約束を守らない、平気でウソをつく、人をばかにする、自分のことしか考えない――政治家のそうした振る舞いが、この国に深刻な政治不信を招いた。不祥事がバレても謝らずに開き直るのが最近の政治家の常。「往生際」の悪さが、政治不信に拍車をかける。

かつて作家の司馬遼太郎は「名こそ惜しけれ」という武士道の精神こそが、世界に通用する価値観であると説いた。旧5,000円札の肖像で知られる新渡戸稲造は、著書『武士道』で武家社会における倫理観や道徳観のすばらしさを世界に紹介した。両者の思想の根底にあるのは「恥を知る」ことの大切さ。当然、往生際の悪い人間=恥知らずな人間は称賛の対象から外れる。選ぶ側の責任もあるのだが、往生際の悪い政治家が増え過ぎた。

■見苦しい維新・藤田共同代表の態度

公明党に代わって自民党と連立を組んだ「日本維新の会」をスキャンダルが直撃した。爆弾を落としたのは共産党の機関紙「赤旗」。同党の藤田文武共同代表が、公設秘書の会社に、税金を原資とする政治資金から印刷代などの名目で約2,000万円を支払っていたという内容だ。秘書には当該企業から給料が出ており、「公金還流疑惑」として問題が大きくなった。

藤田氏の失敗は、説明会見で冷静さを失い、逆ギレしたことだ。「どこから切り取っても適正」「デザイン業務なめ過ぎ」などと身勝手な主張を展開し、語気荒く「赤旗は共産党の機関紙」などと不正否定の根拠にもならないたわごとを並べて自己弁護に終始した。疑惑報道直後には赤旗の記者の名刺をネット上で晒すなど見せしめとしか思えない行動に出ており、維新支持者からも「信用できない言い訳」「情けない」「もう支持しない」といった声が上がる状況だ。

事を荒立てたのは攻撃的な言動で身の潔白を証明しようとした藤田氏自身。もともと、「公金還流」と指摘されるようなマネをしてきたのは藤田氏なのだから、素直に謝るべきだった。「申し訳なかった。二度とこのようなことはしない」と低姿勢に徹していれば、ここまで大きな問題にはならなかったはず。切所の越え方を間違えたということだ。

政治家の価値は、厳しい批判に対して真摯に向き合うか否かで決るもの。つまりは、「往生際」の問題である。そうした意味で、藤田氏の態度は政治家としてはもちろん、人として最低。「身を切る改革」が聞いて呆れる。

■伊東市、前橋市、南城市の混乱

政治家の往生際の悪さが全国ニュースになっている例は他にも。実際には大学を「除籍」になっていたのに、有権者に向けて「卒業」という虚偽情報を流したとされる静岡県伊東市の田久保真紀前市長と、妻子のある部下とラブホテルで何度も密会していたことが発覚し、渦中の人となった群馬県前橋市の小川晶市長である。

報道によれば、地元市議らに卒業証書を見せたという時間は、わずか19.2秒。「卒業証書19.2秒」が2025年の新語・流行語大賞にノミネートされるほどの騒ぎだ。「除籍」を認めている以上、市議らに見せた卒業証書は、どのようないきさつで作成されたものであれ偽物。議会で不信任決議を受けた時点で市民に謝罪し、即刻辞任するのが筋だったにもかかわらず、同氏は市議会を解散するという非常識な道を選択して世間を呆れさせた。市議選の結果は大方の予想通りで、不信任に賛成した議員のほとんどが当選。市議選後、田久保氏は二度目の不信任で職を解かれている。

普通ならここで市政から退場するものだが、同氏は再び往生際の悪さを発揮。12月14日投開票予定の出直し市長選に出馬する意向を示しているという。不正に正面から向き合おうとせず、市議選と市長選という公費支出を伴う事態を二度にわたって招いたのは田久保氏自身。自身が犯した不正の責任を負おうともせず、納税者を無視する元市長の暴走――。「恥知らず」の行為に迷惑を被っている伊東市民はたまったものではあるまい。田久保氏は、市長選出馬の際に虚偽の事実を公表して票を得たとして公職選挙法違反容疑で刑事告発されており、捜査の行方次第で処罰される可能性がある。

群馬県の県庁所在地である前橋市の市長も、世間の常識から外れた人物だと言えそうだ。妻帯者の部下に個人的な相談をしていたという場所はラブホテル。それも10回以上とされるから驚きだ。小川氏は「男女の関係はなかった」と主張しているが、それを信じる人は少ないだろう。小川氏は弁護士でもある。ラブホテルに通っていた男女の関係についての自身の言い分が、合理的なものである否かの判断はできるはずだ。あっさり不倫を認めて謝罪していればまだ潔いと見られていた可能性もあるが、事実関係で争うというのであれば話は別。同氏の往生際の悪さが市政に混乱を招く結果となっている。

この2例とは別に、沖縄の南城市でも部下へのセクハラで不信任を受けた古謝景春市長が市議会を解散。9日に行われた市議選では20名の定員に18名の不信任賛成派が当選しており、決議案再可決によって市長が失職する見通し。その場合、古謝氏が再出馬する可能性もあるという。この人も、往生際が悪すぎる。

■最悪は裏金問題の自民党

維新の藤田氏、伊藤市の田久保氏、前橋市の小川氏、南城市の古謝氏――。いずれも自らの不祥事と真摯に向き合おうとせず、不合理な説明に終始して保身を図ろうとする点で共通する。しかし、この人たちと同様かあるいはそれ以上の往生際の悪さで政治不信を増大させたのは、裏金をもらっていた自民党旧安倍派の国会議員たちだろう。

秘書や派閥に裏金問題の責任を押し付け、「私は知らなかった」などととぼける政治家を、誰が信用するというのか。昨年の総選挙と今年行われた参院選での自民党の惨敗が不信の表れであり、反動で極右あるいはカルトとおぼしき政党が議席を得るという最悪の事態を招いている。一番往生際が悪いのは、裏金議員を「みそぎは済んだ」として政府や党の役職に就けた高市早苗総裁が率いる自民党なのかもしれない。

(中願寺純則)

 

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