はやくも興ざめの「内閣改造」|骨格変わらず新鮮味ゼロ

岸田文雄首相は今週13日、内閣改造と自民党の役員人事を行う。報道先行で入閣情報が流れているが、国民の間からは「新鮮味がなさそう」「主な顔ぶれがそのままでは、改造の意味がない」「人材難」といった厳しい声ばかり。支持率低迷に悩む岸田首相は、なぜ局面打開に打って出ないのか――?裏の動きを追った。

■「適材適所」の嘘

どこから漏れたのか、麻生太郎副総裁と茂木敏充幹事長は続投、安倍派5人衆のうちの松野博一官房長官と萩生田光一政調会長は入閣、西村康稔経産相が留任という内容が報じられている。5人衆の一人世耕弘成参院幹事長は今月初め、来年秋の総裁選で派として岸田氏の再選を支持すると表明。早々に、「失政」が続く岸田首相に援護射撃を行っていた。

報じられている新閣僚の顔ぶれや、これまでの動きからみて、安倍派、麻生派、茂木派の主流3派を優遇するのは確か。来年秋の自民党総裁選を見越した人事であることが透けて見える。

岸田首相はかねがね「人事は適材適所で」と語ってきたが、そうでないことは明らかだ。現内閣は、旧統一教会との深い関係や政治とカネの問題で、4人もの閣僚が「更迭」されている。適材適所ではない代表格となった野村哲郎農相は、福島第一原発の「処理水」を「汚染水」と発言し、集中砲火を浴びた。「内閣改造が近いため、野村さんを更迭すると汚染水、処理水の問題がまた注目されてしまう。時間稼ぎしてきたので、なんとか任期はまっとうする見込み」――野村氏が所属する茂木派のある国会議員は、そう解説する。

もう一人、適材適所ではない象徴が、週刊文春の報道で大スキャンダルとなってしまった木原誠二官房副長官。この御仁は、なぜか留任する見込みだという。木原氏の妻(以下、「X子さん」)の前夫が「怪死」を遂げたとされる事件では、前夫自身がナイフで胸を突き刺し「自殺した」と断定されていたが、警視庁の再捜査で殺人の疑いが浮上。X子さんと結婚していた木原氏が、警視庁の捜査に「圧力」をかけたのではないかという疑惑が報じられている。それでも木原氏の官房副長官起用を続けるというのだから、岸田首相はよほど木原氏を頼りにしているのだろう。

首相のインドネシア、インドへの外遊でぴったりと張り付く木原氏。自民党の幹部が内情を明かす。
「木原さんは、岸田首相の名代として官邸を仕切っている人物です。木原さんがいないと、政策も官僚も動きません。代わる人がいないのです。松野氏は官房長官ですが、官邸のスタッフは、みんな木原氏の方を向いて仕事をしています。磯﨑仁彦官房副長官は、まったくの無視されているような状況なんです」

■注目は官房長官人事

今回の内閣改造でも、適材適所とは言えない人事が行われそうだ。噂される上川陽子元法相の官房長官起用である。名古屋入管で起きたスリランカ人女性の死亡事件では、証拠となる防犯カメラ映像をご遺族には公開しながら、弁護士に対しては「遺族ではない」と拒否。情報公開請求にも真っ黒な「ノリ弁」=非開示で答え、真相究明に後ろ向きな姿勢をみせた。

上川氏に内閣の要である官房長官が務まるとは思えないが、岸田派の国会議員は次のように打ち明ける。
「岸田首相は、松野さんの官房長官起用を“安倍派に配慮し過ぎた”と感じていました。“官房長官はやはり岸田派から”との思いがあるのは確かでしょう。しかし、スキャンダルを抱えた上に入閣経験もない木原氏を官房長官にすることはできない。岸田派所属で、それなりのキャリアがあり有資格者と言えるのは、上川さんくらいしかいないのです。女性の官房長官は森山真弓先生以来なので、岸田首相としては数少ない目玉にしたいんじゃないですか」

確かに、岸田派で閣僚経験などの実績を見ると官房長官に値するようなメンバーはほとんどいない。実績はあっても、政治とカネで更迭された寺田稔元総務相や葉梨康弘元法相は起用できない。このままでは、なんの新鮮味もない内閣改造と党役員人事になってしまう。そこで、永田町で噂にのぼっているのが、小渕優子元経産相と石破茂元幹事長の入閣だという。

前出の自民党の幹部も、肯きながらこう話す。
「小渕さんは茂木派。岸田首相の後を狙う同派の領袖・茂木幹事長への牽制の意味もあって、小渕入閣はあり得る。政調会長という話もあるが、茂木幹事長留任なら、党三役を1つの派閥で2つとることになる。閣僚で決まりだろう。石破さんは、相変わらず世論調査の『次の総理』で必ず上位に来ており、人気は高い。浜田防衛相も留任とみられていたが、週刊文春で反社との写真が掲載されたのでアウト。岸田首相は石破さんと昔から親しいこともあって、防衛相起用は十分あり得る」

そもそも、岸田氏が国のトップに座っていること自体が「適材適所」ではない証明。つまらない改造になりそうだ。

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