「合意があった」でわいせつ行為擁護の医師会長|鹿児島県医師会に問われる規範意識(2)

 新型コロナウイルス感染者の療養施設として鹿児島県が提供したホテルなどで、昨年8月から9月にかけ、県医師会から派遣された男性職員が女性スタッフに不適切な性的行為をしていたことが発覚した。決して容認できない患者そっちのけのハレンチ行為であり、医師会の管理責任が問われて当然の事態だが、2月の事件発覚から今日に至るまで県医師会は沈黙したまま。県民に対する組織としての謝罪はなく、今後の方針も示されていない。

 動きの鈍さに疑問を抱いて取材したところ、医師会上層部に、謝罪どころか議論のすり替えを行って責任問題をうやむやにしようという動きがあることが明らかになった。

■県医師会長―「合意」主張し責任認めず

 8日の配信記事で述べた通り、この件の最大の問題は、県民の生命を守るため税金を投入して新型コロナ感染者を療養させるという重要なミッションの現場で、医師会の職員が、業務期間中に性的行為を行っていたということ。コロナ患者が不安の中で過ごしていた療養施設の中で、こともあろうに医療関係者が、性的行為に精を出していたというのだから開いた口が塞がらない。民間企業なら即刻クビ。県から施設運営を任され県医師会に、監督責任があるのは当然だろう。

 しかし、取材の結果、県医師会の上層部には責任意識も、規範意識もないことが分かってきている。記者はまず県医師会トップの池田琢哉に電話取材したが、信じられない暴論を聞かされることになった。以下はその概要である。

――先日、南日本新聞に報じられた件でお尋ねしたい。関係者の一部から『合意があったから問題ない』という話が出ているが?
池田会長:はいはい。

――池田会長が県に出向かれて、合意があった話だと説明されたと聞いているが?
池田会長:誰が?

――池田先生が、だ。事実か?
池田会長:合意というか、数回に渡って……(性行為が)あるわけですね。だから、数回もあって●●(強制性交)ってのは、あり得ないね

――それを県に説明したのか?
会長池田:ええ、ええ。そうです。

――そうすると、合意があったという話は、十分信用ができるということか?
池田会長:いや、それは、まあ、僕には、言えないけども。●●(強制性交)なんて普通一回あって、そして、すぐこれは大変だっていうことで、訴えるわけだ、これ。そうじゃなくて、一回だけじゃなくて、数回あったわけですから。えー、そういうこと(強制性交)はちょっと考えられない

――考えられない、ということを県に説明をしたと?
池田会長:ええ、数回あったってことはしております。

 実は、県医師会内部で、池田会長を含む上層部の一部が、「性的行為には合意があったから問題ない」という問題の本質を歪めた主張を行っているという情報があった。しかし、重ねて述べるが、性的行為に合意があったか、なかったかは警察の捜査で明らかにされるべきこと。裁判になれば、法廷で決着がつけられる話だ。真相に関係なく、医師会の男性職員が不埒な行為に及んだことにかわりはなく、いかなる理屈を並べても管理責任は医師会にある。池田氏の主張は、責任回避のための議論のすり替えに過ぎない。

――合意があったか、なかったかはわからない。問題は、人の命を守るという崇高な使命を負った事業を任された医師会の人間が、患者のいる施設の中で性行為を行ったということ。医師会に管理監督責任はないのか?
池田医師:誰にですか?

――医師会に、だ。
池田会長:それは、調査委員会で、まあ調査している最中ですので。

――合意があったからといって言い逃れすることはできない。
池田会長:そっちで判断するのはおかしいじゃないですか。それ。

――合意があったのかどうかという話ではなく、まず医師会として、こういう職員を出して県民に大変不信を与えた、ということへの謝罪があって然るべきだと思うが、それは間違いか?
池田会長:それは、間違いです

――どこが間違いか?
池田会長:要するに、ええっと、あのー、なんて言うか、男女関係ですよね?

――男女関係だが、やっていい場所と悪い場所がある。療養施設はラブホテルじゃない。
池田会長:そりゃそうだけど、それはぜんぜん、我々は、知ってたら対応しますよ。

――性行為自体がとがめられてるわけで、合意があったかなかったかについて、ハンターとしてどうこう言うつもりはない。
池田会長:だけど、それがね、すぐ、その県の医師会に責任があるんだってことはおかしいと思うんだけど

――繰り返すが、合意があったかなかったかは別の問題。問題は、県の事業である新型コロナウィルスの療養施設で、性行為があったということが、不埒な振る舞い、不正な振る舞い、不適切な振る舞いだと申し上げている。それを認めないつもりか?
池田会長:……。いや、そりゃー。

――認めない?
池田会長:あの、二人が、わかんないですけど、愛し合っていたら、わかんないですね

――では聞くが、愛し合っているものを刑事告訴するのか?
池田会長:いや、そりゃ、だけど。本人が本当に、だけど、その、なんて言うか、普通告訴やったら、●●(強制性交)されたから、告訴するはずでしょ?

 

 残念なことに、池田氏との話は平行線。最後まで嚙み合わなかった。性行為の「合意」の有無にこだわる池田氏の考え方は、「合意はなかった」として刑事告訴した女性の立場や思いを無視した暴論であり、事の本質を歪めるための強弁としか思えない。

 池田氏からは「(ハンターは)一方的な取材で、筋道を作って、一方的に報道する」という厳しいご批判を頂戴したが、間違いを間違いだと指摘し、追及するのがハンターの使命であるとお断りしておきたい。その上で申し述べる。新型コロナの療養という重要施策を汚しておきながら、責任回避のために被害女性の名誉まで傷つけているとしたら、鹿児島県医師会の責任はいよいよ重いものになる。

(中願寺純隆)

 

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