長崎知事選巡り現職陣営に地検捜査の手

「嵐が吹き荒れるんじゃないか。2人寄れば、そんな話ばかりだ。これは大変なことになる」そう話すのは自民党の長崎県議X氏。長崎地検は、4月頃から長崎県の大石賢吾知事側による公職選挙法違反事件について内偵捜査をはじめた模様だ。

今年1月、自民党裏金事件で旧安倍派の谷川弥一氏が4,300万円の収入を政治資金収支報告書に記載していなかったとして、政治資金規正法違反で立件され、罰金100万円、公民権停止3年。その後、議員辞職を余儀なくされている。長崎地検が知事選に絡む捜査をはじめたとすれば、県政界にさらなる激震が走ることになる。

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2022年2月の長崎県知事選で全国最年少知事となった大石知事は、4期目を目指ざしていた中村法道氏に挑み、保守分裂の激しい選挙戦を展開した。この選挙では、谷川氏や山本啓介参議院議員(当時は県議で自民党長崎県連幹事長)らが大石知事支持にまわっていた。

その後、元長崎地検次席検事の郷原信郎弁護士と自民党の裏金事件追及などで知られる上脇博之教授が、東京の選挙コンサルティング会社に「電話料金ほか」として選挙運動の報酬402万円を支払ったことは公職選挙法違反の疑いがあるとして、大石知事やその出納責任者らを刑事告発。その関連捜査が佳境を迎えつつあるという。

ハンター得ている情報によれば、これまで事情聴取を受けた自民党の県議は5人から最大8人に及ぶという。知事選当時、自民党長崎県連の役員だった3人の県議は複数回、事情を聞かれている。また、大石陣営を支援した東京の選挙コンサルティング会社の代表O氏も事情を聞かれたとみられる。すでに家宅捜索を受けた人物もいるらしく、前出のX氏はこう話す。

「ある県議は長崎地検から連絡を受け、『今日は5、6時間かかりますからそのつもりでお願いします』と朝10時過ぎから夕方までみっちり調べを受けたそうです。6月に入って、長崎地検は数人の県議や関係者に携帯電話、スマートフォンの任意提出を求め、全員が応じたとも聞いています」

長崎県議会は6月17日から6月定例会が開催される。それまでに捜査を加速し、立件を目指そうとしている長崎地検の思いが見え隠れする。

これまで事情聴取を受けたとされるS県議らは先の告発状には名前があがっていない。告発されている当事者である大石知事は、まだ長崎地検の調べを受けていない模様だ。前出のX氏からは、衝撃的な話が飛び出した。

「郷原弁護士と上脇教授が告発している選挙報酬402万円に加えて、まったく違うカネのことまで聞かれているそうです。取り調べを受けた一人は『長崎地検は告発状以上のことを調べてあげている。こちらが知らない情報、カネの流れまで知っている。これはヤバイ』とこぼしていた。長崎地検がここまでやるということは、無傷では済まないと感じる」

検察は、郷原弁護士らが提出した告発状を「入り口」にして、その奥に広がる公職選挙法違反、もしくはそれに匹敵する「巨悪」の所業を内偵しているのではないだろうか。

とりわけ谷川氏は裏金事件以外でも「政治とカネ」の疑惑がささやかれてきた人物だ。今年1月に行った議員辞職の記者会見でも「俺は長崎3区の星と思っていたが、恥の人間で終わるのかと泣きました」、「私は力をつけたかった。長崎県が抱えた課題を処理していきたかった。それなら、大臣並みの金を集めてやろうと思いました。金を集めることが必要と思っていました」と語っている。そしてカネの使途を問われると、「裏金の使い道は政治活動費、いろんなことをやってきた」と意味深な発言をしていた。

谷川氏に近い地元の市議は「裏金の使い道について、谷川氏が『いろいろ』と言った時、県知事選のことなんだろうと感じました。まあ、あの時はいろいろな意味で谷川氏はすごかった」と回顧する。

谷川氏が所属していた旧安倍派の衆議院議員は、次のように打ち明ける。

「長崎県知事選とカネの絡みで、谷川さんや大石知事の周辺が騒がしいことは周知の事実です。谷川さんは『どんなことをしても大石知事を当選させないといけない』と、かなり力を入れていた。今になって長崎地検がそれをめくりあげてきたのかもしれない。谷川さんはすでにバッジを外しているので仕方ないが、選挙時に長崎県連幹事長だった現職の山本議員にまで波及しないことを祈るばかりだ」

大石知事は2022年6月の県議会で、「公職選挙法に則って、選挙運動をしっかり行った。(選挙コンサルティングの)O氏には費用が発生するようなことはない。402万円ですが、オートコールなどの通信費で、コンサルタント費用は含まれていない」と説明している。

郷原弁護士に聞くと、「告発状は2年前に出し、受理されている。大石知事が説明している402万円の支出が通信費だけなら、捜査はとっくに終わっているはずだ。私たちの告発状以上のこと長崎地検が捜査していてもおかしくない。長崎地検には、しっかりと厳正な捜査をお願いしたい」と話す。

長崎県は国に統合型リゾート施設(IR)の事業認定を求めていたが許可されなかった。そこにも疑惑が浮上しており、ハンターで何度も指摘している令和のフィクサー・大樹総研の矢島義也氏が動いていたという情報もある。

長崎県議会の6月定例会は7月10日で終了する。その直後、長崎地検が「本丸」の捜査に着手するのではないかともささやかれている。

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