裁判所不祥事、23年は前年比激減の5件|判事の処分記録は例年通り“のり弁”

 全国の裁判所で昨年1年間に処分のあった不祥事が少なくとも5件に上ることが、最高裁への情報開示請求でわかった。ちょうど1年前の本サイト記事で伝えた通り、前年の2022年は19件の処分・措置が確認されていたところで、同年と単純に比較して昨年は7割以上の処分減を記録したことになる。事案の概要が明かされたのは書記官など事務方の不祥事のみで、毎年例外なく事実上不開示となっている裁判官の非違事案は今回も開示されなかった。

◆   ◆   ◆

 筆者が最高裁判所に対して毎年恒例の開示請求(司法行政文書開示申出)を行なったのは、本年2月3日。求めたのは、昨年1年間に全国の裁判所で記録された懲戒処分と監督上の措置(懲戒に到らない軽微な制裁)各件の概要がわかる公文書、及びそれらの報道発表の有無がわかる公文書だ。請求を受理した最高裁は、1度の開示延長を挿んで4月8日付で一部開示決定に到り、5月7日までに当該文書の写しを交付した。

 開示の対象となったのは、上に挙げた文書のうち「懲戒処分」の記録のみ。監督上の措置の記録は「作成又は取得していない」との理由で不開示となり、各不祥事の報道発表の有無がわかる文書については「廃棄済み」との理由で不開示となった。この説明を額面通り受け取るならば、2023年に監督上の措置(注意、訓戒)となった職員は全国の裁判所に一人もいなかったことになるが、現実的には考えにくいことだ。

 一部開示された『処分説明書』などを紐解くと、すでに述べた通り昨年1年間の懲戒処分は少なくとも5件に上ったことがわかる。各件の概要をできるだけ文書に忠実に記しておくと、以下のようになる。

1)2月2日付「減給10分の1・1カ月」…横浜地裁書記官
・2021年1月、勾留質問に立ち会った際、被疑者に「いい気になるな」「返り討ちにしてやる」などの発言を繰り返した。
・2022年9月、勾留状についていずれかの関係者から問い合わせを受けた際「ばか」と言って電話を切った。

2)2月8日付「免職」…東京地裁書記官
・2022年9月から同年11月までの間、正当な理由なくのべ39日間欠勤した。

3)処分日不詳・処分内容不詳…東京家裁関係者

4)3月16日付「停職6カ月」…高松高裁会計課長
・2023年1月、高松市内を走行中の琴平電鉄車内で、女子高校生など2人のスカート内をスマートフォンで盗撮した。

5)6月16日付「停職1カ月」…東京地裁書記官
・2018年1月ごろ、担当していた事件の確定記録を誤って自宅に持ち帰った。
・同年2月か3月ごろ、上の記録を職場に持参したが、約3年間にわたって自身のロッカー内に隠し、適宜取り出しては机に載せて処理中のように装い続けた。
・2021年3月下旬ごろ、上の記録の引き継ぎをしていないにもかかわらず、システム内に虚偽の引継日を入力した。
・同月または4月、上の記録を再び自宅に持ち帰り、約1年7カ月間にわたって隠し続けた。

 

 以上の内訳の通り、処分の具体的な内容があきらかにされたのは5件中4件で、残る1件(事案3)は処分内容も含めて一切開示されなかった。昨年以前の対応から推認すると、この1件は事務方ならぬ裁判官による不祥事だった可能性が高い。

 総数が激減した理由は定かでない。繰り返しになるがそもそも昨年に限って監督上の措置が一件もなかったとは考えにくく、最高裁が何らかの事情で同記録を「作成又は取得」しなくなったことが考えられるが、それを確認する手段は事実上ないと言ってよい。不祥事の「発表の有無」がわかる文書を1年以内に「廃棄」する根拠もわからない。

 一連の対応からは、「開かれた裁判所」の在り方に逆行する司法の姿が浮き彫りとなった。今回の文書開示は4月上旬に決定し、同下旬には請求人の筆者が開示手数料を納付していたにもかかわらず、最高裁は2週間以上にわたってこれを放置、電話での催促を経て大型連休後の5月7日にようやく写しの交付に到った。この時点で開示決定から1カ月が過ぎたことになり、もはや裁判所が自ら定める開示期限の設定さえもが形骸化していることがわかる。

 開かれた裁判所は、なお遠い。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

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