東京都知事選「劇場」の主役は蓮舫氏か小池氏か

7月7日投開票の東京都知事選。現職の小池百合子知事は5月末にも出馬表明するものとみられていたが見送った。一方で、立憲民主党の蓮舫参議院議員が5月27日に電撃出馬会見。東京都知事選挙が、事実上二人の女性政治家による争いになる可能性が高まった。

◆   ◆   ◆

立憲民主党の幹部がこう話す。
「前日26日に静岡知事選で立憲民主党が推した鈴木康友氏が勝利。東京都議会目黒区選挙区の補欠選挙でも立憲民主党の候補がトップ当選した。小池知事が29日の定例会見で出馬表明すると報じられていたので、先制攻撃の意味もあって、蓮舫氏が出馬を決めた」

これで、小池知事が出馬表明となれば、女性同士の争いとして大きな話題になったのだが、「29日の出馬表明で都議会側の原稿はできていた。しかし、強敵となる蓮舫氏が出馬するとなれば大きな話題になる。それを避けるために、表明を延期して情勢を見極めている」と小池知事が特別顧問を務める地域政党、都民ファーストの都議は解説する。

要するに、一番目立つタイミングを小池知事が推しはかっているというのだ。そして、もう一つある延期の理由が、自民党との距離感だ。

自民党は政権与党でありながら、首都東京の知事選に候補者を擁立することは不可能な状況。2020年に続いて不戦敗だ。自民党の大臣経験者は、苦り切った表情で次のように説明する。
「負けないことが大前提になっている。自民党には小池知事と戦って勝てる候補がいない。4月末の補欠選挙で3連敗、そして静岡知事選でも負けて、まったく信頼を失っている。それなら小池知事の応援にまわって確実にとる方がいい。ただ小池知事はかつて、自民党と対峙すると言って出て行った人物。政権与党である自民党の中から主戦論が出てもおかしくないはずだが、岸田政権のこの支持率ではどうしようもない」

JNNの世論調査では、岸田内閣について「支持する」と答えた人は25.1%(前月から-4.7%)、「支持しない」は71.6%(前月から+3.7%)。自民党の裏金事件に端を発した政治資金規正法の改正、自民党修正案については「あまり評価しない」「まったく評価しない」が合計で約70%という結果だった。確かに、これでは都知事選どころではない。

自民党への信頼感のなさが選挙結果にも直結しているといえる。衆議院補欠選挙、東京15区では、小池知事が擁立した乙武洋匡氏を自民党は推薦しなかった。小池知事と「緊密だ」と吹聴している、裏金議員の萩生田光一都連会長が「小池知事は自民党が推薦できる候補を出す。それどころか、小池知事自身が出馬するかもしれない」と周囲の吹聴。萩生田氏は裏金事件で不記載2728万円と高額で「党の役職停止1年」という処分を受けた。しかし、自民党の都連会長は継続するという不思議な状況が続いている。

「萩生田氏は、小池知事を取り込むことで復権を狙っていた。しかし、東京15区では無視された。表むき、乙武氏を推薦しなかったのは過去の女性スキャンダルとしていたが『せっかく自民党が協力すると言っているのに、なぜ乙武氏のような人物を』と萩生田氏はカンカンだった。だが、萩生田氏の力の源泉は都連会長というポジションしかない。必死になって、小池知事に媚びてなんとか、自民党推薦に持ち込もうとしている。小池知事に萩生田氏の思惑は、見透かされていますよ。都政に国政や自分のポジションを持ち込むから、スムーズにいかない」と自民党の都議会議員。

小池知事へのチャレンジを明らかにした、蓮舫氏は勢いに乗る。「小池知事のお株を奪うサプライズの出馬表明は当たった。小池知事は過去2回の都知事選で圧勝しているので、横綱にぶつかるチャレンジャー立ち位置になった」と立憲民主党の幹部はニンマリだ。

これまで、どんな選挙でもさわやかなチャレンジャーとしてのイメージで戦ってきたのが小池知事。前出の都民ファースト都議は、「お株を蓮舫さんに奪わたことで小池知事が危機感を抱き、表明の遅れにもつながっています」と顔を曇らせる。

これまで小池知事が選挙で打ち出した、満員電車、待機児童、残業といった「ゼロ」の公約が何一つ実現していないことがすっかりバレしまい、イメージは悪くなっている。そこに、カイロ大学卒業をめぐる「学歴詐称」がついてまわる。

都議会で小池知事とがっちり手を握っている公明党の都議は、厳しい見方を示す。
「裏金事件のダメージはあまりに大きい。我々は公明党なのに、『自民党と一緒に裏金か』と支援者に言われることまであります。今の感覚では、蓮舫さんがサプライズを演出し、波に乗っているように見えます。女性対決で盛り上がる選挙になるので、投票率がアップすることは確実。無党派層の票が自民党にくることは2割もない。小池知事は、公明党からは推薦をもらうが、自民党からはもらわないという『自民外し』も考えているんじゃないでしょうか」

2016年、小池知事が初当選した時の投票率は59%、前回の2020年は55%だった。今回は60%超えも十分に考えられる。小池知事は前回の選挙で360万票という大量得票で圧勝したが、今回は「200万票台の攻防になるのではないか」と自民党、立憲民主党の幹部が口をそろえる。

都知事選が「蓮舫劇場」になるのか、あるいは「小池劇場」になるのか、目が離せなくなってきた。

 

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