内閣不信任案巡る各党の反応

「山場は6月18日」――与野党の間で駆け引きが続く内閣不信任案について、こうした声が上がっている。本来、野党間で検討が先行する内閣不信任案だが、先手を打ったのは石破茂首相だった。

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首相は、一部のメディアを使って「内閣不信任案提出なら解散だ」とリーク。その一報直後、党幹部がお墨付きを与えるように「内閣不信任案が提出されたら、解散総選挙だ」とさらに踏み込んだ。

少数与党の石破政権。野党がまとまって内閣不信任案を提出すれば、解散総選挙か内閣総辞職を余儀なくされる。ある自民党の大臣経験者はそう話す。

「内閣不信任案が可決されたら、この上なく恰好悪い。提出された場合は、そのタイミングで衆議院を解散して総選挙にしたほうがまだまし。自民党にも勝ち目がある」

こうしたヨミの背景にあるのは、自民党が参議院選挙と東京都議選のために実施した世論調査の数字だ。参議院選挙では自民党が49議席、公明党が12議席、連立与党で61議席。野党は立憲が27議席、国民は14議席、維新に至っては4議席という結果だった。

「米を買ったことがない」というとんでも発言で、江藤拓氏が農相を辞任。後を受けた小泉進次郎氏が備蓄米の随意契約で名をあげ、店頭に安い米が並び始めたことがあげられる。

過去、衆参ダブル選挙となったのは、大平政権時代の1980年のと中曽根政権だった1986年の2回。いずれも自民党が大勝した。逆に、内閣不信任案が可決された直近の例では宮沢政権時の1993年。日本新党、新生党、さきがけなどの新党ブームとなり、自民党が敗北。日本新党の細川護熙氏を首班とする連立政権が発足した。

「令和の米騒動と言われているが、小泉米の影響で一気に風向きが変わり、自民党に風が吹いてきた。そうした状況が、“内閣不信任案ならその前に解散”という総理の発言につながっている。石破さんは小泉さんを最前線に立たせれば、衆参ダブルでも勝てると踏んでいる。ダブル選挙となれば、候補者を擁立するだけでも大変だ。そのノウハウとパワーがあるのは、自民党と公明党くらいのもの。反対に、不信任決議案が可決となれば、宮沢政権のようなことになりかねない」(前出の大臣経験者)

一方、内閣不信任案の提出ができるのは立憲民主党のみ。国会の議席は野党が与党を上回っており、結束すれば石破首相を引きずり降ろすことができる。6月6日、立憲の野田佳彦代表は内閣不信任について聞かれ、「急に出したら驚くだろうから、他の党にも事前に話をしたい。不信任案を通したい、通すということになれば、共同提案するつもりが他党にあるのか」と述べ、日本維新の会、国民民主党と話し合う意向を示した。

6月7日、「政権交代を目指すなら、内閣不信任案を出すべきではないか」と立憲をけしかけていた国民民主党の玉木雄一郎代表は、野田発言について「メディアを通じて野田氏の発言を知った。どのような構想で、考えておられるのか。まず直接、お話を伺いたい」と述べている。だが、国民民主党は昨年の衆議院選挙で躍進を果たし、少数与党となった石破政権と連立を組む可能性も指摘されている。立憲民主党とは微妙な“距離感”のある国民民主党だけに、今後の方向性は見えてこない。

国民民主党は昨年12月、「103万円の壁」撤廃とガソリン暫定税率の廃止について自民、公明との間で合意した。玉木氏はこれを踏まえて、「合意は十分に達成されていない。(今の内閣に)もろ手を挙げて賛成できるかといえば、そんな状況ではない。ガソリンの暫定税率は『廃止』と決めたんです。現時点ではできていない。(今の内閣を)信任できるのかの判断材料にはなる」として、立憲との内閣不信任案提出に舵を切る構えを見せる。“合意事項を守らなければ不信任”という脅しでもあろう。

日本維新の会はどうなのか。今年度予算案では、賛成にまわって成立させた同党の支持率は下がる一方。党内からは「予算案に賛成したことで、国民からは『維新ってどうなの?』『野党なのか与党なのか』と不信感を持たれているところがある。立憲が不信任決議案提出ならそれに乗るべきではないか」という声さえ聞こえてくる。同党のある国会議員がこう話す。

「参議院選挙でうちは大きく議席を落としそう。おまけに万博についての批判も収まりそうにない。そもそもまったく盛り上がっていない。自民党と歩調を合わせるようでは未来がない。とりわけ、予算案に賛成して与党でも野党でもない“ゆ党”のような印象を与えていることが問題。立憲、国民と一緒になって不信任決議案賛成に回るくらいでないとダメだ」

ある立憲の幹部は、「小泉米の勢いが止まるなら、内閣不信任案提出は十分にあり得る。世論が盛り上がってくるかどうかという一点にかかっている」と語る。

風頼みともとれる心もとない野党各党の姿勢だが、主導権は誰が握るのか今後の政局に注目だ。

 

 

 

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