「閣外協力でよかった。中に入っていれば今ごろ火だるまだったよ」と苦笑いするのは日本維新の会の国会議員。離脱した公明党に代わり自民党との連立に加わった維新だが、代表でもある吉村洋文大阪府知事とツートップをなす藤田文武共同代表が「政治とカネ」で袋叩き状態となっている。
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共産党の機関紙「しんぶん赤旗」日曜版は、藤田氏側が、2017年から2024年まで公設秘書だった中川慎也氏が経営する会社にビラ印刷代などとして約2,000万円を支払っていたとする疑惑を報道。そのうち90%が政党助成金や調査研究広報滞在費といった税金が原資となっていることも暴いた。
会社代表の公設秘書は、国から約700万円ほどの給与をもらっていたとみられ、まさに税金の“二重取り”状態。維新の売り文句「身を切る改革」の薄っぺらさを露呈した格好だ。
中川氏が経営しているのは、兵庫県西宮市に本社がある「リ・コネクト」。維新のホームページからチェックできる《調査研究広報滞在費の公開》を見ると、24年7月に757,900円、同年3月に755,486円、藤田氏の政党支部「日本維新の会衆議院大阪府第12選挙区支部の23年の政治資金収支報告書にも、リ社へ8,182,290円と821,040円を支出したとする記載があった。
リ社の法人登記簿を取得してみると《化粧品の企画、輸入、製造及び販売》《福祉用具の貸与及び販売》など18項目が目的欄に並ぶが、どこにも「印刷業」という記載はない。
実際に、藤田氏がリ社に発注したとみられるチラシがSNSにアップされていた。《必ず、維新にしかできない政治浄化を実現する》というタイトルのチラシだ。維新が「政治とカネ」の問題を政治資金の透明化することで実現するという文言が並ぶ。しかし、チラシ自体に目立った特徴はなく、政治関係のチラシやポスターを手掛けるプロのデザイナーに見てもらっても「とてもプロとは思えないデザインですね。素人さんがテンプレートにはめ込んで作成したようなレベルです。これでお金とるんですかね」とこき下ろすほどレベルが低いものだった。
藤田氏と公設秘書・中川氏に関する疑惑が浮上したのは、今回だけではない。中川氏は藤田氏が社長を務める「KTAJ株式会社」(本社・大阪府熊取町)の役員にも就任(24年1月辞任)していたことが指摘され問題視されていたのだ。
藤田氏は自民党との連立交渉の際、“政治とカネ”の問題について「国民の不信感が積み重なっている。自民党の裏金問題への対応に国民は納得していない」「企業団体献金の廃止を含めて、対応すべきだ」とどや顔で批判していたが、今回の赤旗報道はそうした発言がブーメランとなって返ってきた格好だ。
藤田氏は、今回の疑惑について、自身のYouTubeで公設秘書への支出は「私自身がこの流れ(公設秘書の会社への発注)を弁護士に確認したところ、現時点では適法」と突っ張る一方で「そもそも秘書が代表をつとめる会社に発注したという構図が誤解や疑念を招くんじゃないかと多くのご指摘をいただきました。それについては私も真摯に受け止めたいと思います。今後につきましては、秘書が代表を務める会社に発注は一切、行わない」と逃げを打った。
また、赤旗の記事や取材に対しては、《悪意のある税金環流のような恣意的》《いわゆる「利益供与」や「不当に高額/低額な設定(高すぎても低すぎてもダメ)」となることのないよう、適正手続に基づき決定されている》《質問状の回答期限が翌日までという不誠実かつ一方的なやり方は、我が党が名誉毀損で係争中の週刊文春と同じです》などと反論し、赤旗の記者の名刺までSNS上に晒した。
そもそも、疑惑を招くような支出を8年間を続け、2,000万円もの額に上っていること自体が大きな問題。それがなければ赤旗から取材を受けるようなことはなかったはずだ。自分の所業を棚に上げての報道批判は、見苦しいという他ない。
じつは、藤田氏の政治資金の問題はこれだけに留まらない。2021年3月に調査研究広報滞在費から60万円を自身の政治団体「藤田文武後援会」に寄附しているが、同団体の政治資金収支報告書にはその記載がなかった。
その点について、23年9月に文春オンラインに指摘され、取材を受けたのちに訂正。神戸学院大学の上脇博之教授から政治資金規正法違反で刑事告発された。
前出の維新議員がこう突き放す。
「党内には、同情する声などほとんどありません。藤田さんは幹事長時代、そして共同代表となってからも、さんざん自民党の裏金についてボロクソに言ってきました。連立交渉の過程でも同様でした。それが、自分のことになれば、自民党の議員同様に言い訳ばかりに終始。連立に入った、自民党に染まったかのような対応です。野党時代なら、適当な言い訳でも通ったのでしょうが、与党じゃ無理。藤田氏は入閣も検討されていたが『自民党が維新の数人を身体検査でダメ出しした』というウワサが党内で流れていました。これ、どうやら本当だったんだと思います」
維新の創設者、橋下徹氏もこれまで「敵」とみられていた赤旗を《ここは赤旗頼むで》《赤旗には徹底究明してほしい》とエールを送る。一方、藤田氏については《藤田氏側の会社を通す必要があるのか。実費ならば業者に直接払えば十分。会社が利益を得ていたならアウト》《実費を業者に直接支払えばいいだけ。自分側の会社を通して利益を上げていたなら公金をいくらでも私的な懐に入れることができる。公金マネロン》と手厳しい。
一般企業が損をしてまで仕事を請け負うことはありえず、リ社に利益はあったはず。連立入りして自民党化しつつある維新の、藤田氏はその象徴とも見えるだろう。早急に非を認め、進退を明確にすべきだ。















