辺野古新基地建設の是非が争点の一つとなった沖縄県名護市の市長選挙で、基地容認派の現職・渡具知武豊氏(60)=自民、公明推薦=が、新基地反対を掲げた新人で元市議の岸本洋平(49)=立民、共産、社民、社大、新しい風・にぬふぁぶし、れいわ新選組推薦=を破って再選を果たした。
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米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対する「オール沖縄」が推した岸本氏は、名護市長を二期務めた故・岸本建男氏の長男。早稲田大学大学院修了後、サミット事務局勤務などを経て2006年に名護市議に当選。4期目だった昨年8月に、市長選出馬を正式表明していた。
米軍基地由来とみられる新型コロナウイルスのオミクロン株が蔓延する中での選挙戦は、4年前から大きく様変わりした。
前回、県外から大勢の基地反対派が駆けつけたオール沖縄の岸本陣営は、地元の支援者らで固めた地道な街頭活動中心の選挙。
一方、コロナ禍で大物政治家の来援が見込めなくなった現職・渡具知氏の陣営は、前回選挙で支援を受けた人気者の小泉進次郎衆院議員と渡具知氏の顔写真をプリントしたのぼり旗を制作するという苦肉の策で対応。建設をはじめとする各業界に対する強烈な締め付けで票固めし、集会では大量動員された作業着姿の参加者が目立っていた。
告示前から競り合いの状況が続いていたが、沖縄の選挙で勝敗の行方を決めると言われる「三日攻防」(選挙戦の最後の3日間の戦い)に入るあたりから自民、公明の組織がフル回転。渡具知氏が、現職の強みを生かした戦いぶりで激戦を制した。
新基地反対を明確に打ち出した岸本氏に対し、渡具知氏は基地問題には一切触れず、給食や保育料の無償化継続などを訴えるという前回同様の争点隠しに終始。名護市民は、カネと力で基地建設を強行する政府と一体の渡具知氏に、市の未来を託したことになる。
当日有権者数は4万9,959人で投票率68.32%。