。
衝撃の告発には、第二弾があった。当時、木原氏の妻に事情聴取をした警視庁の佐藤誠元警部補が7月28日に記者会見を開いたのだ(*下の写真)。「種雄さんが自殺した証拠はなく、これは事件だ」として“殺人事件”である可能性を示唆。会見場には、ほとんどの報道機関が集まっていたため、それまで黙殺していた木原スキャンダルを、キー局や新聞社も記事にせざるを得ない状況となっている。
ある自民党幹部は、苦々しい表情でこう語る。
「昔は、週刊誌だけの報道でテレビと新聞にさえ出なければ、世論にはさほど影響がなかった。一連の記者会見も、テレビや新聞は出していなかった。しかし、今のトレンドはスマホでありSNS。反響は大きかった。内閣支持率の低下はマイナンバー制度が主な要因だが、木原スキャンダルも無視できない下げ要因だ。女性層からの支持はがた減り、ワイドショーねたになってくれば、支持率はとんでもなく下がる」
刑法の改正で、殺人事件の時効は撤廃されている。警察は、事件が解決するまで捜査をし続けなければならないはずだが、佐藤元警部補の記者会見後、警視庁捜査1課は「事件性は認められず、死因は自殺と考えて矛盾はない」と異例のコメントを出している。
8月末から9月にかけ、内閣改造と党役員人事が行われる。入閣候補の筆頭に上がっていたのが木原氏だ。しかし、相次ぐスキャンダル報道を受けて、入閣どころか官房副長官の座も明け渡さざるを得ない状況となっている。木原氏は、「無役」になる可能性が大だ。
「週刊文春の報道は内容が衝撃的でした。派閥でも木原さんの妻がなんらかの形で関わっているのではないかという声が出ています。岸田総理も木原さんと一緒になって警察に圧力をかけているんじゃないかと見ている人もいるようです。自分から辞めてしまうと疑惑を認める形になるので、木原さんは絶対にそうはしない。昨年は、旧統一教会に絡む大臣らを一掃するため、早めに内閣改造と党役員人事に手をつけた。木原氏の疑惑が重くのしかかるので、今年もお盆明け直後には着手するという話が聞こえてきています」(岸田派の国会議員)
木原スキャンダルがそう大きな騒ぎにならなかったのは、大手メディアの対応が鈍かったからだ。しかし、佐藤元警部補の記者会見後は各社が記事にしはじめた。ただ、その内容は木原氏の主張を軸にしたもので、佐藤元警部補の会見内容を詳細に報じているのははごくわずか。木原氏は、腰砕けメディアに救われている。支持率低下を招いている最大の要因はマイナンバー制度だが、木原スキャンダルが政権の足を引っ張っているのも確か。岸田首相は今後、どのような手を打ってくるのか。
【お詫びと訂正】
・本稿の中で佐藤誠氏の警察官時代の階級を「巡査部長」としておりましたが、「警部補」の間違いでした。佐藤氏は「元警部補」です。お詫びして訂正致します。(2023年8月1日 17時50分)