自民党「岸田ポスター」の波紋

裏金事件で岸田文雄政権と自民党が大きく揺れる中、岸田首相は8日、アメリカでバイデン大統領と会談するため出発。その直後、自民党議員の議員会館の部屋にポスターが配られた。

《経済再生 実感をあなたに。》というキャッチフレーズが入った岸田首相の顔を大写しにした自民党の新しいポスター。「このタイミングで支持率最低政権の顔を宣伝しろというのか」――聞こえてきたのは、困惑する自民党議員たちの声だった。

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ポスターには1枚のペーパーが同封されており、ハンターはそれも入手した。《新しい政治活動用ポスター「経済再生 実感をあなたに。」を制作致しました。見本として、各議員会館事務所に1枚、お送り致しますので、事務所内に貼付願います。なお、衆参選挙区・比例支部へは100枚をお送りしております》という文言。最後にこうも追記されていた。《このポスターは「政党の政治活動用ポスター」ですので、事前に貼付しておけば、選挙期間中でもそのまま掲示することが可能です》

岸田首相は14日に帰国する予定だ。16日からは全国3つの選挙区で衆議院の補選がスタートする。柿沢未途被告が逮捕された東京15区、裏金事件で略式起訴された谷川弥一氏の長崎3区は不戦敗。唯一、自民党の公認候補がいるのは島根1区のみとなった。

島根は細田博之元衆議院議長の死去に伴うもの。自民党は、中国財務局の元官僚、錦織功政氏を擁立したが、直近の情勢調査によれば立憲民主党の元職、亀井亜紀子氏に突き放され苦しい展開だある自民党県議が苦い表情でこう語る。
「細田氏の弔い合戦とあって楽勝と思っていた。だが、細田氏が裏金事件の安倍派、清和政策研究会の会長でもあったことに加え、セクハラ疑惑や統一教会との深い関係があったことで、世論は冷たく勝ち目は薄い」

東京15区では、東京都の小池百合子知事が特別顧問の「ファーストの会」が実質的に擁立した乙武洋匡氏を推薦する見込みだが、こちらも冷たい風が吹く。

「五体不満足の著作で知られる乙武氏を小池氏が応援すれば勝てると踏んでいた。しかし、スキャンダル持ちの乙武氏があまりに不評で、公明党もそっぽを向き始めた。本当に乙武氏でいくのだろうかと幹部も迷っている」(自民党の選対関係者)

長崎3区は不戦敗が確定。島根1区、東京15区と落とせば3連敗、立憲民主党が3連勝となり、野党が勢いを増す可能性もある。そうなれば、岸田首相は即座に退陣を迫られるとの見方もある。自民党の大臣経験者が次のように語る。
「岸田さんは、補選3連敗なら総理の座も危ないと考えており、旧統一教会の解散命令請求や裏金事件の厳しい処分などで支持率回復を図ろうとしてきた。得意の外交を生かそうと、アメリカ訪問でバイデン大統領との関係強化を演出し、支持率をあげる戦略を描いたが、今の情勢ではどう見ても支持率が上向く見込みなどない。9月の自民党総裁選まで持つかどうか……」

永田町では、通常国会が終了する6月23日あたりで解散し、衆議院選挙に持ち込むしか手がないという見方が大勢だ。前述のポスターとその案内については、「解散総選挙が近いですよという合図だ。わざわざ、今から貼って下さい、選挙になっても違反になりませんなんて但し書をするわけがない。仮に解散総選挙がすぐになくとも、岸田さんは『オレが解散権を握っている』と力を誇示できるという計算だろう。自民党だけじゃなく野党に対しても効果的かもしれない」(前出の大臣経験者)

立憲民主党は、3月に全国で解散総選挙を念頭に情勢調査を実施。その結果、現在の96議席から倍増する勢いであることが分かったという。その数字は、当然岸田首相の耳にも届いている。世論調査の数字に敏感なことで知られる岸田首相が、即座に反応したのはいうまでもない。

「向こう側の情勢調査の立憲民主党が200議席超という数字にはさすがに岸田首相もびっくりしていた。何か手を打ちたいと、裏金事件の処分が加速し、重くなったのは事実。ただ、まったく世論が岸田首相の思いに反応しない。それどころか世論は、岸田首相の処分なしに否定的、森喜朗を国会に呼べという厳しいものだ。総理にはもう打つ手がない」と自民党幹部は顔をしかめる。

一方、浮かれる立憲民主党は事務方から幹部にこんな耳打ちがあった。「情勢調査ではいい数字だったが、使った調査業者がよくなかったので真に受けないように」――つまり、これまで世論調査を依頼していた業者を変えて取った数字なので、あまりに立憲民主党優勢と強く出ていたため精査したところ、どうも信用性に欠けるというのだ。自らが調査した数字がアテにならないというのは、いかにも立憲民主党らしい。それに踊らされる岸田首相もしかり。日本の政治は根本的な再生が必要だ。

 

 

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