【参院選巨額買収事件】河井被告夫妻と被買収政治家を待ち受ける“運命”

昨年7月の参院選で、広島県内の市長や町長、県会議員、市議会議員などに2,900万円ものカネをバラまき、公職選挙法違反(買収)の疑いで起訴された前法相で衆院議員の河井克行被告と、妻で立候補者でもあった参院議員の河井案里被告。

逮捕時から325万円も買収額が増え、資金提供した相手も6人増えたが、そのうち300万円がある人物に渡っていたことが判明し、県政界の注目を集める状況となっている。

■亀井静香氏の元秘書に300万円

その人物とは、広島6区の元衆院議員で自民党の派閥領袖でもあった亀井静香氏(元国民新党代表)の元秘書、Y氏だ。

Y氏は、昨年5月31日に広島市内の克行被告の事務所で100万円、選挙告示前日の7月3日に広島市内のホテルで200万円を受け取ったことが検察に認定されている。

東京地検特捜部は、河井被告夫妻がカネ渡した先を示すデータなどから、「バラまきリスト」をすでにまとめている。そこからみると、バラまき額は市長クラスで50万円から150万円、県議や市議は30万円から50万円で、Y氏の300万円はまさに破格だ。一体どういうことなのか、取材を進めた。

克行被告は衆院広島3区、案里被告は県議時代は広島市安佐南区から選出で、ともに広島市内が地盤だ。広島市や隣接地域以外には、まったくツテがないと言っても過言ではない。例えば、克行被告が代表を務める「自由民主党広島県第三選挙区支部」や資金管理団体「日本の夢創造機構」の政治資金収支報告書をみても、福山市を中心とした広島県東部からの寄附は、ほんのわずかだ。地元政界関係者の話を聞いて、300万円の意味が理解できた。

「広島6区は、亀井静香先生が長く守ってきた。与野党関係なく、全員が亀井党。河井被告夫婦が行っても、相手にされん。参院選で亀井先生は、野党統一候補の森本真治(国民民主党参院議員)でいくと指令を出していた。それを切り崩そうと、頼ったのが亀井先生に25年以上も使えた元秘書のY氏だったとみれば300万円の意味がよくわかる。亀井氏の代理人のようなY氏のカオで、広島6区の市長など有力者にカネをバラまいてもらおうという魂胆だったのでしょう」(地元政界関係者)

この政界関係者の話を裏付けるかのように、地元では「○○市長は完全に亀井派だから、山田氏から(カネを)もらっているはずだ。7月11日の朝、記者に疑惑を聞かれて『もらってないんだ』とブチ切れていた」「Z市の有力者も、検察から事情を聞かれている」などといった噂が飛び交っている。

だが、辻褄の合わない点もある。Y氏は河井被告夫婦から300万円をもらっていながら、参院選で案里被告の対立候補だった森本議員の集会で亀井氏の激励文を代読し、事務所開きにも出席していたのだ(下の写真)。ねじれた構図が浮かび上がる。

Y氏への300万円は、他の県議や市長への分を含めて、バラまきの最高額。「亀井党の票の一部でも欲しい」というのが案里・克之両被告の心境だったのだろう。

■被買収組に待ち受ける運命とは……

ところで、Y氏もそうだが、汚れたカネをもらった側は誰も立件されていない。金銭授受を認めた県議や市議、首長でさえも現在まで刑事処分を受けていないのだ。要するに、違法なカネを渡した河井被告夫婦方だけが起訴されている状況で、この点については根強い批判がある。しかし、取材してみると、買収資金をもらった側はあっけらかんとしている。

「検察にはちゃんと話した。もらったと説明したのじゃけん、事件にはならん」と胸を張るのはある広島の市議。他の県議、市議からも「河井被告夫婦からカネもらったと認めて、供述調書にサインすれば、逮捕されない」という声が聞こえてくる。

議員らの無責任な姿勢には呆れるしかないが、世の中は甘くない。河井被告夫婦が問われているのは公職選挙法違反ということで、百日裁判になる。原則、百日以内で1審判決が出されるということだ。裁判には、カネを提供された政治家が数多く出廷を求められるはずで、元検事の弁護士はこう話す。
「カネをもらった広島の県議、市議は安心していたら、とんでもないことになる。法廷では、検察は河井被告夫婦から選挙支援、票の取りまとめのためにカネをもらったと証言させるはず。そう証言した段階で、公職選挙法違反を法廷で認めたことになる。検察が不起訴処分とした場合でも、市民から告発を受けると、捕まることもあり得る」

河井被告夫婦の初公判は、8月初めに東京地裁で開かれる模様だが、前出の広島市議も不気味な予想を口にした。
「裁判で、検察がカネをもらった人物の実名をバラしたら終わり。何十人もの県議、市議が辞職に追い込まれ、あっちでもこっちでも選挙になる」

これだけの事件を起こしておきながら、議員にしがみつき、ボーナスまで受け取った克行被告と案里被告。もちろん、被買収側の県議や市議らも同じだ。すべての関係者の先には、間違いなく“地獄”が待っている。

(山本吉文)

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