首相演説ヤジ排除国賠訴訟、今秋にも証人尋問へ|原告側尋問対象は警官18人

一昨年7月に札幌市で起きた首相演説ヤジ排除事件で、排除被害者2人が北海道警察を訴えた国家賠償請求訴訟の8回目の口頭弁論が28日、札幌地方裁判所(廣瀬孝裁判長)で開かれ、早ければ本年9月にも証人尋問に至るスケジュールが示された。原告側はすでに4人の証人を申請しており、さらに現場の警察官全員の尋問を求める意向をあきらかにしている。

裁判を起こしたのは、参議院議員選挙期間中の一昨年7月、札幌を訪れていた安倍晋三・前首相に「安倍やめろ」などとヤジを飛ばして複数の警察官に排除された札幌市の大杉雅栄さん(33)と、同じく「増税反対」などと声を上げて排除された同市の桃井希生さん(25)。前回弁論までに排除の不当性・違法性を訴える主張を続けていた2人はこの日までに、自身と目撃者2人の計4人の証人尋問を申請、改めて法廷で証言に臨む意向をあきらかにした。

被告の道警はこれを受け、大杉さん・桃井さんそれぞれの排除に関わった警察官各2人・計4人の尋問を求める考えを示し、5月末までに証人申請するとした。裁判は6月中旬の次回弁論を経て、9月中旬に尋問期日が「仮押さえ」され、年度内にも一審判決が言い渡される見通しとなった。

原告代理人によると、当日の排除に関わった警察官は少なくとも18人。被告の道警が証人申請を4人に絞っていることから、残る14人については原告側から尋問を求めることになる可能性が高い。道警は当初から、排除行為の根拠として警察官職務執行法を引き合いに出しており、原告側は尋問で、当時の排除が同法の要件を満たしていなかった事実を示していくことになる。

衆人環視下でのあからさまな逮捕・監禁事件が起きてから、すでに1年9カ月。原告の大杉さんは弁論後の報告会で「思ったよりも長かった」とこれまでを振り返り、「一昨年のことをずっと考え続ける作業は、決して楽しいものではない」と、数々の珍主張で裁判を長引かせた道警を批判した。同じく桃井さんは「道警はずっと『喧嘩のおそれがあった』と言っているが、そんな『おそれ』で排除することがあってはいけない」と、改めて排除行為の違法性を訴えている。

原告側はこの日までに、支援者らと組織する「ヤジポイの会」公式サイトを開設、併せて裁判情報などを発信するメーリングリストの登録を募り始めた。それぞれのURLとメールアドレスは、以下の通り。

・「ヤジポイの会」サイト… https://yajipoi.wordpress.com/

・裁判情報メーリングリスト… yaji20190715☆gmail.com (配信希望の際は☆を@に換えて送信を)

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。
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