傲慢自民に有権者そっぽ|保守地盤の九州で政権側が知事選連敗

7人が乱立した鹿児島県知事選挙で当選したのは、どの政党の推薦もうけていない元九州経済産業局長の塩田康一氏(54)だった。自民、公明両党の推薦で再選を目指した三反園訓氏(62)は落選。選挙戦後半で立憲民主党が推薦した伊藤祐一郎元知事(72)も、3位に沈んだ。

政党不信の広がりを象徴するような選挙だったが、意外なことに、保守王国といわれる九州の知事選で政権与党が敗北するケースが続いている。昨年の福岡と今回の鹿児島、5年前には佐賀でも敗れた。保守県ではないが、沖縄の知事選は2連敗中である。

■2015年「佐賀の乱」

2015年1月の佐賀県知事選挙では、推薦した自民・公明に官邸も加わって総力戦を展開しながら、無所属新人で総務官僚出身の山口祥義氏が初当選を果たした。同氏を支援したのは、政府の農協改革に反発した農協の政治組織「佐賀県農政協議会」(県農政協)や県内自治体の首長、民主党、連合佐賀。一部ではあったが、自民党所属の地方議員も山口支援で動いた。

一方、緒戦で優勢が伝えられた元武雄市長の樋渡啓祐氏は、安倍政権の強力なバックアップを受けながら約4万票差で惨敗。政権に痛烈な一撃を与える結果となった。

■福岡では95万票差で惨敗

昨年の福岡県知事選挙では、麻生太郎副総理が強力にプッシュして自民党の推薦を勝ち取った元官僚OBが、無所属現職の小川洋氏に大惨敗。小川氏の129万3,648票に対し自民推薦候補は34万5,085票しかとれず、約95万票もの差がついた。

現職・小川洋知事の3選阻止を狙った麻生氏が、県民の批判を無視して強引に事を運んだ結果だったが、自民・公明の総力戦は功を奏さなかった。

党の方針に従わず現職陣営を支援したのは、山崎拓元自民党副総裁や武田良太国家公安委員長らわずか数人の国会議員。個人的な感情を知事選びに持ち込んだ麻生氏に対する県民の反発は猛烈で、選挙後、福岡県連の会長はスッパリ辞任している。

■沖縄では連戦連敗

沖縄では、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移転を強行した安倍政権への怒りが凄まじく、2014年の知事選においては新人で元那覇市長の故・翁長雄志氏が「オール沖縄」に支えられ、安倍政権のお抱え候補・仲井眞弘多を大差で破り初当選。翁長氏の死去に伴って行われた18年の選挙でも、オール沖縄が推した玉城デニー氏が、8万票の差をつけて政権側の新人に勝利した。

■実は脆い安倍自民党

元々革新系が強い沖縄は別として、佐賀、福岡、鹿児島は典型的な保守地盤で、地方議員のほとんどが自民系だ。それでも、県民感情を逆なでした場合の首長選挙で、あっけなく敗れ去る自民党。これは、しっかりした受け皿さえあれば、「一強」など怖くないということの裏返しだろう。さらに言うなら、有権者はしっかりとした「見る目」を持っており、権力側の圧力を跳ね返す力もあるということを示している

鹿児島県では、自民党所属の県議団が「全会一致」で現職推薦を決め、県連の役員会も「全会一致」でこれを承認した――ということになっている。しかし、「全会一致」が真っ赤なウソであったことは、ハンターの配信記事で何度も報じてきた通りだ。

国民の声を無視し、嘘やでっち上げを繰り返すのが安倍政治の特徴だが、自民党の地方組織もすっかり毒されたというべきだろう。

新型コロナウイルスの封じ込めに失敗した安倍首相周辺からは、「今年秋にも衆議院を解散して総選挙を断行する」という声が聞こえてくるようになった。だが、国民の安倍政権に対する期待感はすっかり冷めており、支持率は下がる一方だ。総理・総裁が替わればいいが、安倍氏が権力の座にしがみつけば、受け皿に難があっても自民党は大敗するだろう。

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