コロナ禍でもガッチリ稼ぐブラック企業

3月に入っても急減することのない新型コロナウイルス・オミクロン株の新規感染者数。1日の東京都の感染者数は11,813人、大阪府8,966人といった具合に高止まりしている。

全国的にPCR検査の数を抑える傾向にあり、新規感染者の実数には疑問もある。大阪府に至っては、先月22日に1日あたりの死者が63人と過去最多を記録。同じ日東京都は25人で、ダントツの数だった。

その大阪府では、厚生労働省の新型コロナウイルス感染者などの管理システム「ハーシス」に入力されず、放置された新規感染者が続出。それが、新規感染者数、死者数に影響しているとの指摘もある。そんな状況にあって、コロナ禍をあざ笑うように、稼ぎまくる企業がある。

■稼ぎまくる「電通」

コロナ禍にあっても稼いでいる会社の中には、ブラック企業として名高いところが多々ある。その筆頭は、大手広告代理店「電通」であろう。

電通のブッラクぶりは広く知られるところだ。2015年12月に新入社員だった高橋まつりさんが繰り返し違法残業を命じられたあげく、精神疾患を発症し、自死に追い込まれた。「まつりは電通に殺された。電通にさえいかなければ」と、今も遺族は悲しみに暮れている。

その電通が違法な残業を容認し、労働基準法に違反しているとして有罪判決が確定したのは2017年。だが、「ブラック企業大賞実行委員会」が毎年ウェブ投票を実施している「ブラック企業大賞」で、電通は2016年に大賞、2019年にも特別賞を受賞している。2019年の受賞理由には『同社は多数の過労死の被害者を出し、労基法違反の有罪判決を受け、社会的にも大きな批判にさらされているにもかかわらず、再び複数の違法行為で労基署から是正勧告を受けた悪質性』が評価されたとある。

だが、コロナ禍でも電通の過酷な労働環境は変わっていないらしく、国発注の大型公共事業を次々に落札。2021年のコロナ関連に絞っても、国や独立行政法人から4つの大型案件を落札している。

昨年1月には、厚生労働省発注の『わたしとみんなの年金ポータルに係るLINEアカウント作成業務』というブラック企業には似つかわしくない事業を、関連会社の電通テックが6千160万円で受注していた。

電通は、大阪府や大阪市など地方自治体でも大きなイベント関連事業を数多く落札している。死者数過去最多を記録している大阪府の吉村洋文知事が「縮小するが開催する」と断言した大阪マラソンの、2021年から2023年の大会運営業務を、最優秀提案事業者として落札したのは電通である。社員数を大幅に増やしたという話は寡聞にして知らないが、会社の利益のために第二、第三の犠牲者が出ないことを祈るばかりだ。

■儲ける竹中平蔵氏の「パソナ」

地方自治体で、ガッツリているのは人材派遣会社大手、竹中平蔵氏が会長を務める「パソナ」だ。

パソナは、コロナ禍前から大阪府や大阪市内の区役所の窓口業務を落札してきたが、2019年10月、大阪府八尾市が委託していた窓口業務のパソナの担当者が、1,400万円を着服していたことが判明。パソナは契約違反で2か月の業務停止処分となった。

2017年1月にも、パソナの社員が受領書を偽造して金を手にするという計画的手口で、大阪市大正区の業務において451万円あまりを着服していたことも分かっている。

コロナ禍では、そんなパソナが持続化給付金の審査事務作業の委託先「サービスデザイン推進協議会」の共同出資者となり、6次下請けまで再委託を繰り返していたことで批判を浴びた。

2021年だけ見ても、パソナは大阪府から新型コロナウイルスワクチン接種の予約受付業務、接種会場の来庁者対応、PCR検査場の従事者派遣などの業務を落札。緊急事態宣言発出で時短営業を余儀なくされた飲食店などへの補償を支払うコールセンター運営などの委託業務は、6億8千万円あまりで落札していた。

しかし、大阪府の補償金支払いは滞り、全国でもワーストといわれるほど遅延。他の都道府県では90%以上が支払い済みであったにもかかわらず、大阪府は60%前後しか完了していないというでたらめさだった。ある大阪府職員は、苦悩の表情でこう打ち明ける。
「コロナ禍にあって、急に感染者数が増えて緊急性を要するものですぐに対応できる人材派遣会社は数少ない。パソナの社員が委託費を着服して指名停止になろうが、何度問題を起こそうが、頼める先がないのです。クオリティとか、再委託問題など二の次で、パソナに落としてもらう以外方法がない。しかし、時短営業の協力金はパソナに丸投げして大失敗。ノウハウがあるということだったが、実際にはなかった。パソナに代わる事業者が出てきてくれさえすれば……」

■「ワタミ」

ブラック企業として、すっかり定着した感のある大手居酒屋チェーン「ワタミ」。前述したブラック企業大賞にも名を連ねている。

2008年6 月に正社員の女性が過労死ラインとされる月間80時間の残業を超えて月141時間もの残業を強いられ、入社2カ月で精神疾患と過労自殺に追い込まれた。それでもワタミは責任なしと主張し謝罪もしなかったが、同社の行為については労働基準監督署が是正指導している。

2021年には、群馬県でワタミの新事業である配食サービスを巡り群馬県にある高崎労働基準監督署が時間外労働で是正勧告。長時間労働を余儀なくされた社員の出退勤記録を上司が書き換えるなどして、隠蔽工作していたことも分かっている。このケースでも社員は、精神疾患にまで追い込まれていた。

コロナ禍で居酒屋などが店舗閉鎖、新業態変革に追い込まれる中、そのワタミは地方自治体への参入を図っている。

大阪府八尾市では、コロナ感染者への配食サービスを、ワタミを使って実施していることが明らかになった。下の写真の伝票のようにワタミが「ご依頼主」として配食サービスを行っているのだ。

八尾市のホームページを確認すると、2021年4月に『新型コロナウイルス感染症対策の一環として自宅療養者を対象とした配食サービスについて、大阪府も委託している同社(ワタミ)が業務を熟知しており、正確かつ効率的な業務遂行を鑑みると同社以外では対応できないため』という理由で契約が締結されていた。委託金額は277万円あまりである。

配食サービスで労働基準監督署からチェックが入っているワタミと、上記のような理由で、税金を投じて契約するというのはいかがなものか。2月に新型コロナウイルス感染したという、あるハンター読者の話。
「コロナ陽性と判定され、5日ほどして、やっと保健所に連絡がついた。配食サービスを依頼して届けられたのが、なんとブラック企業といわれてきたワタミのラベルがついたもの。正直、『ワタミか』と驚いた。オミクロン株になってから、喉の痛みが強烈になったケースが少なくない。私もそうでした。しかし、ワタミが配食してきたのは、なんとレトルトカレー。コロナに発症してカレーを食べたいなんて人はまずいませんよ。配食サービスメニューでも、ブラックなんだ」(*下の写真参照)

■ハーシス入力遅れ問題

大阪市のハーシス入力遅れ問題では、大阪市が契約書もないまま、業者の言い値である5,500万円で入力業務を「NTTマーケティングアクト」(以下、N社)という会社に委託していたことが分かっている。契約書どころか、仕様書、指示書、秘密保持契約書もないまま、市民の個人情報がハーシスにわたっていたということだ。でたらめな委託をした大阪市は、断罪されるべきだろう。松井一郎大阪市長は、N社について「大阪市では実績がある会社なので委託した」と反論したが、N社もブラック企業の一つとみられている。

2006年、N社の社員が愛知県で電話加入権をエサにして詐欺容疑で逮捕され実刑判決。2004年には、N社の社員がわいせつなDVDを販売したとして、わいせつ図画販売容疑で逮捕されている。2018年には、N社が契約社員を不当に解雇したとして民事訴訟となり、解決金7千万円の支払うことで和解。和解書には「不適切な対応があった」と謝罪する条項まで盛り込まれていたという。

電通やパソナ同様、N社もコロナ禍でしっかりと国発注の業務を受注している。昨年4月に《令和3年度「新型コロナウイルス対応支援資金」及び「新型コロナウイルスの影響による返済猶予」等に係るコールセンター設置・運営業務委託》を3,300万円あまりで落札。大阪府でも、2020年にワクチン接種業務を6億円あまりで落札していた。

驚いたのは、昨年9月に、同社が最高裁判所発注の《裁判員候補者等コールセンター運用業務》まで請け負っていること。社員が刑事事件で実刑判決を受けているのに、このような委託を受けて大丈夫なのだろうかと心配したくもなる。ちなみにN社は、パソナ関連企業から人材派遣を受けている。

ブラック企業がのさばる現状について、財務省のキャリアOBが、次のように解説する。
「日本では、新しい企業のチャレンジより、価格が高くとも実績があり、トラブルを抑えてくれる企業が好まれる。少々ブラックでも、関係ないという考えです。中小企業はその下請けとして永遠に使われる形態。頂点がブラック企業であっても、ずっと国や自治体から仕事がもらえるならOKなんです。仕事が降ってくるわけですからね。コロナ禍で焼け太りのブラック企業は、たしかに存在します」

 

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