今年4月の田川市議会議員選挙で6選を果たし、5月の臨時議会で議長に就任した陸田孝則氏(73)の選挙運動費用収支報告書に、公職選挙法違反の疑いが浮上した。
報告書には、複合機や机などを田川市の指名業者である電気工事業者「リクデン」の代表者個人から無償提供(=寄附)されたものとして記載。しかし、複合機や机はリクデンの所有物で、同社の代表者も事実関係を認めている。
リクデンと市の間には請負契約が存在しており、2件の無償提供が同社からのものと認められれば、それは公職選挙法が禁じる「特定寄附」。法の網を潜るため、陸田陣営が「虚偽記載」を行った可能性さえある。
■リクデン代表者から総額62万4千円相当の寄附
田川市選挙管理委員会に提出された陸田議長の選挙運動費用収支報告書によれば、議長は今年2月5日から4月23日にかけて、リクデンの代表者から複写機1台を無償提供され、これを金銭換算で312,000円分として収入に計上。同時期に机3台、椅子3脚をはやり無償提供されたとして312,000円を収入に計上していた。(*下が陸田氏の収支報告書)
株式会社リクデンは、1990年創業の電気工事業者。半数近くの株を陸田議長が保有しており、代表者の陸田和子氏は身内である。田川市の指名業者になっており、確認したところ、2022年10月から今年の2月末までの工期で、22年7月から今年3月末までの工期でそれぞれ1件の工事を請負っていた。
公職選挙法は、「衆議院議員及び参議院議員の選挙に関しては国と、地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に関しては当該地方公共団体と、請負その他特別の利益を伴う契約の当事者である者は、当該選挙に関し、寄附をしてはならない」(第199条:特定の寄附の禁止)と定めており、リクデン側からの2件の寄附は、この規定に抵触する可能性がある。
■「個人やけん」とうそぶく議長
リクデン側からの物品提供は、違法な特定寄附にあたるのではないか――。先月22日、田川市議会の議長室に陸田氏を訪ねて見解を求めたが、「個人(の寄附)やけん」を繰り返すばかりで、反省の言葉はなかった。ただし、陸田氏の主張は、とっくに破綻していた。
議長室でのやり取りの10日前、ハンターの記者はリクデンの代表者を自宅に訪問。無償提供した複写機などが会社のものかどうかの確認を求めていた。
記者:複写機はリクデンのものですね?
代表者:はい。そうですよ。記者:机や椅子も?
代表者:まあ、そうですね。
何度も問い質されたことで訝しがった代表者は、「会社に確認する」としていたが、今日まで何の連格もない。
仮に寄附が個人からものであったにせよ、寄附したのはリクデンの代表取締役。会社側から寄附を受けたことに変わりはない。
ちなみに、公選法が禁じる特定寄附を巡っては、以下の事案が立件されており(事案の内容は、警察庁ホームページなどより)、有罪なら3年以下の禁錮又は50万円以下の罰金。報告書に虚偽の記載を行った場合も、同じく3年以下の禁錮又は50万円以下の罰金となる。
- 平成15年、沖縄県警が、市内の建設業者5社から選挙運動資金として、自己が代表を務める後援会に対し小切手(額面合計400万円)及び現金100万円の寄附を受けるとともに、市長選挙に関し、市と請負契約関係等にある建設会社4社から寄附を受けていたとして政治資金規正法違反及び公職選挙法違反(特定の寄附の禁止)で当時の宜野湾市長を検挙。
- 平成15年、神奈川県警が、横浜市議会議員選挙に関し、市と請負契約関係にある建設会社2社の役員らから現金合計100万円の寄附を受けたとして、当時の横浜市議を公職選挙法違反(特定の寄附の禁止)で検挙。
- 平成14年、佐賀県警が、佐賀県議会議員選挙に関し、県との請負契約関係にある建設会社2社の代表取締役らから現金合計80万円の寄附を受けたほか、当該選挙に当選後、会社等の団体から政党及び政治資金団体並びに資金管理団体以外の者に対する政治活動に関する寄附は禁止されているにもかかわらず、土木建築会社2社から現金100万円の寄附を受けたとして、当時の佐賀県議を公職選挙法違反(特定の寄附の禁止違反)で検挙。