隣町の独裁者に媚びを売るうち、平気で嘘やでっち上げを真似るになったということか――。不透明なごみ処理施設整備事業に関する情報公開を巡って福岡県田川市の村上卓哉市長が強要・脅迫を受けた問題で、市の担当部長が、市長に脅しをかけた永原譲二大任町長を庇ったあげく、その件に絡む部下や自身の「出張」における不正行為をごまかすため、ハンターの取材に対し「嘘」をついていたことが明らかとなった。事の隠蔽を図るため、公文書の偽造を行おうとした疑いもある。
■前代未聞、町長が市長を脅迫
先月23日、田川郡内にある8市町村で構成する「田川郡東部環境衛生施設組合」(組合長:永原譲二大任町長)が整備を進める“ごみ処理施設”に関連する文書の情報公開を巡って、永原譲二大任町長が村上卓哉田川市長に圧力をかけた。
永原氏は、佐藤俊一田川市議が請求した大任町の発出文書を「出すのなら、田川市長名に作り替えたものを出せ」と約1時間にわたって強要。首を縦に振らない市長に対し「(田川郡東部環境衛生施設組合の)議会から出ていけばいい。いやなら自分たちで(ごみ処理施設を)建てりゃいい」、「あんた方には協力せん」、「こんなことしとったら、あんた、4年間もたんよ」などと脅していた。
■出張命令「出てます」と断言したが・・・
ハンターは今月12日、永原町長が村上市長に圧力をかけた際に立ち会った市民生活部の勢島伴睦部長に取材し、永原町長に情報公開請求の内容や請求者の氏名を漏らした市民生活部環境政策課の池口芳幸課長に、大任町への出張命令を発出したかどうかについて確認を求めていた。勢島部長との一問一答から、該当部分を抜粋する。
――だからそれ(情報公開請求の内容)は池口さんが伝えないと、辻褄が合わない。では聞くが、池口さんに出張命令書は出ているのか?大任町に池口さんが行くときに。
勢島:それは、出てます。出張に行くのは報告は受けています。――すると、池口さんが情報公開の相談に行ったことを、あなたは知っていたということでいいか?
勢島:情報公開の相談に行ったんじゃないと、私は聞いています。――何をしに行ったのか?
勢島:出された文書の発信元に対して、あの、確認をしに行ったんだと思いますけど。出された文書に関する……。要するに大任町さんから出された……。
出張命令書は「出てます」と断言した勢島部長。ハンターは確認するため、田川市に対し「本年6月1日から7月10日までの市民生活部長と環境政策課長の出張命令書及び復命書」を開示請求していた。それに対する市の回答が、下の「情報非開示決定通知書」である。
「出張命令書も復命書も作成していない」――。田川市が、まともな自治体ではないことを宣言したに等しい回答だ。
行政の仕事が税金を原資に成り立っているものである以上、その行為が正当に執行されたことを証明するためには「裏付け」が必要となる。例えば、伺い・決裁をはじめとする政策決定過程を示す文書、建設工事の契約書や積算書、プロポーザルや総合評価の関連文書、そして公務出張の度に残されるのが決裁権者が発する「出張(旅行)命令書」と、出張者が提出を義務付けられた「復命書」である。この二つが揃わない限り、旅費の精算は終わらない。
命令書も復命書もないというのであれば、その役人の行動は私的なもの。勤務すべき場所にいなければ、単なる職場放棄であり服務規程違反に他ならない。
非開示決定書には「命令及び復命は口頭で行っていた」と記されているが、緊急性があり口頭での出張命令を余儀なくされた場合でも、数日内に命令書と復命書を揃えるのが一般的。池口氏が大任町に出向いてから1カ月以上経っているのに、どちらもないということなどあり得ない。いずれにせよ、勢島部長の「出張命令書は出ている」という発言が、極めて悪質な「嘘」だったことは明白である。
■「公文書偽造」を画策
匿名を条件に寄せられた関係者からの情報によれば、ハンターの開示請求を知った勢島部長は、日付を遡って出張命令書を作成することを画策。担当部門が「公文書偽造」だとして反対したため、「口頭での出張命令」という子供だましの逃げ道を考えたのだという。
市議の開示請求を知った田川市の課長が、命令も受けずに大任町役場に出向き、守秘義務違反まで犯して独裁町長にご注進。さらには、このルール違反を糊塗するため、上司の部長が公文書偽造を目論んだというのだから開いた口が塞がらない。地方公務員法に抵触する可能性がある事案である以上、市として刑事告発も視野に厳しい処分を下すべきだろう。