五輪疑惑で注目集める竹田恒和元JOC会長

東京オリンピック・パラリンピックを巡る汚職事件で、広告大手「ADK」とぬいぐるみ製造業の「サン・アロー」から約5,400万円の賄賂を受け取ったたとして、東京地検特捜部は19日、受託収賄容疑で大会組織委員会元理事・高橋治之容疑者(78)を再逮捕。贈賄側のADKホールディングス社長、植野伸一容疑者ら3人も逮捕された。

だが、いま注目を集めているのは高橋容疑者ではなく、日本オリンピック委員会(JOC)の元会長、竹田恒和元会長の関与だ。

◇   ◇   ◇

ADKは、高橋容疑者を通じて駐車場大手「パーク24」のスポンサー参入を後押しした。約4,000万円の報酬がADKに渡ったが、半分の2,000万円は高橋容疑者側に支払われた。両者の仲介をしたのが、パーク24の社外取締役だった竹田氏ではなかったのかとされるているのだ。

「竹田氏は、連日東京地検特捜部に呼ばれて事情聴取を受けている。竹田氏のXデーまで流れたこともあった。11月はじめが高橋容疑者らの勾留期限となる。その間に、竹田氏が逮捕されるかどうかが最大の山場だ」と東京地検に詳しい関係者は話す。

高橋容疑者は、紳士服メーカー「AOKIホールディングス」や出版大手「KADOKAWA」、大手広告代理店「大広」と3つのルートで3度の逮捕済み。今回の4回目で、収賄金額は1億円を超えた。それでも、否認を続けている高橋容疑者。特捜部経験者の弁護士は、こう話す。
「高橋容疑者にすれば、『世話をした場合のお礼は業界の慣例であって何が悪いのか』というような主張をしている。理事という立場でのお礼はもらっていないということだ。だが、4回も逮捕されて、すべてで無罪を勝ち取るというのは非常に難しい。すでに贈賄側の被告らで保釈を認められている人間がいるのは、彼らが高橋容疑者の関与や賄賂性を認めたから。そこでガッチリ固められていると、どれだけ無罪主張をしても、すべて無罪にするのは至難の業。このままいけば、すべてを主導した高橋容疑者が一番悪いというストーリーになるだろう。なぜ、高橋容疑者はそこまで頑なに頑張るのか分からない」

全面否認の高橋容疑者だが、このままいくと保釈は認められず、公判前整理手続きに入ることとなる公算が大で、そうなると裁判がはじまるまで最低2年程度はかかる見込みだ。その前に贈賄側被疑者の裁判が先行し、次々と認めて執行猶予付き判決が出るはず。高橋容疑者に対する検察側の求刑は、少なくとも5、6年ほどにはなるとみられており、そんな中で無罪を勝ち取るのは、極めて困難だ。

これまで浮上した竹田氏、そして森喜朗元首相という大物も特捜部から事情を聞かれている。また、神宮外苑再開発についても、特捜部はすでにゼネコン関係者に事情聴取を開始している。

進められている計画は、神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を移転して3棟の高層ビルを建設するというもの。三井不動産は、高さ185mのビルを建設する計画で、伊藤忠商事も現在の本社ビルを高さ190mに建て替える予定だ。

「神宮の森」と呼ばれ自然豊かな場所だが、この計画では1,000本以上の樹木が伐採される。市民の反対もあり簡単にはいかないはずの計画がスムーズに進んだのは、“政治の関与があったからではないか”との疑惑が浮上しており、特捜部が捜査に乗り出している。その件では、森氏と竹田氏に加えて菅義偉元首相の名前まで浮上、秩父宮ラグビー場の駐車場運営は竹田氏が社外取締役のパーク21が請け負っているというのだから、疑いの目が向くのは当然だろう。

「高橋容疑者の1億円を超える収賄は、『森さんと竹田さんの威光があったからこそ可能だった』ともいわれている。賄賂の中から森氏や竹田氏に渡ったカネがあったのかどうか――。さらには、特捜部が神宮外苑再開発に着手するのかどうか――。高橋容疑者が否認を続けている背景には、よほどの何かがあるはずですが・・・」(特捜部経験者の弁護士)

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