東京地検特捜部は7日、日本大学附属病院の建て替え工事を巡って、2億2千万円にのぼる大学の資金を流出させたとする背任の疑いで、日大の理事で関連会社「日本大学事業部」(世田谷区)の役員を兼任している井ノ口忠男容疑者(64)と、関西を基盤とする医療法人「錦秀会」の前理事長・籔本雅巳容疑者(61)を逮捕した。
9月15日の配信記事(「背任事件で揺れる日大と安倍元総理の接点」)で報じたように、藪本容疑者は安倍晋三元首相と親密な関係があるいわゆる「アベ友」。「首相動静」に度々出てくるゴルフ仲間の一人である。
また、藪本容疑者の錦秀会グループは、安倍氏の出身派閥細田派の政治団体「清和政策研究会」に、多額の政治資金を提供していたことが分かっている。確認できたものだけで、次のような状況だ。
・平成16年:錦秀会から50万円、グループの医療法人「兵庫錦秀会」から100万円
・平成17年:錦秀会から74万円
・平成23年:兵庫錦秀会から30万円、グループの医療法人「睦会」から30万円、同「聖和錦秀会」から30万円
・平成24年:錦秀会から74万円、兵庫錦秀会から30万円、聖和錦秀会から30万円、睦会から30万円
細田派の中で最も多額の政治献金を受けていたのは中山泰秀防衛副大臣で、同氏が代表を務める政党支部「自民党大阪府第4選挙区支部」には、平成24年から令和元年まで毎年、籔本氏名義で100万円が献金されていた。また、錦秀会グループからも政治資金とパーティ券代を受け取っていたことがわかっており、その額は平成17年から令和2年までで3,628万円に上る。
錦秀会側はそのほか、東京オリンピック・パラリンピックの組織委員長でもある橋本聖子元オリパラ大臣、石破茂元幹事長、医療を所管する厚生労働省の田村憲久大臣、木村義男元厚労副大臣、松川るい参院議員といった自民党の議員に加えて、無所属で二階派の細野豪志衆院議員にも献金していた。
地検特捜部が次に狙うのは、田中英寿日大理事長の立件。総選挙後には、永田町に「政治とカネ」の問題が波及する可能性が出てきた。