いじめ防止対策推進法が規定する「いじめの重大事態」を隠蔽していたことが分かった鹿児島市教育委員会が、平成30年から翌年にかけて鹿児島市谷山地区にある市立小学校の6年生のクラスで発生した「重大事態」とみられるいじめを放置し、県教委や鹿児島市長への報告を怠っていたことが分かった。法が定める調査も行われておらず、事実上の隠蔽が疑われる。
当時の担任も校長も積極的な対応をせず、救いのない状況となった女子児童は不登校に――。いじめを原因とする欠席が40日を超えていたことから、明らかな「重大事態」だったとみられる。児童は卒業まで学校に行けず、中学進学時に市教委に「指定学校変更申立書」を提出し、許可を得て別の学区の中学に通うことを余儀なくされている。
■いじめで欠席40日超、学校も市教委も動かず
市内谷山にある小学校の6年生のクラスでいじめが始まったのは、平成30年の10月。被害児童が気に入らない言動をとったというだけの理由で、複数の児童から一方的な嫌がらせを受けるようになったという。
集団での無視。「きもい」「おえっ」などの暴言。腕を引っ張るなどの直接的な暴行――。いじめを行っていた児童たちは教師の聞き取りにも口裏を合わせて対抗するなどしたため、被害児童は体調を崩し、長期にわたって医療機関で治療とカウンセリングを受けていた。
何度学校に訴えてもいじめが収まらなかったため、被害児童は不登校となり、欠席日数は40日以上に及んだ。
被害を受けた児童は、中学進学時に、いじめを繰り返す子供たちに会わないで済む離れた中学に通わざるを得なくなり、市教委に「指定学校変更申立書」を提出して学区の変更許可を受けていた。(*下が申立書の写し)
2013年に施行された「いじめ防止対策推進法」は、いじめの重大事態として次の二つのケースを規定している。
1 いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき。
2 いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき。
当該事案は、いじめが解消されなかったことで通院治療を受けるようになっていたことから“児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた”ことは確か。さらに、おおむね30日が判断基準となる「いじめを原因とする欠席日数」が40日を超えており、“相当の期間学校を欠席”した状況だった。
しかし、県教委にも当時の市長にも未報告。法が定めた「重大事態」の可能性が濃厚だったにもかかわらず、学校側も市教委もいじめを矮小化し、必要な調査さえ行っていなかった。
伊敷中のケース同様に、事実上“なかったこと”にされた2例目。鹿児島教育界の闇は、深まる一方だ。
市教委は先週、当該事案の保護者に対し「重大事態になる可能性が出てきましたので、3日の会議で教育委員に報告します」と伝えてきたという。その際、「お子さんが呼ばれて、聞かれたくないことを聞かれるかもしれない。黙秘権はある」などと脅しともとれる発言を行い、保護者を戸惑わせている。これは一体、どういうことか?