石破茂首相が辞任を表明したとたん、茂木敏充元幹事長が記者会見を開き総裁選出馬を表明した。自民党は総裁選に向けて走り出したが、「国民不在」は相変わらずだ。物価高に苦しむ国民をよそに、表紙だけ変えて延命を図ろうとする自民党――。やはりこの党はズレている。
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総裁選前倒しの議論を睨みながら解散総選挙まで想定していた石破首相。しかし、今月6日、官邸を訪れた菅義偉元首相、小泉進次郎農水相との3者会談で「身を引くべき」と引導を渡された。石破政権が誕生した昨年10月の総裁選から1年。また総理が交代することになる。
有力候補と見られているのは、前回の総裁選で決選投票まで進んだ高市早苗氏と人気の高い小泉氏の「2強」である。
9月2日に自民党が公表した参議院選挙の「総括」で、敗北理由の一つにあげられたのは「政治とカネ」に対する国民の不信感だった。しかし、昨年の総裁選における高市氏の推薦人20人中、13人が裏金議員。昨年の衆院選で、自民党執行部が裏金議員の「公認」や「比例重複」を認めなかったため、多くの議員がバッジを失っている。その後の参院選も合わせ、20人中9人が落選。その中には、元総務大臣の鈴木淳司氏や人権侵害で知られる杉田水脈氏らが含まれていた。
「確かに何人もの同志がバッジを失ったが、高市さんは、石破総理の寿命は短いといわんばかりに水面下で早くから総裁選に向けた準備をやってきた。推薦人確保はクリアできるだろう」と昨年から高市氏を応援している衆議院議員は自信ありげに語る。
だが、現状の世論を考えれば、今回、裏金議員にはこれまで以上に厳しい視線が集まるはず。総裁選では何度も「討論会」が行われるが、そこでも「政治とカネ」の問題がクローズアップされるはずだ。
10日、裏金の最高額となる約5,100万円を政治資金収支報告書に記載せず、政治資金規正法違反に問われた元参院議員・大野泰正被告の初公判が開かれた。大野被告は無罪を主張したが、かつて同僚だった現職議員の見方はシビアだ。
「大野さんの初公判でまた裏金議員が注目されてしまう。すでに複数の元秘書や会計責任者が裏金を認めて有罪となっているのに、容疑を否認したことで印象がより悪くなった。5,000万円以上の現金を裏金にしていたのなら、個人の収入として申告し、税金を納めねばならない。しかし大野さんは何もしていないの。常識的にみれば無罪主張が通じるわけもない。そんな時に総裁選。うち(高市陣営)は裏金議員がゼロというわけにはいかないので、その点は確かに頭が痛い」(前出の高市派衆院議員)
高市氏の支援メンバーをみれば、萩生田光一氏を筆頭に、旧安倍派の幹部の名を連ねている模様。結局、高市氏は「裏金議員頼み」とならざるを得ない。
一方、高市氏の対抗馬となりそうな小泉氏。昨年の総裁選では当初、「最も総理の椅子に近い」とされ、楽勝ムードだった。しかし、中盤から後半に進んでいくなかで支持が急落。最終的には3位に沈んだ。
今年5月、江藤拓前農水相が「コメは買ったことない」という大失言で辞任。その後継を任されたのが小泉氏だったことは周知の通りだ。備蓄米を放出することで高どまりのコメ価格を一気に引き下げて、喝采を浴びたのは記憶に新しい。今年7月の参議院選挙でも人気を背景に全国行脚。国民的な知名度では高市氏をしのぐ。
懸念されるのは人気の上滑り。昨年の衆院選では石破首相の肝いりで選対委員長に就任して遊説にまわったが、自民党は敗北。参院選でも小泉効果を認めることはできなかった。自民党のある大臣経験者は、こう指摘する。
「小泉は、ポストに就いた直後はとんでもなく高い人気を得る。例えば、コメ価格を一時的にだが下げたということで党の支持率アップに貢献したかにみえたものの、尻すぼみ。昨年、石破総理の下で選対委員長を務めた際や、自分の総裁選出馬の時も、最初は日の出の勢いだったが、長続きせずすぐに急降下。それがお決まりのパターンだ。まだまだ修行が足りんということではないのか」
打ち上げ花火のように瞬間的に支持が集まるも、持続性がないという意味。農水相になったのは今年5月だったが、7月の参院選で自民党は大敗。つまり2か月ももたなかったというのが現実である。
立憲民主党の小沢一郎氏は、自身のXにこう投稿している。
《「行き詰まっても表紙を替えて選挙をやれば勝てる」という発想そのものが行き詰まっている》
《裏金議員ほど元気》
《石破後は自民党議員にとってバラ色の世界になるのだろうか。国民は冷ややかに見ている。自民党という船ごと沈没する可能性が高いのではないか》
裏金議員が頼りの高市氏か、打ち上げ花火の小泉氏か―ー。この選択肢しかないというのが自民党の現状だ。衆議院、参議院とも与党が過半数割れしている今こそ、野党はまとまって政権交代を目指すべきだが……。















