検察審査会議決は不開示情報|記者の審査請求に「のり弁」正当化の主張

検察審査会の情報公開をめぐる問題で、筆者の審査請求(苦情申出)を受けた複数の検審が10月中旬、審査事件の議決などを開示しなかった判断を「相当」であると主張していたことがわかった。各検審は、議決などの記録が開示情報にあたらないとし、対象文書をほぼ墨塗り処理した「のり弁当」対応を正当化していた。

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全国に165カ所ある検察審査会は、検察の不起訴処分の妥当性を審査する第三者機関。国民から無作為に選ばれた11人の委員が事件関係者などからの申し立てを受けて審査にあたり、当初の不起訴処分に異を唱える意見が多かった場合は「起訴相当」や「不起訴不当」を、その限りでない場合は「不起訴相当」を議決する。

既報の通り筆者は本年1月、地元・北海道の各検察審査会へ公文書開示請求(検察審査会行政文書開示申出)を行ない、各庁で昨年1年間に議決に到った全事件の記録を開示するよう求めた。これを受けた管内9検審のうち2検審が文書不存在で不開示決定を出し、残る7庁(札幌、小樽、函館、旭川、釧路、帯広、及び北見の各検審)が7月から8月にかけて対象文書の一部開示を決定。ところが開示された文書は最も肝心な議決(先述の「不起訴不当」など)を含む大部分が黒く塗り潰され、典型的な「のり弁当」となっていた。文書の写しの交付を受ける際には、ほかの官公署では一般的な「郵送開示」ができない旨を告げられ、函館や北見など遠方の検審へ自ら足を運ばなくてはならなかった。コピー手数料はいずれの検審も市価の2倍にあたる1枚20円だった。

検審の議決は通常、その要旨が文書にまとめられ、一定期間(おおむね1週間)各庁の掲示板で公開される。だがこの要旨文は「検察審査会行政文書」にあたらず、文書公開の対象とならない。刑事・民事裁判の記録のように事後に一般の国民が閲覧することも許されていない。つまり国民は、掲出時期に掲出地の掲示板まで足を運ばない限り各件の議決を確認することができない。筆者が今回開示請求を試みたのは、この時間的・空間的制約を解消すべく、議決などの記録を公文書開示という手段で入手するためだった。ところが先述の通り、各地に赴いて得られた文書は意味のある部分がことごとく真っ黒に塗り潰され、審査の概要はもちろん議決までもが把握できない状態になっていた。

この対応に疑義を覚え、7カ所の検審へ苦情申出(審査請求)を行なったのは、開示から2カ月ほどが過ぎた9月上旬のこと。請求では、もとの開示が著しく不充分であり最低でも議決を公開しなければ情報開示の意味がないと指摘し、各庁に開示のやり直しを求めた。併せて(附記1)として、裁判所などのように議決の要旨の閲覧・謄写を認めるよう求め、また(附記2)で今回あきらかになった「郵送開示不可」ルールの改善も求めた。

遅くとも同17日までに請求を把握した各庁は、約1カ月を経た10月中旬までに審査請求を「検察審査会情報公開・情報保護審査委員会」に諮問(意見伺い)した。同審査会は、検審の情報開示の妥当性を審査する第三者機関。いうなれば、検察をチェックする第三者機関がまた別の第三者機関にチェックされることになるわけだ。

この諮問通知の数日後、きっかり7通の封書が届いた(*下の画像)。表書きの差出人欄には、いずれも「第一東京検察審査会」とある。だが開封して中の書類を確認すると、送り主はすべて先述の審査委員会となっていた。これは、審査委の事務局が第一東京検審にあるため。つまり、第三者機関をチェックする第三者機関の事務局が、チェックされる側の機関の中に設けられているということだ。都道府県警察を監視する都道府県公安委員会の事務局がほかならぬ都道府県警察の中にある面妖さに通じる構図で、本邦の役所はこの手のブラックジョークに事欠かない。

7つの封書に入っていたのは、審査委が7件の諮問を受理したという通知と、7庁が提出したという「理由説明書」の写し。同書には相手方の言い分が、つまり筆者の審査請求を受けた各検審がもとの「のり弁開示」を正当化する主張が綴られていた。驚くべきは、各地の掲示板で議決を掲出する慣行を例外的な措置であると主張している点。各庁ほぼ同じ文言で記しているその部分を、下に引いておく。

《苦情申出人は、議決の要旨は掲示されていることから、公にする慣行があると主張するが、検察審査会法第40条は、審査会議の非公開(同法第26条)の例外として、議決後7日間という限られた期間のみ検察審査会事務局の掲示板に議決の要旨を掲出することとしているのであって、これをもって議決の趣旨が公にすることが予定されている情報(情報公開法第5条1号イ)に該当するとは言えない》(*下の画像、クリックで拡大

各検審が主張する通り、たしかに検審法では「会議の非公開」を定めている。だが実際、これも検審自らが認めているように、少なくとも各事件の議決については短かい時間ながら不特定多数の眼に触れることになるのだ。これを「例外」の2文字で片づけ、掲出期間が過ぎるや否や何があろうと一切公開しないというのでは、何のために情報公開制度があるのかわからない。言わずもがな、議決の要旨を含む審査の記録は各検審の所有物ではなく、国民の財産。検察の処分を審査する機関が適切に機能しているかどうかを国民がまったく監視できない状況は、およそ真っ当とは言えないのではないか。

今回の苦情を審査する検審情報公開・個人情報保護審査委員会は学識者1人・弁護士2人の3委員で構成される。裁判所の公式サイトで公開されている過去の答申を参照する限り、これまで綴った筆者の主張がそのまま認められることになるとは考えにくい(⇒こちら)。答申の時期は、これまでの実績から見て諮問の2か月ほど後になると予想される。第三者機関をチェックする第三者機関は、どういう理屈で「のり弁当」を正当化してくることになるのか――。

なお今回、請求に添えた先述2点の「附記」について一部の検審から言及があった。それによれば、議決の要旨の閲覧・謄写を認めるよう求めた「附記1」は「制度要望」であり、また郵送開示の対応を求めた「附記2」は「運用改善についての要望」であるため、いずれも苦情申出の対象とはならないとの主張だった。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

 

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