鹿児島・強制性交事件の民事訴訟判決に重大な瑕疵(上)|原告と被告“取り違え”

2021年秋に起きた鹿児島県医師会の男性職員(2022年10月に退職)による強制性交事件。被害女性が損害賠償を求めて鹿児島地方裁判所に提起した訴訟は、裁判官がコロコロと変わったあげく、審理に深く関わったとみられる左陪席がいなくなるという異常な事態の中で判決が下されていた(既報)。

異例の裁判過程が判決の妥当性に疑問符を付けた状況だが、じつは「判決」そのものに、重大な事実誤認や明らかな間違いがあることが明らかとなった。

■致命的な4か所の間違い

性被害を訴えている女性の人生がかかった裁判の判決に、4カ所にも及ぶ重大な間違いがみつかった。以下に列挙する。

1か所目と2か所目は、「認定事実」の中の次のページ。判決文中の「原告」は性被害を訴えている女性、「被告」は鹿児島県医師会の男性職員(事件発生当時)である。なんとこの判決で地裁は、『原告』と『被告』を取り違えるという致命的なミスを犯していた。事件発生からの流れを理解している裁判官なら、辻褄が合わないことに気付くはずだが、連続して間違ったのは事実認定がいい加減だった証拠だ。

次のページ、「C」は被害女性の雇用主で「D」は被害女性の同僚だが、地裁判決はここでも大きな間違いを犯している。

行頭「Dが、Bから…」とあるが、『B』は女性が勤務している法人の名称。法人の職員が法人から被害申告を受けることなどあり得ない。「Bから」は「原告から」が正解なのだ。判決の始めから通しで精読していれば、素人でもわかる話である。最後は上掲ページ「3 判断」の『3』。じつは、『3』ではなく『2』となるべき。一連の事実から、この判決が、あり得ない間違いを前提に書かれたものであることは明らかだ。

裁判所がどう言い訳しようと4点の間違いは歴然とした瑕疵だ。鹿児島地裁は、原告と被告、さらには原告と法人を取り違えたまま裁判を終え、杜撰な判決を修正もせず世に流したことになる。この行為は、被害女性への冒涜であり、司法への信頼を喪失せしめる重大事態と言えるだろう。

そもそも判決は、合議体の裁判官3人と書記官が精読した上で決定されたはずのもの。であれば、判決を書いた裁判官、事前に判決文を読み込んだ他の裁判官、担当書記官のすべてが、このいい加減な判決文への責任を負わねばなるまい。

ちなみに、判決に関わったとみられるのは前原栄智裁判長の他、和田義光、赤坂誠悟の各裁判官。最後にチェックしたのは書記官だ。4人がかりで判決の内容を確認したことが明白である以上、「たんなるミス」で片付けることは許されない。

じつは、デタラメな判決であった証拠がまだある。合議に加わっていた裁判官たちが、原告である被害女性の法廷での証言をまともに聞いておらず、尋問調書さえ読んでいない可能性があることが分かってきた。詳細は次の配信記事で。

(中願寺純則)

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