薩摩川内市教育委員会が、スクールバス運営事業の入札に参加した全てのバス会社の応札金額を会場でオープンにしながら、情報公開請求に対しては一部を黒塗り非開示にして、事業の実態を隠していることが分かった(既報)。
隠されてきたのは、直近の入札において受注を逃したバス会社の応札金額。この部分が非開示で落札額との比較ができないことから、入札の正当性が確認されないまま、市議会での決算承認が行われる状況が続いている。
■隠される入札の実態
薩摩川内市の教育委員会が開示した2018~2019年度の入札結果表の内容をまとめると次のようになる。表は左から事業年度、スクールバス運行路線ごとの件名、入札参加業者、応札額で、契約業者分は赤字で示した。2020年度の入札で受注できなかったバス会社の応札額は黒塗り非開示だったため、表も同様の形式で作成している。
まず、2018年度の入札結果で目を引くのは、「水引小・中学校(湯田・西方地区)」という路線の「応札額」。応札したのは2社だが、両者の数字には大きな違いがある。受注を逃した「入来観光交通」は2,000万円台で、落札した「川内観光交通」の応札額はその半分にも満たない900万円台。バスの管理費、燃料代、運転手の人件費などかかる経費の費目は同じのはずだが、これだけ安く受注した原因が、「企業努力」で片付けられるものなのか?
この入札及び落札額が適正なものだったのか否か確認しようとしたが、下の画像で分かるように市教委が予定価格や事業費積算時の業者参考見積り額などを隠しているため、判断できない。
次に、2019年度の入札結果。この表から「川内観光交通」が消えているのは、同社がスクールバスの運行中に起こした事故の実態を偽って報告していたことが発覚し、1カ月の指名停止処分を受けていたためだ。そのせいか、同年の入札では各バス会社の応札額に大きな差はついていない。これによって、川内観光交通の“企業努力”が際立ってしまったとも言える。
2020年度の入札には「川内観光交通」が復帰。いきなり、6ルートのうち5ルートの仕事を落札していた。再び極端に低い額で応札したのではないとの疑念が持たれるが、予定価格や事業費積算時の業者参考見積りの額だけでなく、落札できなかった会社の入札額まで黒塗りにしているため、入札の全体像がまるで見えない。つまり、妥当な入札だったか否かの判断が下せないということだ。実はここで、大きな問題が生じる。
■不当な隠蔽、見逃した市議会
薩摩川内市では、建設関連事業以外の入札について、「市議会の決算が終わるまでは、入札結果のうちの落札できなかった業者の応札金額は開示・公表しない」というのが原則になっているという。情報公開で非開示、あるいは一部非開示となる公文書は、当然市議会議員に対しても同じ扱いになるはずだ。市議たちは、入札結果を検証するためにどうしても必要となる部分が黒塗りにされた入札結果表などを眺めて、決算議会に臨んでいたというわけだ。
すると、薩摩川内市議会は、入札結果表の数字や予定価格、積算時の参考見積もりなどを確認しないまま、決算承認を与えていたことになる。落札額と他の応札額が比較不可能の入札結果表を何時間眺めていても、事の正否は判断できないはずだが、同市の市議会が、不透明なスクールバス事業者の入札結果に異論をとなえたという話は聞いたことがない。
不当な隠蔽を見逃しておいて、市議会に求められるチェック機能を果たしていると言えるのか――?答えが「NO」であることは、子供でも分かる話だ。
行政が公共事業の実態を隠し、議会が機能不全でそれを追認するだけとなれば、「闇」は深まる一方。不可解な業者選定が繰り返されるうち、ついには市役所内部からも「おかしい」「市幹部と一部業者が癒着している」といった批判の声が上がるようになった。2018年頃からハンターに次々と届くようになった薩摩川内市絡みの告発は、ほとんどが市内部からのものだ。そうした中、市政の歪みを象徴する“事件”が起きる。
(以下、次稿)