鹿児島県医師会わいせつ事件の真相|組織内で認識されていた「強制性交」の可能性

鹿児島県医師会(池田琢哉会長)の男性職員(10月末で退職。以下、「男性職員」)が、新型コロナウイルス感染者の療養施設で強制性交の疑いが持たれる行為を行っていた問題で、医師会と県弁護士会の会長まで努めた弁護士が公表したのは、女性の人権を無視した「合意に基づく性行為」という調査結果。ハンターの取材で、次々とその結論が否定される証拠が見つかる中、今度は、一時医師会内部でも「強制性交」を認めざるを得ない状況となっていたことが分かる文書の存在が明らかとなった。

■またしても男性職員に不利な材料

ハンターが新たに入手したのは、男性職員の代理人弁護士が、県医師会の顧問を務める新倉哲朗弁護士(和田久法律事務所)に提出した「申入書」のコピー。下がその文書の一部である。ハンター編集部が赤塗りしたのが被害を訴えている女性の情報、黒塗りは男性職員側の情報だ(*青いアンダーラインもハンター編集部)。

A4判の用紙2枚にまとめられた申入書は、男性職員の陳述書を提出するに至った理由と、秘密厳守を強く求める内容。注目したのは青いアンダーラインで示した文言だ。「△△氏の陳述書が相当詳細であり、(略)△△氏の供述も詳細であることから、○○氏の陳述書について信憑性があるとみない、強制性交の事実が認定される可能性がある、と伺った」とある。(*=被害を訴えている女性)

申入書が提出されたのは今年の5月26日。調査委員会は3月3日に第一回会議を開き、7月7日に最後の第6回を開いており、申入書は第2回(5月13日)と第3回(6月2日)の間に提出された形となっている。6月2日の第3回会議の議題に男性職員の陳述書が挙げられていることから、この申入書は、6月初めには調査委のメンバーに回覧されていたとみられる。

つまり、少なくとも今年の5月末頃までは、新倉弁護士を含む調査委内部に「強制性交を認定せざるを得ない」という認識があったということになる。しかし、医師会が9月27日に鹿児島県に提出した本件についての「調査報告書」には、強制性交が疑われていたことや、「合意に基づく性行為」という男性職員側の主張を退けかねないハラスメントの事実は一切記載されていなかった。

男性職員にとって不利な材料は、同日開かれた医師会の記者会見でも言及されておらず、医師会の顧問を務める新倉哲朗弁護士が強調したのは池田琢哉会長が吹聴していた「合意に基づく性行為」だった。調査報告書作成の過程で、「不都合な真実」が隠蔽されたことは確かだ。

■県医師会が「合意」にこだわった理由は・・・

では何故、県医師会上層部が事件の真相を歪め、性被害を訴えている女性の人権を踏みにじってまで「合意に基づく性行為」にこだわったのか――?

わいせつ事件の検証が始まる前から「合意論」を振りかざしていた池田医師会長の立場を守るという目的があったことは想像に難くないが、池田氏とその周辺は、ある時期から“事件”を別の目的に利用した可能性が高い。ハンターは、そのための「合意論」であることを証明する「証拠」を複数の医師から入手しており、次稿で詳しく報じる予定だ。

鹿児島県医師会は明日3日、鹿児島市内のホテルで代議員と役員の合同会議を開き、「新型コロナウイルス感染症の宿泊療養施設内における不祥事について」と題して「報告」を行うのだという。90分という限られた時間の中で「報告」に割かれているのは50分。医師会幹部や顧問弁護士らが、もっともらしく「合意に基づく性行為」を強調するものとみられている。

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