道新不祥事、現場は8月下旬に把握| 記録閲覧から1カ月以上公表せず

 北海道新聞による過去の不祥事の隠蔽が疑われる問題で、情報漏洩を起こした同帯広支社の関係者が遅くとも8月下旬までに漏洩の事実を確認していたことがわかった。同社は本サイト報道当日の10月7日夕に初めて同不祥事を公表、翌8日付の朝刊に報告記事を掲載したが、それまで1カ月以上にわたって読者に事実を伏せ続けていたことになる。

 ◇   ◇   ◇

 問題の不祥事が起きたのは、2020年11月。北海道内で食品スーパーなどを展開する地元企業の役員人事をめぐり、同社前社長へ取材した道新記者のメモが別の記者によって新社長の手に渡り、前社長の発言が対立する役員側へ筒抜けとなった。道新はこの事実を公表していなかったが、先の前社長が退職金の支払いを求めて会社を訴えた裁判で問題の取材メモが証拠提出され、公知の事実となっていた。

 本年10月になってこの裁判の記録を閲覧した筆者が月刊誌「北方ジャーナル」の取材で道新に事実確認を求めたところ、同社広報は期限までの回答が困難であると対応。しかし本サイトで10月7日にその顛末を報じたところ、道新は同日夕に地元経済記者クラブにプレスリリースを寄せ、取材対応に先んじて自らメモ漏洩の事実を公表した。リリースでは先述した漏洩のいきさつが明かされるとともに、不祥事発生から丸2年が過ぎて発表に到った理由が次のように説明されている。

《当社は、元役員と流通会社との協議への影響を考慮して事案の発表を控えてきましたが、メモが公開の法廷で取り上げられたことから発表することとしました》

 問題のメモは、たしかに本年9月26日の口頭弁論で俎上に載った。だが先述のように、その裁判ではもともと同メモが証拠提出されており、現地の裁判所に赴けば誰でも現物の写しを閲覧できる状態にあったのだ。筆者が10月27日に釧路地裁帯広支部で同記録の閲覧履歴を確認したところ、道新帯広支社の報道部長がこれまでに2度、同じ記録を閲覧していたことがわかった。以下に挙げる。

・ 8月22日 「乙号証」閲覧 所要時間30分間
・10月11日 「記録すべて」閲覧 所要時間1時間

 8月の閲覧対象である「乙号証」には、くだんのメモが含まれる。帯広の報道部長は遅くともその日には、2年前に流出したメモの存在を確認できていたわけだ。ところが道新はこの事実をただちに公表せず、また9月の口頭弁論後もなお公表を見送った。先のリリースの内容を自社の紙面でようやく記事にしたのは、10月8日のことだ。一連の経緯を改めて時系列でまとめると、次のようになる。

・8月22日 道新帯広支社の報道部長が裁判記録閲覧、メモ確認。
・9月26日 裁判の口頭弁論で双方証人がメモに言及。道新関係者が傍聴。
・10月6日 北方ジャーナルが取材打診
・10月7日 本サイトが漏洩問題を報道。道新がプレス発表。
・10月8日 道新が自社の紙面で事実報告。

 この件で確認取材を打診していた筆者に対し、道新広報から回答があったのは10月7日夕。同社は「ニュースリリースの通りです」との回答とともに先のリリースをファクス送信してきたが、着信時刻は地元記者クラブ発表の2時間後だった。

 7日の発表で「厳正な社内処分を行い」「再発防止に努めます」としていた道新は、10月31日付で当事者を含む3人の社内処分を決定した(以下)。

・漏洩した記者……停職4日
・当時の帯広報道部長……停職4日
・現編集局長……減給1/2日額

 なお、今回の不祥事を起こした帯広支社の女性記者(41)は2013年7月にも取材メモを外部に流出させた“前科”があり、この時は3日間の停職処分を受けている。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。
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