公園整備事業に関する情報公開請求に対し、存在を認めた土地買収の決裁文書や売買契約書を開示実施日になって「不存在」扱いにした福岡県八女市が、今度は「ない」としていた別の土地に関する文書を、実際には保有していたことが明らかとなった。相次ぐ隠ぺい工作の手口は、すぐに見破られる幼稚なものばかり。事業の全体像を調べる中で、八女市が本当に隠したかったのが、今回明らかになった土地買収の件であることが分かってきた。
■幼稚な隠蔽
疑惑が持たれているのは、同市を流れる矢部川沿いに計画される公園整備事業。公園整備に利用される土地の売買契約書や用地買収を決めた際の決裁文書を開示請求したところ、「ある」と認めていた文書を開示日になって「不存在」と言い出したため、同市に対し厳しく抗議していた。
「不存在」を主張するため八女市が持ち出したのは、対象となる土地が編入合併前の立花町が購入した土地で、八女市が購入したものではないという“屁理屈”。八女市は2006年に上陽町を編入し、2010年に黒木町、立花町、星野村、矢部村を編入合併して現在の市域を確定させたため、旧立花町が行った土地買収は八女市とは関係がないというわけだ。
しかし、そうなると編入された黒木、立花、星野、矢部、上陽といった自治体が行った行政行為の証拠書類は、永久に開示請求できないことになる。世間では通用しない主張であることが、子供でも分かるお粗末な隠蔽だった。
■実はあった、市が「ない」と断言の土地買収
結局、八女市側が非を認め、改めて関連文書が開示されることになったが、ここでハンターの記者が何度も確認したのは「本事業に利用する土地で、八女市が買収した土地があるのではないか」という点。これに対し市側は「ありません」と断言。「公園用地としては」と前提条件を付けようとしたため、“公園整備事業に関係する土地、ということ。公園用地だけではなく、取り付け道路や駐車場用地も含むということだ”と念押ししていた。
実は、ハンターの記者が調査の過程でつかんでいた土地の所有者は「八女市」。しかも、合併後に買収した土地だった。下は、八女市が開示した関連文書の中の設計図書の一部だが、黒い斜線が「公園整備事業」に充てられる土地で、そのうちの赤い囲みと斜線で示した部分が問題の「八女市が買収した土地」である。
該当する土地の登記簿は、法務局に行けば誰でも入手可能だ。八女市が、いつ元の所有者から買収したのか、当然記載がある。下が、2015年(平成27年)から16年(平成28年)にかけて、八女市が買収した6筆のうちの最も面積が広い土地の登記簿。市側が「ない」と断言したものは、やはり存在していた。
今週にも予定される二度目の文書開示を前に八女市が連絡してきたのは、同市が買収しておきながら、ハンターに「ない」としてきた土地に関する文書の開示実施補法。契約書や決裁文書などが開示されるものとみられるが、担当課は「元の所有者の名前と住所を非開示にする」という。上掲の登記簿は誰でも入手可能で、市が非開示にするという元の所有者の氏名や住所は、公開されているも同然だ。必死に何かを隠そうとする姿勢は、異常というしかない。
背景を探る中で分かってきたのは、問題の土地が、“事件絡み”の物件だという事実だった。八女市の三田村統之市長周辺が本当に隠したいのは、この土地を取得した経緯と今回の公園整備事業との繋がりである可能性が高い。
(以下、次稿)