【2024総選挙】裏金議員を待ち受ける厳しい選挙戦

10月27日に投開票が予定される総選挙。自民党は、裏金事件で不記載があった現職の衆議院議員6人を「非公認」。その6人を含む、最大で49人の候補者に「比例名簿登載なし」という方針を決めた。「まさか、こんな対応をするとは青天の霹靂。いったい、どういうことなんだ」と怒りを露わにするのは旧安倍派の裏金議員A氏だ。

石破茂首相は、総裁選で「非公認」の可能性を示唆するも、総理就任後は裏金議員の「原則公認」へと傾いた。それが一転して、事実上の裏金議員切り。わずか数日の間に何があったのか――。

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きっかけとなったのは、自民党が10月はじめに実施した世論調査だった。最初に結果を手にしたのは小泉進次郎選対委員長と森山裕幹事長。それをたたき台にして、石破首相と相談をしたという。

「細かな数字はわかりませんが、自民党の単独過半数にはまったく届かずという内容でした。とりわけ、首都圏や関西圏の数字が悪く、このまま解散総選挙に突入すれば惨敗し、石破政権が揺らぎかねないとなった。石破総理は小泉(進次郎)選対委員長と森山裕幹事長に相談し、世論の支持を回復させるため、裏金議員への対応策をいくつか出してもらった。その結果、最も厳しい案でいくことを石破総理ご自身が決断したのです」(自民党幹部)

まず最初に「非公認」が決まったのは6人。党員資格停止1年の処分を受けている西村康稔元経産相、下村博文元政調会長、党員資格停止6か月の高木毅元国対委員長、政治倫理審査会への出席を拒んだ党役職停止中の萩生田光一元政調会長、平沢勝栄元復興相、三ツ林裕巳衆議院議員だった。

自民党はさらに、地元での理解を得ていないとして中根一幸元外務副大臣、菅家一郎元復興副大臣、小田原潔元外務副大臣、細田健一元経済産業副大臣、越智隆雄元内閣府副大臣、今村洋史元衆院議員の6人を追加で非公認に。越智氏は、処分決定前に引退を表明していた。

西村氏と下村氏は年内に解散総選挙となれば「無所属」で戦うことを地元で公言していた。だが、他の非公認組は自民党からの出馬が前提になっていたので、ダメージが大きくなる。非公認の場合、政見放送に出演ができない、自民党から選挙資金がもらえない、連立与党の公明党からも応援がもらえないなど、公認と非公認では天と地ほどの差がある。

処分はこれだけでは済まず、この11人を含めて戒告や注意の処分を受けた裏金議員は「比例名簿登載なし」となった。石破首相は記者団に問われ「派閥の政治資金パーティーを巡る不記載があった議員についても、比例名簿への搭載はしないこととし、候補者が選挙区において説明責任を果たし、退路を断って有権者の審判に当落を委ねることとする」と説明した。裏金議員53人のうち32人の公認は認められたが、比例単独で議席を得ていた杉田水脈(比例中国)、尾身朝子氏(比例北関東)、上杉謙太郎氏(比例東北)の3人は、出馬断念となった。

「比例名簿に登載されないと、復活当選の“保険”がなくなる。小選挙区で勝ちあがれということ。一度党から処分を受けているのに、解散総選挙直前に2度目の処分。しかも処分されたのはほとんど安倍派で二階派が数人。完全に安倍派潰しだ。こうなりゃ『石破おろし』だ」と息巻く。しかし、石破おろしをやるにしても当選しなければただの遠吠え。非公認や比例名簿登載なし組には厳しい選挙戦が待っている。

こうした中、前回の総選挙で比例復活当選だった東京6区の越智隆雄衆議院議員は、前述したようにいち早く「不出馬」を表明。また、参議院議員から東京7区にくら替えする丸川珠代元五輪担当相は、夫の大塚拓衆議院議員(埼玉9区)ともども、比例名簿登載なしで戦うことを余儀なくされる。

また、前回総選挙で維新の牙城である大阪において比例復活した宗清皇一、谷川とむ両衆議院議員、中山泰秀元衆議院議員と選挙区支部長の加納陽之介氏が比例名簿搭登載なしで立候補する予定だ。

「維新の人気にかげりが出ているが、大阪ではまだ強い。比例名簿登載がないとほぼ絶望でしょうね」(自民党の大阪府議)

解散総選挙直前というタイミングで「裏金議員切り」に転じた石破首相。総裁選で石破首相を支援したある議員はこう話す。

「自民党への不信感を招いた原因は、政治とカネの問題です。解散総選挙に勝つには、しっかりと対応しましたという姿勢が必要でした。石破総理には、支持率の回復という第一の命題があり、次に旧安倍派を中心とした裏金議員から政権運営を邪魔されたくないという思いもあったはずです。処分に文句を言っている議員を見ていると、比例復活の保険がないと危ない選挙区の議員ばかりでしょう。反省がない証拠ですよね」

しびれる展開になってきた総選挙。裏金議員が一掃されることを願う。

 

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