目玉なしの内閣改造・自民党人事で政権浮揚効果ゼロ|「ドリル優子」起用に批判の声

今月13日に行われた内閣改造と自民党人事の直後に報道各社が緊急世論調査を実施。岸田文雄首相にとっては、頭の痛い数字が並んだ。

【毎日新聞】
・支持 26%(-1)
・不支持 68%(0)

【朝日新聞】
・支持 37%(+4)
・不支持 53%(-1)

【フジ産経】
・支持  38.9%(-2.6)
・不支持 56.1%(+2.6)

【日経・テレビ東京】
・支持   42% (0)
・不支持 50% (+1)

【読売新聞】
・支持  35%(0)
・不支持 50%(0)

【共同通信】
・支持  39・8%(+6・2)
・不支持 39・7%(-10・3)

 ◇   ◇   ◇

 共同通信と朝日新聞だけが上昇したものの、日経新聞・テレビ東京と読売新聞は横ばい、毎日とフジ産経は下落である。共同以外のすべての調査で、不支持が支持を大きく上回っている。今回の人事に、政権浮揚効果はなかったということだ。ある自民党幹部が打ち明ける。
「内閣改造をすれば普通は支持率がアップする。岸田総理は、それを見ながら解散総選挙に打って出ることを考えていたはず。横ばい、もしくは不支持が増えそうな空気感さえある中で、早期の解散総選挙は難しくなった」

 この幹部によれば、「総理は世論調査の数字のチェックが大好き。よく秘書官らに一覧表を作成させて、時間が空くとみています。各社の数字をみて『ふぅー』とため息をついていたそうです。期待外れだったのでしょう」

 党役員人事では、茂木敏充幹事長、萩生田光一政調会長が留任。森山裕総務会長が選対委員長から横滑り。小渕優子選対委員長が抜擢された。茂木氏は外相か財務相かで入閣、萩生田氏は官房長官もしくは幹事長という声もあっただけに、肩透かしを食らった感じだ。

 「今回の党役員人事は、岸田首相の“聞く力”が発揮された結果ではないか」と麻生派の国会議員は指摘する。岸田首相は、党役員人事について麻生太郎副総裁と萩生田氏、そして森喜朗元首相にまで相談。そうそうに茂木、萩生田、森山、小渕各氏のポストを決めた。記者の間でまわっている「メモ」には《萩生田氏だけは1日で2度も会談》、《茂木氏が入閣の場合について、萩生田氏を幹事長にと相談。そうなった時に派閥内はどうかと確認》などと記されている。つまり、岸田首相が独自で検討したものではなく、重鎮の麻生氏、最大派閥・安倍派の有力者である萩生田氏、政界を引退したはずの森元首相らの声が強く反映した人事だったということだ。他は、知名度不足の小粒ばかり。これで支持率が上昇するわけがない。

 一番酷かったのが、就任記者会見で目を潤ませながら古傷について述べた小渕氏。9年前に「政治とカネ」の問題で経産相を辞任に追い込まれた小渕氏の愛称は「ドリル優子」である。2015年12月、小渕氏の政治団体が政治資金報告書に虚偽記載をして立件された政治資金規正法違反事件で東京地検特捜部は小渕氏の地元の事務所などを家宅捜索したが、その際、パソコンのハードディスクがドリルで穴をあけられた状態で発見された。

 その後、特捜部の捜査で小渕氏の政治団体などが約3億2千万円に上る虚偽記載や不記載をしていたことが判明。小渕氏の当時の秘書は有罪判決を受けた。小渕氏は独自に「第三者委員会」を設置し調査を依頼したが、問題の「ハードディスクにドリルで穴」については「パソコンが故障し、業者に処理を依頼。ドリルは業者が穴を開けた」、「ハードディスクのデータは別に保存してあった」と釈明していた。特捜部は証拠隠滅も視野に捜査したが、その問題での立件は見送っている。

 しかし、当時の捜査関係者は「バックアップがあっても最初に保存したデータは作成時期、経緯などを特定するために最も大事なもの。業者が穴をあけたというが、それは週刊新潮が事件をスクープ報道した後。不自然だった」と振り返る。以来、永田町だけではなくネット上でも「ドリル優子」の呼称は消えていない。

 小渕氏の地元の市議は苦笑まじりにこう話す。
「小渕さんのお父さんである恵三元首相の名前はいまだに有名です。ですが、優子さんの名前はさほどでもない。一方で、『ドリル優子』はすっかり定着しています。若い世代になると、さすがに優子さんととドリル優子が一致しないようですが、裏を返せば、人気がないということ。ドリル優子と聞いて、かつての事件を知らない若者の中には『ドリル?算数の先生ですか?』などと、的外れな答えをする人もいます」

 辛口コメントの背景には、地元入りが極めて少ないという小渕氏の姿勢に対する批判があり、同市議は「ドリル問題についても説明がまったく足りていない」と憤る。

 「ドリル優子」について記者会見で聞かれた小渕氏は、「私自身は誠意を持って、ご説明をさせていただいてまいりました」「政治家として私が歩みを進めていく中で、心に反省を持ち、決して忘れることない傷として進めてまいりたいと思います」と涙声で述べた。だが、当時の新聞記事を見ても、小渕氏は「秘書に任せていました」「報告書はパラパラめくってみていた」と、他人事のような発言の繰り返し。昔も今も、説明責任を果たそうという意思はないらしい。

 案の定、「9年前のことで泣いていたんじゃ、とても選対委員長なんて務まらない」(中堅議員)、「森山先生に比べると、実力を人望も皆無に等しい。岸田首相は、別のポジションにすべきだった」(若手議員)、「解散総選挙が近いとされ、選対委員長がこの人で大丈夫なのか!」(ベテラン議員)と自民党の中からは不安の声があがっている。

 だが、岸田首相の頭の中にはドリル優子問題への不安など少しもなく、ただただ茂木氏の動向だけが気になっているのだだという。

 来年秋の自民党総裁選で、岸田首相の対抗馬になることが確実視される茂木氏。前出の自民党幹部が次のように解説する。
「茂木幹事長も小渕さんも茂木派です。茂木幹事長は会長なので、自身がやるぞと声をあげれば派閥あげての支援になる。しかし、茂木さんは上から目線で人望がなく、態度が悪いことで知られます。お父さん同様に、腰の低い小渕さんを女性初の首相にという人は少なくありません。茂木派から2人も党4役に起用したのは、小渕さんを使ってての茂木幹事長へのけん制ですよ。ただSNSを見ればドリル優子がトレンドにあがっており、お祭り状態。正直、若い世代の支持率は下がる一方だと思いますね」

 茂木氏の増長を抑えようとして小渕氏を起用したのはいいが、その人事が支持率低下を招いた格好となっている。

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