福岡県大任町・永原独裁町政の入札不正に新証言|指示役は3人、ひとりには別の疑惑も

 永原譲二町長による独裁的な町政運営が続いてきた福岡県大任町で行われてきた「不正入札」。5選を目指した福岡県町村会の会長選挙に敗れるなど「最凶の権力者」の影響力低下が顕著となる中、これまで、永原氏側から「仕事」をもらってきた業者が、重い口を開きだした。あらたに分かった入札不正の実行役とは・・・。

■不正入札、新たな「指示役」が判明

 これまで報じてきたとおり、大任町発注の公共工事は、建設資材どころかスコップの1本さえ保有していない八つのペーパー業者や永原町長の側近業者がほとんどを受注。地域活動を隠れ蓑にする談合組織「田川政策研究会」の会員に対しては、町長側近の元暴力団組員などが連絡役として睨みを利かせていた。

 新たに不正入札についての証言をしたのは、田川政策研究会の会員として町の発注工事を請け負ってきたという複数の人物。その内容は、今月6日に配信した[【福岡県大任町・永原町政の闇】不正入札の実態明らかに|複数業者が証言」の内容を補強すると同時に、より詳しく不正入札の指示役や手法を明かすものだった。

 不正入札の指示役として判明していたのは、指定暴力団「太州会」の元組員で、1996年に永原町長が設立した建設資材の企業組合「九州環境企業組合」の工場長を務めていた「藤吉俊数」という町長の側近。はじめにハンターの取材に答えた業者は、藤吉氏から「今度は、おたくだ」あるいは「今度は、おたくになったから」などと連絡を受け、自分ではじき出した金額を入札書に記入し、その写しを持って他の指名業者を回っていた。入札参加業者は田川政策研究会のメンバーばかりで、入札実施日には落札予定業者より高い金額で応札。藤吉氏から落札のお墨付きを得た業者が、落札するという仕組みだった。

 今回、取材に応じた複数の人物によれば、時期や案件によって指示役が変わることがあったとしており、それぞれが、藤吉氏とは別に“永原太”と“町長の弟”を「指示役だった」と証言している。明言を避けているが、指示役から連絡が来た時の会話記録が残されている可能性がある。

 永原太氏は町長の親族で、「全日本同和会」の地元組織委員長。個人事業主(いわゆる「一人親方」)として「信栄建設」を名乗り大任町の発注工事を多数請負ってきた人物だ。田川政策研究会の会員が年会費48,000円を渡していたのも永原太氏だった。

 落札までのおよその経緯は前稿に記したが、今回、さらに細かい部分まで説明を聞くことができた。複数の業者の話を総合すると次のようになる。

・早朝、「きょう現説がある。今度はおたく」という連絡が永原太氏や藤吉俊数氏から入る。

・その後、町役場の担当課から正式に「現説があります。○○時から○○時までの間に役場に来て下さい」と知らせが来る。

・役場に出向いて「仕様書」を受け取り、所定の書類に受け取りのサインをする。現在は報道されないよう仕組みが変わっているかもしれないが、2~3年前までは、役場の書類に指名された業者が記載されており、自社のチェック欄に印をつけた上で、サインするように決められていた。その段階で入札参加業者が分かるので、書き写す。

入札の2~3日前の時点で、見積りしてはじき出した金額を入札書に記入し、封筒にその写しを入れて他の入札参加業者を1社ずつ回り、「よろしくお願いします」などと挨拶し、封筒を渡す。

・入札日、金額が記された入札書の写しを渡されていた業者は、それより高い金額で応札。町長側からのお墨付きをもらった業者が自動的に落札者となる。

・永原譲二が町長になって数年は、予定価格も指名業者も非公表だったが、その頃は予定価格と指名業者を、主として永原太が「指示役」として連絡してきていた。警察を恐れたのか、ある時期から「これはまずい」ということになって、入札の仕組みが変わった。

・指示役は、最初の時期が永原太氏、次が藤吉俊数氏、その後を町長の弟が務めていた。ここ2年ほど、町長の弟の動きはない。案件によっては、時期に関係なく永原太氏か藤吉氏のどちらかが指示役だった。

・落札する場合、工事の下請けに町長の側近の業者を使うよう指示されることが多かった。

■同和会の地元組織巡り別の疑惑も

 町長の代理人として不正入札に関わってきたのは、主に永原太氏と藤吉俊数氏。特に永原太氏は、大任町の暗部を検証する上でのキーマンだとみられている。

 同氏の「信栄建設」は、建設資材・機材のみならず作業員もいない一人親方のペーパー業者だが、県に提出された工事経歴書で確認しただけでも、平成28年から令和2年までの5年間で14件・約4億以上の工事を受注していたことが分かっている。八つのペーパー業者の中では断トツの受注高。町長の親族として、特別待遇を与えられているのは確かだ。(*下の表、参照)

 ちなみに永原太氏が委員長を務める全日本同和会の地元組織は、大任町から、何の名目か明らかにされていない年間400万円ほどの金額を受け取っており、その経理が不透明であることから私的流用が疑われる状況だという。

 これを問題視した同町の町議が何度も議会で追及し、情報公開を求めてきたが、永原執行部は関連文書の開示を拒否。さらに、誰のさしがねか、今年3月にたまたま逮捕された指定暴力団「太州会」幹部の事件を利用し、その幹部と町議が結託して脅したとする話をでっち上げ県警を動かすなど、永原氏側は悪事の隠蔽になりふり構わぬ姿勢を示している。

 福岡県警は、汚れた権力にいつまでも寄り添うほど愚かではあるまい。解明されるべきは、永原譲二町長が主導してきたペーパー業者を使った町発注工事の闇だ。

 

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